19世紀、ラファエロを模範とする英国ロイヤルアカデミーへのアンチテーゼとして生まれた「ラファエル前派」。ラファエロより前の初期イタリア・ルネサンスの画家に倣った細密な描写を特徴とする。その支持者であるラスキンの素描と、ラファエル前派の主要な画家たちによる作品が集められた「ラファエル前派の軌跡展」を観に、三菱一号館美術館を訪れた。
内的な思考や精神の状態を表現しようとした象徴主義の運動の一つに、英国の「ラファエル前派」は挙げられる。ただこの展覧会に出展されていたミレイ、ロセッティ、ハントといった「ラファエル前派」第一世代の絵に対して、僕自身は古めかしい印象を持ってしまった。ミレイには「オフィーリア」という素晴らしい作品がある。ハントにも鳥の巣を描写した素晴らしい小品がある。しかしこの展覧会で展示されている作品、特にロセッティの作品については、写実の技術が活かされていない。描かれている人物の表情に、生き生きとしたものが、今ひとつ感じられない。神話や聖書、文学の世界をテーマとしていることもあり、古い絵だと感じてしまった。
展覧会の最後の部屋に入って、ちょっと驚いたのは「ラファエル前派」の第二世代に、ウィリアム・モリスがかぞえられるということであった。モリスは装飾デザイナーだと思っていて、「ラファエル前派」第二世代のエドワード・バーン=ジョーンズと親交があったという認識が全くなく、この展覧会で初めて知ることとなった。
折しもそごう美術館で「ウィリアム・モリスと英国の壁紙展」が開催されている。「ちょうどいい、善は急げ」というので、三菱一号館美術館を出たその足で横浜に向かう。
ウィリアム・モリスは「役に立つかわからないもの、あるいは美しいと思えないものを、家の中に置いてはいけない」と、生活と美しいデザインとを両立させる思想を持っており、その「アーツ・アンド・クラフツ運動」は、20世紀のデザインの源流になったという。機械による大量生産ではなく、自ら手作りの工房での制作を実践した。
この展覧会では、英国の壁紙会社サンダーソン社保有のウィリアム・モリスを中心としたデザインによる壁紙と、その版木が展示されている。そう、当時の壁紙は版画と同じように、いくつもの版木を重ねて作られていたのである。日本をはじめ、アジアの装飾の影響も受けていることがわかる。
因みに今日のランチは、丸の内ブリックスクエアにある「アンティーブ」にて。美術館の半券でノンアルコール・カクテルやスパークリング・ワインが無料でサービスされる。
- ジャンル:イタリアン
- 住所: 千代田区丸の内2-6-1 丸の内ブリックスクエア 2F
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- (写真提供:食いしん坊女子♪)
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視覚デザイン研究所 発売日 : 2006-07-01 |
西洋美術は、時の権力者・上流階級が制作させたものであり、感じるというよりは、その時代背景からメッセージを読み解くもの。世界史における主な出来事、宗教・政治・経済の与えた影響など、絵画を読み解くポイントがわかる。大きな歴史の流れをつかむために、たとえば『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』を併読すると、さらに理解が深まる。