Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

新型レヴォーグ:車載インフォテインメントのソフトウェア基盤は Linux と推測

新型レヴォーグの顔とも言える大きな縦型のセンターインフォメーションディスプレイ。情報とエンターテインメントを扱うことから、車載インフォテインメント(英語では IVI: In-vehecle Infortainment)と呼ばれるシステムである。iPad のようなタブレットが車に載っており、地図によるナビゲーション、音楽、テレビ、ラジオ、電話といったアプリケーションが動き、さまざまな設定を行うことができる。スバルはこの IVI システムを STARLINK と名付けている。

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レヴォーグの IVI:センターインフォメーションディスプレイ

このセンターインフォメーションディスプレイで何ができるのか、わかり易く紹介した動画がある:


【新型レヴォーグ】「センターインフォメーションディスプレイ」を細かくチェック!

元ソフトウェア技術者としては、どんなソフトウェアを使って、このシステムが作られているのかが気になる。レヴォーグの 700ページもの電子マニュアルを拾い読みしていると、オープンソース・ソフトウェアのライセンスの項があるのに気づく。そこには、このシステムで使われているオープンソース・ソフトウェアの使用許諾や著作権を確認できる、デンソーの Web サイトへのリンクがある。そう、このシステムはデンソーが開発しているのである。

www.denso.com

この使用許諾には、各種オープンソース・ソフトウェアのライセンス条件や著作権が記載されている。ここから関連する情報を少しづつ調べてみると、なかなか興味深いことがわかってきた。

まず一番最初に出てくるのが何と Linus Tovalds。言わずと知れた Linux の開発者の名前である。Linux カーネルの vmlinux を圧縮した bzImage ファイルの使用許諾が GPLGnu General Public License)であると記述されている。そして Linux 関連のソフトウェアのソースコードとして、ログを取得して管理する dlt-daemon や、Linux の無線 LAN インタフェースのファイルがリンクされている。

この dlt-daemon は、Diagnostic Log and Trace(診断ログとトレース)の略で、欧州の車載ソフトウェアの標準化団体 AUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)で仕様が定められた ECU のログ管理プラットフォームであり、GENIVI Alliance という標準化団体が Linux での実装を行っている。

IVI(車載インフォテインメント)がどういうシステムなのか。そしてその標準化団体の一つである GENIVI について、日本語で書かれた 2011年の記事がある(前編後編)。

monoist.atmarkit.co.jp

最近の IVI の動向を調べてみると、プラットフォームを Linux ベースで標準化する動きとして、AGL(Automotive Grade Linux)があることがわかる。2020年4月に書かれた解説記事によると、トヨタ主導のもと、全世界で150社以上が参画している車載システムのオープン・プラットフォーム推進組織である。非競争領域である IVI のプラットフォームの開発を標準化すること、そこにオープンソース・ソフトウェアを採用することで、開発コストの削減や市場投入スピードの短縮を狙った動きである。トヨタ主導の AGL には、当然、デンソーやスバルも参画している。

jidounten-lab.com

そして2020年1月に、スバルの 2020年の米国版アウトバックとレガシィの IVI にAGLソフトウェアが採用されることが発表された。この記事の写真に写っている IVI は、レヴォーグに採用されているものと同じ、縦型のセンターインフォメーションディスプレイである。そう、いち早く米国版アウトバックレガシィで採用されたシステムが、日本のレヴォーグにも採用されたと考えられる。つまり新型レヴォーグの IVI の OS は Linux(AGL: Automotive Grade Linux)であると推測される。

prtimes.jp

もう少し、オープンソース•ソフトウェアのライセンス記述について見ていこう。次に出てくるのが、Cinemo という会社の名前である。IVI のマルチメディア処理(メディア管理、再生、ストリーミング)や Apple CarPlayAndroid Auto などデバイス連携のミドルウェアを、Tier 1 向け、あるいは OEM で提供している会社である。組み込みのリアルタイムOSLinuxQNX など多くの OS に対応している。

デンソーと Cinemo でソフトウェア開発キット SDK が作られているようだ。ググってみると、車載インフォテインメント・システムに関して、デンソーと Cinemo の協業に関する2017年のプレスリリース記事が見つかる。この記事によると、日本の大手自動車 OEM 向けに「デンソーの次世代高性能インフォテインメント・プラットフォームをCinemoの統合ミドルウエアに結合」とある。また2019年にデンソーテンとの4年に及ぶ協業を今後も続けるとのプレスリリースもある。

ここまででわかった情報を総合してみると、新型レヴォーグのセンターインフォメーションディスプレイは、OS が Linux。そのプラットフォームの上に、Cinemo のメディア処理やスマホ連携のミドルウェアデンソーデンソーテン)のカーナビゲーションを載せたシステム構成であることが、見てとれる。

オープンソース・ソフトウェアのライセンスや著作権の記述を眺めていると、GPLApacheMozillaBSD など、さまざまな条件のソフトウェアが混在していることがわかる。なかには X コンソーシアム(Unix 上の X ウィンドウシステム)の 1987年の Copyright が含まれており、思わず懐かしさを感じてしまった。Linux が作られたのが1991年。僕が Linux や X ウィンドウ、Gnu のソフトウェアをノート PC で動かし始めたのが 1993年頃だ。Linux のバージョンは 0.99 だったと記憶する。オープンソース・ソフトウェアコミュニティーの 30年以上にわたる開発の蓄積が、新型レヴォーグの車載インフォテインメントの実現に、脈々とつながっているのである。

レヴォーグの電子マニュアルの拾い読みから始まった、少しマニアックな探索調査の旅。オープンソース・ソフトウェアの使用許諾と著作権の記述からファイル名を確認して、それがどういう機能のソフトウェアか、誰が作ったかを調べる。さらに関連する情報をググってみる。元ソフトウェア技術者として懐かしさを感じるとともに、車載インフォテインメントについて学ぶよい機会であった。

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新型レヴォーグ STI Sport:アイサイト(EyeSight)と車載 IT の進化(旧型と比較して)

年末年始、レヴォーグ STI Sport(VN型)で 500km ほど走ったので、旧型(VM型)と比較しながら、改めてめざましい進化を遂げたアイサイト(EyeSight)や車載 IT(カーナビ、Apple CarPlay、音声操作)を中心に、その感想をまとめておく。2020年末のエントリーがファースト・インプレッション だとすれば、今回はセカンド・インプレッションということになる。

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  • 方向指示器レバー:
    • 軽くチョンと押すだけの力加減にはすぐに慣れた。ただウィンカーが3回(3秒)点滅するだけだと、車線変更するには短過ぎるので、以下のやり方で対処している。
    • 自分の意思で車線変更する時は、軽く押したまま保持して点滅時間を長くする。あるいはいったん奥までレバーを押し込んでしまい、車線変更が終わったら、逆方向に軽く押して点滅を終わらせる。
    • 高速道路でアイサイトX が稼働している時は、レバーを奥まで押し込んで、アクティブ・レーンチェンジ・アシスト機能を活用する(後述)。
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  • アイサイト/アイサイトX:
    • 全車速追随のクルーズコントロール
      • 最高速度設定は、旧型では 114km/h だったが、新型では 135km/h まで引き上げられている。
      • ブレーキングのタイミングは、僕の感覚より遅め。同乗者がいる時には余裕を持ってスピードを緩めるべく、自分の意思で早めにブレーキをかける時がある。
    • 渋滞時ハンズオフ:0km/h - 約50km/h
      • 渋滞時の前車追従は旧型でも感動した機能だが、新型ではステアリングから手を離したハンズオフ運転が可能となっている。これは「自動運転」に近い感覚で、感動もひとしおである。
      • 0km/h - 55km/h 前後でハンズオフが可能。ピンポーンという和音とともに、アイサイトが緑から青の表示に変わる。
      • 新型ではいったん止まってしまっても、自動的に再発進する(旧型ではアクセル操作、ないしステアリングのスイッチ操作が必要だった)。ノロノロ運転時のアクセル・ブレーキ操作から解放される。
    • 車線キープ:
      • ほぼ真ん中。自然な位置をキープする。車線を認識していない時も先行車を認識して追随する。
      • 車線逸脱を防止するようにステアリングを動かしてアシストしてくれるのは、最初は少し違和感があったが、逆にありがたいと感じるようになった。
      • 東名高速下り、大井松田から御殿場にかけての右ルートは、R の小さいカーブが連続するが、車線キープが機能していた。
    • 後方の車両検知:
      • ミラーに映らない死角に、車がいる時には、ドアミラーの根元にあるオレンジのランプが点灯するのが便利。
    • 車線変更(アクティブ・レーンチェンジ・アシスト):約70km/h - 120km/h
      • 方向指示器のレバーを奥まで押し込む操作だけで、車線変更をしてくれる。自分には不要かな?と思っていた機能だが、意外と使ってしまう。
      • 僕が「車線変更できる」と思う時に方向指示器を操作しても、アイサイトはより安全サイドに倒して判断するようで、車線変更せずに警告音を発する時がある。場合によっては車線をキープし続けるようにステアリングが働く。
      • そういう場合でも、自分の意思で車線変更することはできる。方向指示器のレバーを軽く押すだけだと、この機能は働かないからだ。
    • 料金所通過:
      • 料金所を通過する時にスピードを緩めてくれる。20km/h - 25km/h くらいのスピードで通過する。
    • 一般幹線道路での利用:
      • 一般道でもアイサイトは便利である。車線・車間をキープしてくれるし、渋滞しても前車に追従してくれる。
    • 夜間運転:
      • ステレオカメラやレーザーで前方を監視、ハイビーム・ロービームを自動的に切換えたり、ステアリングを切った方向を照らしてくれたりなど、利便性が増している。
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  • Apple CarPlay
    • Google マップで目的地までのルート検索をすると、そのルート上の渋滞区間が表示される。
    • レヴォーグのカーナビに従いながら、ときどき Google マップで最新の渋滞状況を確認することにより、たとえば環八が混んでいるようであれば、環七で渋滞回避するような使い方ができる。
    • Yahoo! カーナビの表示が不安定である。大画面に地図やナビの表示が出ない。
  • 音声操作:
    • カーナビ、エアコンの操作は、定型のコマンドで指示する。よく使うのは「自宅に帰る」「メモリ地点+<地点名>」「温度を上げる・下げる」「<温度>」
    • Apple CarPlay 対応のアプリケーションに対しては、Siri で対話的に話せる。
    • 「これから帰る」とか「今、関越自動車道を下りたところ」とか、家族へのメッセージも Siri で送る時がある。
    • 音楽を聴く時は、アルバムやアーティストを指定するが、誤認識したり、該当する曲を見つけられなかったりすることが多い。
    • 高速道路を走っている時は、誤認識が多い。静粛性が増したとはいえ、雑音が多いからであろう。いきおい大きな声で話すことになる。
    • ディスプレイがタブレットのように大きく、指での操作もやり易いので、音声操作のみで完結させることは少ない。音声の誤認識があると、すぐに指での操作に切り替えてしまいがち。

新型レヴォーグのパワーユニットは新開発の 1.8L、CB18 型エンジンである。旧型 1.6L の FB16 型と比べて、パワーは増しているが、燃費はどうだろうか?

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CB18型エンジン

  • 燃費:
    • Comfort モードで高速を走った時の燃費は 12-13km/l で、旧型の 1.6L FB16型エンジンのレヴォーグのエコ運転モード(Intelligent)とあまり変わらない。
    • レギュラーガソリンはありがたい。満タンにすると 63L であり、旧型より大きくなっている。
    • 電動モーターを組み合わせる e-BOXER 技術が導入されれば、燃費も改善すると期待される。

レヴォーグのマイナー・チェンジでは、CB16型に e-BOXER 技術が導入されるのではないだろうか?燃費向上、そしてさらに走りの性能に磨きがかかると期待している。

愛車遍歴(スバル遍歴)

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2021年初の展覧会は「ミレーから印象派への流れ展」(そごう美術館)

地元の師岡熊野神社へ初詣のあとは、地元・横浜のそごう美術館にて2021年初の展覧会。「ミレーから印象派への流れ展」は、19世紀のフランス絵画を、ミレーに代表されるバルビゾン派から、印象派、そしてナビ派に至るまでの系譜を辿る。著名な画家の作品もあれば、あまり知らない画家の作品も並んでいる。ある意味、小品を中心とした展覧会である。

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ミレーの時代の風景画・写実画から、印象派の絵画、さらにはポスト印象派の絵画までを、じっくりと観ることのできる大変よい展覧会であった。

昔、オランダ出身のヨンキントという画家の風景画を展覧会で見て気に入ったことがあったが、そのヨンキントの作品も展示されている。そしてフランスに出てきたヨンキントが、屋外に出て描くことを勧めるなど、モネに大きな影響を与えたことを知る。モネはヨンキントのことを師匠と呼んでいたらしい。

www.sogo-seibu.jp

横浜そごうに来たので、アルポルトクラシコでランチ。お正月メニューでデザートがついていた。

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師岡熊野神社に初詣、破魔矢を買う

早朝の人の少ない時間に、散歩も兼ねて、地元の師岡熊野神社に初詣に行く。724年に開かれた師岡熊野神社に祀られている神様は、和歌山の熊野三社の神様と一体とのこと。

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「の」の池

今年は本厄だそうで、厄除けの御守に加え、破魔矢を買った。ちょっとカッコいいデザインの「御神矢」である。そう言えば、今年は緑の市松模様や、薄いピンクの麻の葉のデザインの御守が置いてあり、目を引いた。「鬼滅の刃」の主人公、竈門炭治郎や禰豆子の着物の柄をあしらったものであろう。

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あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

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年賀状

昨年は生活パターンが一変してしまった一年でした。在宅勤務が中心の生活となり、週に1度出社するくらい。運動不足を解消するために、ウォーキングを始め、さらにはジョギングまで始めてしまいました。一方で、読書量はすっかり減ってしまい、頭は硬くなる一方です。

在宅勤務も最初のころは通勤時間がなくなった分、オフの時間が増えたとポジティブにとらえていたのですが、在宅勤務が定着するにつれ、だんだんとオンとオフの境目が曖昧になり、夜遅くまで仕事を続けてしまうことも多くなってしまいました。仕事の内容が結構タフな1年であったことも、その要因の一つかもしれません。

1日の大半がオンラインでのコミュニケーションや会議の連続になり、一息つく暇もないくらいであることもあります。タイムマネジメントが従来にも増して大切になっています。オンラインでのコミュニケーションで、大概の仕事はこなせているつもりですが、相手を「腹落ち」させるだけのコミュニケーションが果たしてオンラインでできているかどうか…。

ビジネスをする上では厳しい1年であったにもかかわらず、長男は転職、次男は就職。何とか仕事を見つけてくれたようで、親としては少しホッとしています。

プライベートで外出する回数はだいぶ減ってしまいましたし、外食する機会も減りました。そんな中、趣味の美術展巡りとゴルフは、ぼちぼちと続けています。なかでも「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」アーティゾン美術館は素晴らしいものでした。また葉山へのドライブも印象に残っています。今年は新しい車で遠出したいものですが、まだ厳しい状況は続きそうですね。

感染リスクを減らすために、車で数時間かかるところに住む老父母と会う機会は、ほとんどなくなりました。老老介護を避けるために、母は小規模多機能ホームのお世話になっていますが、面会が制限されています。心のどこかで、両親の無事を気にかけつつ過ごす毎日です。

皆さまもおからだに気をつけてお過ごしくださいますように。

本年もよろしくお願いいたします。

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LDLコレステロールを抑える薬、ロスバスタチンの効果あり

動脈硬化のリスクがあるので、LDLコレステロールを抑える薬を飲み始めて、80日。改めて血液検査をしてもらったところ、順調に効果があり、163だった数値は半減して 86、正常値の範囲(70-139 mg/dl)に収まっていた。特に副作用もないようなので、このままこの薬、ロスバスタチンを飲み続けることとなる。人間ドックも含めて、半年に一度くらい、検査して確認するのがよかろう、とのこと。

とりあえず、朗報である。よかった。

尿酸値は相変わらず 7 を超えている。こちらは薬を飲まずに頑張って(?)いる訳だが、あきらめて薬を飲んだ方が、体への負担は軽いのかもしれない。

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新型レヴォーグ STI Sport のインプレッション:走り・乗り心地・アイサイト(EyeSight)・車載 IT が大きく進化

試乗もせずに車を買うという前代未聞のことをやってしまった。新型レヴォーグ STI Sport2020年8月20日に先行予約販売が始まり、しばらく悩んでいたものの、結局 9月になってから申し込み、12月初めになってようやく試乗。さらにそこから3週間、クリスマスを過ぎてからの納車となった。旧型と比べて、エクステリア・デザインはキープ・コンセプトだが、車の中身は全然別のものになっており、走りの性能と高機能な安全運転支援機能アイサイト(EyeSight)の大幅な進化に魅かれた。

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www.subaru.jp muranaga.hatenablog.com muranaga.hatenablog.com

ステーションワゴン好きの一人としては、レヴォーグよりもクラスが一つ上の Dセグメントの外国車、上質で洗練されたデザインのボルボ V60 と比べたりもしたのだが、日本車としては最高レベルの運転支援システム、コストパフォーマンス、安心できるディーラー対応などを考慮して、結局のところ、新型レヴォーグを選択した。この10数年、レガシィレヴォーグ(VM型)、新型レヴォーグ(VN型)と乗り継いできた訳で、つまるところ、僕はスバルのツーリングワゴンが好きということなのだろう。

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旧型と比較して、新型レヴォーグが大きく変わったのは、運転支援システム「アイサイト」の進化、縦型のセンター・インフォメーション・ディスプレイ、フル液晶メーターを備えたデジタル・コクピット、強化されたボディー剛性と新開発の 1.8L エンジンによる走りの性能である。さらに STI Sport には、電子制御ダンパーによるしなやかな乗り心地、ドライブ・モード選択による「キャラ変」といった魅力がある。

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コクピット:新型と旧型

納車して数日、実際に走らせてみての性能や利便性について、旧型と比較したファースト・インプレッションをまとめておく。

乗り込んですぐに目につくのが縦型の 11.6インチのセンター・インフォメーション・ディスプレイである。このタブレットのようなシステムを使って、さまざまな設定を行う。カーナビの地図も大きく表示される。いわゆるインフォテインメント・システムといわれるものである。

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そして運転席の目の前にあるのが 12.3インチのフル液晶メーターである。

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  • 11.6インチ・縦型ディスプレイ(インフォテインメント・システム):
    • 動作はきびきびとして使い易い。
    • 設定項目がたくさんあり過ぎて、設定には少なくとも 1時間、それ以上はかかる。iPhone / iPad のようなデバイスを新たに買って設定している感覚に近い。
    • 画面上のエアコンボタンを自分の好みに設定できる。僕の場合、「外気/内気」をワンプッシュで切換えられるようにした。
    • 坂道発進などを楽にしてくれる AVH(オートビークルホールド)のハードボタンはなくなり、ワンタッチで On/Off できなくなった。ディスプレイ経由で 2アクションになるのが少々煩雑。しかもエンジンをかけるたびに、デフォルトで AVH Off に設定し直されてしまう。
    • このセンター・インフォメーション・ディスプレイの再起動は、VOLUMEノブを 10秒以上長押しすることにより行う。
  • 12.3インチ・フル液晶メーター:
    • 地図表示、メーター表示、アイサイトの状況表示と3つ切り替えることができる。
    • 高速道路上では地図表示よりも、メーター表示やアイサイトの状況表示の方が使い易い。隣のレーンにいる前後の車の様子がわかる。
    • パドルシフトを使って、マニュアルでギア操作をする時、8段あるギアのどれに入っているかはメーターの一番下に表示される。この位置だと、ステアリングが邪魔になって、少々見づらい時がある。ステアリングや座席の高さを調整する必要がある。

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  • インテリア
    • 質感は、旧型に比べて格段に向上していると感じる。Dセグメントの外国車に比肩するところまではいかないが、日本車としては、かなりいい方なのではないだろうか?
  • シート
    • 前席のホールド性は、旧型に比べて高い。前席・後席共にシートヒーターが備わっている。
    • 後席に向けて、エアコンの吹き出し口、USBの電源が用意される。
  • ウィンドウ
    • 細かなことだが、エンジンを切っても、ウィンドウを開けられるようになった。ガソリンスタンドで店員と話す時に、わざわざドアを開け閉めしなくて済む。
  • 荷室
    • フロア下には大容量のサブトランクが備わっている。
    • ゴルフバッグが 3-4個、真横に積める荷室の積載性も、旧型から継承している。
    • リアゲートは電動で開け閉めができるようになった。特にスバルのエンブレムに手や肘をかざすと、リアゲートが開くようになっている。

新開発の 1.8L エンジン、パワートレインは、旧型からかなり進化していると感じる。特にアクセルワークに合わせた滑らかな加速は素晴らしい。

  • スバルグローバルプラットフォームをさらに強化したボディー剛性により、高速走行時の安心感が増している。
  • 車内の静粛性も、旧型より増している。これには新開発の 1.8L エンジンも貢献していると思う。
  • 旧型 1.6L に比べて、新型 1.8L は力強い。レギュラーガソリンで走り、アイドリング・ストップ機能も継承している。
  • 走り出してすぐに気づくのは加速の滑らかさ。旧型で感じたアクセルワークと実際の加速とのラグは、ほとんど感じない。アクセルを開けるとリニアに加速していく。
  • CVT はパドルシフトで使うと 8段変速になる。
  • 低速域では、低いブロロロ…という音が心地よい。往年の水平対向エンジンのボクサー・サウンドを感じさせる。
  • 燃費については、もう少し走り込んでから、旧型と比較したい。

方向指示器のレバーの使い方には、慣れが必要である。

  • 方向指示器には「ワンタッチ機能」があって、レバーをチョンと軽く押すと、ウィンカーは 3回だけ点滅する。レバーを奥まで押し込むとずっと点滅していて、ステアリングを戻すと消える。
  • 曲がり角を曲がる時は、レバーを奥まで押し込めばいい。
  • 車線変更する時には、軽く押した状態を保持するというのが、正しい使い方のようだ。ウィンカーを出して意思表示してからおもむろに車線変更するには、「ワンタッチ機能」の3回だけの点滅時間は少し短すぎる。
  • とは言え、今までの使い方だと車線変更する時にも、レバーを押し込んでしまって、ウィンカーを出しっ放しにしがちである。たとえば右に車線変更する時に、方向指示のレバーを右に押し込んでしまうと、車線変更した後も点滅がそのまま続いてしまう。それを消すためには、軽く左に戻せばいいのだが、慌ててレバーを今度は左に押し込んでしまうと、左へのウィンカーが点滅してしまう。ウィンカーが右に点滅したり左に点滅したり…。周囲に迷惑をかけることになる。
  • これは慣れるのに少し時間がかかりそうである。この方向指示器のワンタッチ機能を Off することもできるが…。

新型レヴォーグ STI Sport の最大の特徴は、ドライブ・モードの切替えによる「キャラ変」である。エンジン、ステアリング、電子制御ダンパー、AWD、アイサイト、エアコンの特性を変えることにより、Comfort / Normal / Sport / Sport+ という4つのモードに切り替えられるだけでなく、Individual という自分好みの設定を行うことができる。

  • ドライブ・モード切替え:
    • Comfort モードは、穏やかな走り。ステアリングは軽く、サスペンションもしなやか。旧型にはなかった快適な乗り心地を実現しており、家族を乗せる時にぴったりである。。
    • Normal / Sport が、旧型のような乗り心地に近い。
    • Sport+ はスポーツカーのような特性になる。
    • 自分向けの Individual 設定は、Comfort をベースに、ステアリングとエアコンを Normal に設定することにした。
  • 電子制御ダンパー(サスペンション):
    • 道路の凹凸の吸収は素晴らしい。特に Comfort モードでは、凹凸やマンホールをしなやかに乗り越えていく。
    • Comfort モードでは、道路のざらつき感も抑えられている。路面に吸い付くような乗り心地で、個人的には最も気に入っているモードである。
    • Normal / Sport モードが、旧型のサスペンションに近い。ロードノイズも拾うようになる。
    • Sport+ モードでは、硬い乗り心地になる。減衰が大きくなり、路面状況がダイレクトに伝わるようになる。
  • 2ピニオンの電動ステアリング:
    • とても滑らかで、かつダイレクトに操舵している感がある。
    • Comfort モードでのステアリング・フィールは軽い。
    • 逆に Sport+ モードだと重くなり、ハンドル操作がそのままダイレクトに車の挙動につながる。

ドライバーをモニタリングするシステムが備えられており、アイサイトX と連動する。ドライバーがわき見運転をしたり、居眠り運転をしたりすると警報が鳴る。ステアリングから手を離したまま、反応しないでいたりすると、ドライバーに異変が起こったと認識して、直線道路の安全なところに車を自動的に止めるようになっているらしい。

  • ドライバー・モニタリングシステム:
    • ドライバーとして登録できるのは 5人。登録していないドライバーが座ると、登録を促される。
    • ドライバーごとに、シートポジションやミラーの位置を合わせてくれる。
    • エンジン始動前にドアを開けると、ドライバーをスキャンし始める。この時シート運転席に座っているドライバーを認識する。マスクをしていたり、よそ見をしたりしていると、認識に失敗することがある。
    • わき見運転をしたり、居眠り運転(まばたきを検知)をしたりすると警告音が鳴る。

そして今回のレヴォーグの目玉と言える先進運転支援システム「アイサイト X」について記しておく。

  • アイサイトの進化:
    • ステレオカメラだけでなく、前後方にミリ波レーダーやカメラが備えられて、360度センシングを実現。前方・側方への障害物が検知されるようになっている。
    • 狭い路地から出る際、駐車場にてバックで出る際など、見通しが悪い時に、障害物を検知するとプリクラッシュ・ブレーキが作動する。
    • 後方から近づいてくる車は死角に入りがち。ドライバーがそちらへ向かってウィンカーを出したり、車線変更しようとしたりすると、警報を鳴らすだけでなく、ステアリング操作を元に戻すように力が働く。
  • アイサイト X:
    • 3D 高精度地図と衛星により自社位置を認識して運転を支援する。
    • 渋滞時ハンズオフ:高速道路・有料道路上で 50km/h 以下(渋滞時)だとハンズオフ運転が可能になる。この時、いったん停車しても先行車に追従して再発進する。
    • アクティブ・レーンチェンジ:高速道路・有料道路上で 70km/h - 120km/h で、システムが車の後方・前方を確認しながら車線変更を行ってくれる。
    • カーブや料金所で減速する。
    • ドライバーの異常を検知すると、路肩に停車する。
  • アイサイト X の 3D 高精度地図:
    • 日本デジタル道路地図協会の全国デジタル道路地図データベースを使用。
    • データ更新頻度は、2021年4月以降、年4回を予定(有償)。スバルのディーラーにて更新する。

アイサイト X については、もっと長距離を走り込んでから、その性能や使い勝手をまとめることとしたい。

カーナビゲーションをはじめとするインフォテインメント・システムの使い勝手は下記の通り:

  • カーナビゲーション
    • デンソー製とのことだが、旧型のパナソニックのナビ(Strada)と同じ女性の声による案内だった。
    • 自宅近くに時間指定の一方通行・車両進入禁止の道路がある。旧型の Strada は禁止時間帯を考慮したきめ細かい案内を出していたが、新型のナビも対応しているように見える。
    • 経路探索のアルゴリズムの精度については、もっと走ってから判断したい。
    • 音声認識で目的地を検索することができるし、「自宅へ帰る」「オフィスへ行く」「目的地削除」「施設名で探す:<施設名>」「メモリ地点:<登録地点名>」といった定型的なコマンドで音声で操作できる。
  • カーナビの地図:
    • マップマスター製とのこと。最初の3年間は、無償で毎月の差分更新が受けられる。4年目以降については、有償で地図を購入すれば、差分更新は無償となる。
    • 毎月の差分更新は WiFi を使う。マンションの駐車場など、自宅の WiFi が届かない環境だと、差分更新は難しい。Pocket WiFiWiMAX を使うことになる。
    • さっそく差分更新してみると、87MB のデータで 5回分の更新であった。更新にかかる時間は30分ほど。
    • 最新版は 2020年11月版の地図データであり、2020年5月のバージョン番号がついており、2020年3月に開通した首都高・横浜北西線はちゃんと反映されていた。
    • 有償地図を購入して更新する場合は、USB メモリー(64GB 以上の空き容量)を使う。
  • ハンズフリー電話:
  • 音声操作:
    • ステアリングにあるトークスイッチを押すと、音声認識モードとなる。
    • 予め決まったコマンドを発話することにより、カーナビ、電話、音楽再生(iPhone)、テレビ、ラジオ、エアコン(温度の上げ下げ、風量指定)を操作することができる。
    • 「Hi、メルセデス」のような対話型のシステムではない。定型の音声コマンドで電話帳や履歴などの選択候補をディスプレイに表示させて、そこから音声で次の操作を選んでいく。認識に失敗した場合には、指での選択操作を組み合わせていく。
    • 一方、Apple CarPlay 接続することによって、iPhone の操作は Siri を使って対話的に行える。電話や音楽再生は Siri を使って、対話型で進める方がよいかもしれない。メッセージの送受信もできる。
  • Apple CarPlay に対応:
    • USB 接続した時に、単なる iPhone として接続するのか、Apple CarPlay 対応機器として接続するのかを選択する。
    • iPhone として接続する時には、音楽を再生することができる。
    • Apple CarPlay として接続すると、電話をかける、音楽を再生するといったことに加えて、Google マップApple のマップ、Yahoo! カーナビなどを、大型ディスプレイ上で使える。ただ Yahoo! カーナビとの連動については、まだ動作が不安定である。
    • iPhone の Siri を使って、音声対話でアプリケーションの操作ができる。つまり「Hey, Siri」と話しかけて、ハンズオフで電話をかけたり、メッセージを送ったり、音楽を再生したりできる。
    • Siri に話しかける時には、ステアリングのトークスイッチを押し続ける。
  • SUBARU STARLINK サービス:
    • スバルのオペレータにつないだり、SOS コールをしたりするサービスが、5年間無償で受けられる。
    • スバルの iPhone アプリを使って、STARLINK サービスに登録する。納車の翌日以降に登録ができるようになる。

まだ数日乗っただけだが、その走りと乗り心地の進化にとても満足している。滑らかな加速に加えて、特に Comfort モードのしっとりとした走り、しなやかに道路の凹凸やマンホールをいなしていくサスペンション、静粛性などは、旧型とはレベルの違うものを感じている。そして走りや乗り心地だけではなく、運転支援システム・アイサイトや、インフォテインメントと言われる車載 IT の大きな進歩が印象に残るレヴォーグのフルモデル・チェンジであった。5年も経つと、全然レベルの違う IT システムになる。iPhone のようなデジタル・ガジェットのバージョンが上がる感覚に、少し通じるものがあるかもしれない。

一方、環境性能と言う点では課題が残っている。今後、すべての車が電動化になっていく時代にあって、もしかしたらスバルというメーカーは単独では生き残れないかもしれない。スバルの水平対向エンジンの車を買うのは、これが最後になるのかもしれない。ふとそんなことを考えたりした。

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しかしスバルには今の水平対向エンジンAWDCVTはそのままに、電動モーターを組み合わせる e-BOXER という技術がある。今回のレヴォーグ用に新開発されたエンジンは全長が短縮されてスペースを作っているし、荷室には大容量のサブトランクがあってそこにバッテリーを積むことができる。そう考えると、次のマイナーチェンジには、e-BOXER 採用のレヴォーグが出てくるのではないか?そうなることを勝手に想像して、期待しているスバリストの一人である。

追記:2021年1月5日

冬休み中に 500km ほど走らせてみて、アイサイトと車載 IT の進化について、改めて旧型と比較しながらまとめてみた。

muranaga.hatenablog.com

愛車遍歴(スバル遍歴)

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