Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

静嘉堂文庫美術館が丸の内に移転、曜変天目をはじめ数々の至宝が展示されている(静嘉堂@丸の内)

2022年10月、静嘉堂文庫美術館が丸の内・明治生命館に移転した。愛称は「静嘉堂@丸の内」。世田谷区岡本にあった時より、格段に交通の便がよくなった。開館記念展覧会「響きあう名宝 ―曜変・琳派のかがやき―」では、曜変天目をはじめ、国宝7件を含む数々の至宝が展示されている(前期・後期で展示替えあり)。


www.youtube.com

Web サイトから、展覧会の概要を示す文章を引用する:

創設130周年を迎える静嘉堂は、美術館のギャラリーを世田谷岡本の地から、丸の内の重要文化財建築、明治生命館昭和9年〈1934〉竣工)1階へ移転いたしました。 開館記念展第1弾となる本展では、静嘉堂が所蔵する全ての国宝を始め、茶道具・琳派作品・中国書画や陶磁器・刀剣などの選りすぐりの名宝を、新たな建築空間に合わせ4つのテーマで展観するものです。

昭和初期の代表的な近代洋風建築の、大理石を多用した重厚な建築美の中、高い天窓から自然光が差し込むホワイエを取り囲むように向き合う4つの展示室で、作品は数百年の歴史ある輝きを放ちながら互いの美を響かせあい、皆さまをお迎えいたします。 明治20年代の半ば、静嘉堂創始者の岩﨑彌之助は丸の内で三菱のオフィスビル街建設を進めながら、その一角に「ミュージアム」なるものを造りたいと願いました。100年を超える創立者の夢が今、花開きます。

www.seikado.or.jp

岩崎彌之助、小彌太の父子によって蒐集された文化財の数々は、中国の青磁・天目茶碗、絵、書と多岐にわたり、さらにはきらびやかな琳派の絵・工芸品も展示されている。源氏物語の一場面を描いた俵屋宗達の屏風、尾形光琳酒井抱一、鈴木其一の絵が並ぶ。

至宝の由来・解説を読むために、図録を購入。展覧会で目にした茶道具が、織田信長豊臣秀吉徳川家康などの手を経てきたことを知ると、感慨深い。

国宝《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代 12-13世紀

南宋で一時期作られた曜変天目茶碗は、世界にも3点つしか現存しておらず、そのすべては日本にあり国宝となっている。静嘉堂にあるものはその一つで、稲葉天目と言われている。

俵屋宗達源氏物語関屋澪標図屏風》江戸時代

俵屋宗達源氏物語関屋澪標図屏風》江戸時代

開館記念ということで、かなり「大判振る舞い」の展覧会であり、目の保養になる。

砥上裕將『 線は、僕を描く』:青春小説で知る水墨画の奥深い魅力

映画化されたのを機に、砥上裕將『 線は、僕を描く』を再読した。水墨画家でもある著者のデビュー作である。

両親を事故で失い、心に深い傷を負った若者が、水墨画の巨匠にその才能を見出され、絵を描くことを通して恢復していく物語。「線で、森羅万象を描く」水墨画の奥深い世界・魅力を清廉な文章で描く。

美術好きの方はぜひ。

senboku.kodansha.co.jp senboku-movie.jp

友人の写真展、久しぶりのすみだ北斎美術館

両国・国技館の前のギャラリーで開かれている友人の写真展に立ち寄る。『バリの息吹』という写真集で、ガムランの舞踊をはじめ、ヒンドゥー教の冠婚葬祭など、信仰と結びついたバリの人々の生活を紹介するほど、バリ島の王族との交流が深い方であるが、今回はチェキの二重露光機能を使って、バリの風景を重ね撮りして、クリエイティブな作品を作り上げている。

小野隆彦 写真展『バリの残像』

instax.jp

実際にチェキで二重露光の写真を撮ってもらうと同時に、現地での撮影の話を伺うことができた。軽い気持ちで手にしたチェキだが、思いがけず面白い写真が撮れて、夢中になってしまったとのこと。見ているほうからすると、この写真は何と何を重ねたものだろうか、と想像力を働かせることになる。とても興味深い写真展であった。

せっかく両国に来たので、久しぶりにすみだ北斎美術館を訪ねる。以前来たのは開館直後だったから、もう 6年も前になる。

企画展「北斎ブックワールド ―知られざる板本の世界―」で江戸時代の本(「板本」)の世界を学ぶ。

葛飾北斎は本の挿絵をたくさん描いたり、絵手本を残したりしているが、浮世絵のもともとの起源は板本で、絵のみが独立したとも言われている。展覧会の Web サイトから概要紹介を引用する:

浮世絵と聞くと、「冨嶽三十六景」のような一枚の紙に摺られた木版画がイメージされます。もともとそうした一枚摺の木版画は、板木に文字や挿絵を彫って摺ったものを本に仕立てた「板本(はんぽん)※」から、次第に絵のみが独立したともいわれます。 浮世絵師・葛飾北斎は、板本にも絵を描いています。物語の挿絵であったり、自らの絵を集めた絵手本(えでほん)であったりと、たくさんの板本を出版しました。北斎絵手本の代表作として知られる『北斎漫画』には、江戸時代の板本を読む人々が描かれています。人々がくつろぎながら読みふけって楽しむ様子は現在と変わりません。本展では、このような板本に注目し、その魅力を紹介します。

同じ版木からさまざまなバージョンの本が作られており、バージョンによっては薄墨の摺りが省かれていたりする。版本に残された書き込みには、単にその本の感想を記したものだけでなく、「この貸し本屋は高い」といった書き込みまであり、江戸時代の読書事情の一端が偲ばれる。

展覧会の内容について、美術館ナビの記事が詳しい。

artexhibition.jp

同時開催の企画展「隅田川両岸景色図巻(複製画)と北斎漫画」では、北斎肉筆の中でも最長といわれる 7m もの図巻が複製画で展示されている。北斎漫画のレプリカも展示されていて、絵手本を手に取って読むことができる。

葛飾北斎《遊女図》 高精細複製画(原画 フリーア美術館所蔵)

葛飾北斎《鍋冠祭図》高精細複製画(原画 フリーア美術館所蔵)

両国に来たならば、江戸東京博物館にも行きたくなるが、老朽化に伴う大規模改修工事中であり、全館休館中である。そのため駐車場も閉鎖中。

そこで収容台数の多いタイムズ国際ファッションセンターという機械式駐車場に、車を止めた。ここは同じ敷地内にある第一ホテル両国の提携駐車場でもあり、そこでランチを食べると駐車料金が割引になる。たまたま入ったホテルのレストランであったが、前菜・スープ・メイン・デザート・飲み物すべてで 1,600円となかなかコストパフォーマンスのよいランチであった。

この日は 3連休の初日とあってか、都心に向かう首都高横羽線湾岸線が事故で渋滞。川崎大師の入り口まで、ちょっとした裏道を使いつつ、渋滞を回避。何度も千葉県へゴルフに行っている成果である。

途中「ドライブレコーダーの撮影ができない。販売店に相談を」と警告音が鳴った。警告音は一時的なもので、エンジンをかけ直すと直ったが、念のため帰りにディーラーに立ち寄る。1ヶ月後の 12ヶ月点検の際に対応することとなった。

「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」展と、美術館カフェの個性的なランチを楽しむ(茅ヶ崎市美術館)

「台風直撃。明日のゴルフは中止だなぁ…」とちょっとブルーになりがちな気分を盛り上げるべく、サザンオールスターズを聴きながら、湘南方面に向けてハンドルを握る。めざすは、茅ヶ崎市美術館で開催されている「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」と言う展覧会である。

www.chigasaki-museum.jp

Web サイトで「新版画」とそれをプロデュースした渡邊庄三郎について、以下のように紹介されている:

江戸時代に確立された浮世絵木版画(錦絵)は、明治以降の西洋の写真や印刷技術導入の影響で、衰退の一途をたどっていました。その中で、あえて伝統的な絵師、彫師、摺師による分業体制の浮世絵木版画技術を使い、高い芸術性を意識した同時代の画家による取り組みが、「新版画」の始まりとされています。これを牽引したのが渡邊版画店(現在の渡邊木版美術画舗)・渡邊庄三郎(1885-1962)でした。

今回の展覧会では、貴重な初摺の渡邊版で、数々の「新版画」が紹介されている。渡邊庄三郎が声をかけた画家は多種多様。海外の水彩画家フリッツ・カペラリ、バートレット、橋口五葉、鏑木清方門下生の伊東深水川瀬巴水笠松紫浪、洋画家の吉田博、花鳥画の小原古邨(祥邨)…。これ以外の名前を知らない画家たちも、素晴らしい新版画を残していることを改めて知ることができた(出品リスト PDF)。

大好きな川瀬巴水吉田博の風景版画、そして美しい小原古邨(祥邨)花鳥画を楽しみつつ、より淡い色合いの笠松紫浪、少し古風な印象の高橋松亭の作品にも惹かれる。

展示替えも含めて今回の展覧会の全作品をカラーで収録した図録では、渡邊庄三郎の生涯、版元としての新版画のプロデュースぶりが紹介されている。新版画の作家についてもそれぞれ解説があり、新版画の概要を知るよい本となっている。

新版画と浮世絵の技法(彫り、摺り)・工程を対比しながら、その違いについてわかり易い説明がされている。また伊東深水の《髪》の摺りの全過程を示した順序摺が掲載され、39回にわたって摺りを重ねることで、複雑な色合いやぼかしを表現していることが明らかになる。

今回の展覧会で印象に残った作品をいくつか、図録の中から紹介する。

川瀬巴水《箱根宮の下 冨士屋ホテル》 昭和24年(1949)

これは初めてみる川瀬巴水の作品。箱根の富士屋ホテルに依頼されて制作した作品で、摺りの絵具を変えることで四季の変化を表している。春と秋は同じ版木、夏は旗と空が異なり、冬は別の版木を用意したようである。

笠松紫浪《霞む夕べ 不忍池畔》 昭和7年(1932)

川瀬巴水に比べると、笠松紫浪の作品はコントラストは控えめで、淡い色合いである。

小原祥邨(古邨)《金魚鉢に猫》 昭和6年(1931)

美しい小原祥邨(古邨)の花鳥版画。夏らしい左の摺りの版木の方が傷んでおり、人気が高かったことを思わせる。

美術館カフェ「ルシュマン」

新版画の世界を堪能した後は、美術館カフェ・ルシュマンにてランチ。ミートローフを頼んだのだが、やってきたプレートを見て、その野菜の多さにびっくり!そしてその野菜を口に運ぶと、新鮮で美味しい。「ルシュマンセット」は「大和豚のみそ漬けご飯サンド」である。

地元の農家やお店から食材を仕入れて、個性的な料理を提供している。車で来ていなければ、ワインとかビールとかを一緒に頼みたくなるメニューであった。

今回の展覧会は 10月11日に展示替えが予定されている。もう一度来たくなる展覧会であり、その際には別のメニューを頼んでみたい美術館カフェのランチであった。

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明治末期に渡邊正三郎が興した「新版画」(新板画)を紹介する。「浮世絵を継承しつつ、現代の画家による現代の浮世絵を創作する」ために自らが版元となった。板にこだわるという点で、新板画と呼んでいる。

この特集では、新版画の代表的な作品(橋口五葉、川瀬巴水、吉田博、伊藤深水、小原古邨)、そして「知られざる新版画家」として笠松紫浪、土屋光逸、大野麥風を、さらに「外国人画家による新版画」で10名の外国人作家を紹介している。

限られた紙数で多くの版画家たちを紹介している。もっとページ数があれば、もっと多くの作品を見られたのに。

仏教美術、中国美術、日本美術、工芸…。さまざまな作品を楽しむ「美をつくし―大阪市立美術館コレクション」展(サントリー美術館)

3連休の最終日。史上最大級の台風が九州に上陸、首都圏は晴れたかと思うと、時折激しい雨に見舞われる。そんな中、サントリー美術館「美をつくし ー 大阪市立美術館コレクション」展に出かける。

「美をつくし」は難波津の航路標識である「澪標(みおつくし)」になぞらえたものであり、「身を尽くし」にも通じている。さらに今回のキャッチフレーズ「なにこれ」は「何これ?」と思う「難波のコレクション」を表している。

以下はサントリー美術館の Web サイトにある展覧会の概要紹介である:

大阪市立美術館は、東京・京都に次ぐ日本で三番目の公立美術館として、昭和11年(1936)に開館しました。長年にわたり築かれたコレクションは、日本・中国の絵画や書蹟、彫刻、工芸など8500件を超え、時代も紀元前から近代まで実に多彩です。とりわけ関西の財界人によるコレクションをまとめて収蔵する点に特徴があり、美術館の敷地も住友家から大阪市に本邸跡地が寄贈されました。

現在、美術館の建物は登録有形文化財(建造物)に指定されていますが、開館90周年(2026)を前に大規模な改修工事が行われることとなりました。そこで本展では、この長期休館を機に、各ジャンルから厳選された優品をご紹介いたします。同館でもそろって展示されることが滅多にない名品を、館外で一堂にご覧いただける初めての展覧会です。

展覧会名「美をつくし」は、大阪市章にもかたどられる「澪標(みおつくし)」になぞらえたものです。難波津の航路の安全のために設けられた標識「澪標」のように、美の限りをつくしたコレクションの世界へ身をつくしてご案内いたします。

関西で活躍した弁護士・政治家・実業家たちの珍しいコレクションが、大阪市立美術館に寄贈されている。大阪の弁護士、田万清臣氏と夫人の明子氏による仏教美術コレクション。東洋紡社長・阿部房次郎氏による中国美術コレクション。山口謙四郎氏による石造彫刻コレクション。スイス人実業家・カザール氏による漆工芸・印籠・根付のコレクション。バラエティ豊かな展示品を楽しむことができる。たとえば…

銅像 誕生仏立像 白鳳時代 7-8世紀 田万コレクション

誕生仏とは、生まれたばかりの釈迦の姿を表した仏像。お釈迦様が生まれてすぐに右手で天を指さし「天上天下唯我独尊」と言ったことを表している。

青銅鍍金銀 仙人 後漢時代 1-2世紀 山口コレクション

不老不死を得た異形な仙人。青銅製で全面に銀と金を焼き付けている。

上村松園《晩秋》 昭和18年(1943) 住友コレクション

上村松園美人画は気品に満ちている。

北野恒富《星》 昭和14年(1939)北野恒富氏寄贈

北野恒富は豊かな情感と退廃的な雰囲気を持つ美人画で一世を風靡したそうだ。

そしてスイスの実業家、カザールコレクションの中から、いろいろな根付(江戸時代に使われた留め具)が展示されていた。

山水蒔絵箱根付 明治時代 19世紀 カザールコレクション

ミニチュアサイズの道具のような根付。

道成寺牙彫根付 江戸~明治時代 19世紀 カザールコレクション

舌切り雀や安珍清姫伝説のように物語や伝説を主題にした根付も多い。

獅子舞牙彫根付 明治時代 19-20世紀 カザールコレクション

面根付

面根付

伎楽や舞楽、能、狂言における面をかたどったものを面根付と呼ぶ。さまざまな表情の面が楽しい。

ランチはいつものように HARBS にて。パスタのランチサービスにサラダとハーフサイズのケーキ・飲み物がついてくる。最近、大好きなミルクレープがランチサービスで選べないのが残念ではあるが…。

東京ミッドタウンもだんだん秋を感じさせる装いになってきた。

「六本木アートナイト 2022」なるものが開催されていて、東京ミッドタウンにもいくつかの作品が紹介されていた。

村上隆ドラえもん

村上隆によるバルーン作品は、高さ 4m のドラえもん

松田将英「The Big Flat Now」

攻殻機動隊の「笑い男」とネット上のシンボル「笑い泣き」のマッシュアップだそうである。

朝、六本木までの道のりは晴れて快適なドライブだったが、帰りの首都高では結構激しい雨に見舞われ、スバルのアイサイトが動作しない時があった。

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印象派以降のフランス絵画史・美術運動を辿る「スイス プチ・パレ美術館展」(SOMPO美術館)

SOMPO 美術館で開催されている「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」を見に行く。スイスのジュネーヴにあるプチ・パレ美術館は、19世紀後半から 20世紀前半のフランス絵画を中心とした作品を収蔵している。

www.sompo-museum.org

今回の展覧会では、印象派以降のさまざまな美術運動を大きく 6つに分けて、その特徴のわかる作品を展示している。以下の解説は、今回の展覧会の鑑賞ガイドに基づいている:

  1. 印象派
    • 伝統の主題や表現手法を否定し、新たな絵画を探究する画家たちが、官展に対抗すべく 1874年に自分たちで展覧会を開催。
    • その際の皮肉交じりの批評をもとに、この画家たちは印象派と呼ばれるようになった。
  2. 印象派
    • スーラやシニャック印象派の色彩分割をもとに、点描表現を生み出した。
    • 様々な画家による点描の作品が展示されている。
  3. ナビ派とポン=タヴァン派
    • フランス北西部ブルターニュ地方にある小さな村がポン=タヴァン。ここに滞在したゴーギャンと周囲の若い画家たちをポン=タヴァン派と呼ぶ。
    • 伝統的な絵画からも、印象主義からも距離をとり、輪郭線で色面を囲む平面的な表現方法で、自身の想像力と描かれるものの外観を統合しようとした。
    • その影響を受けたパリの若手画家たちがナビ(ヘブライ語で「預言者」の意味)派を結成した。
    • 象徴主義の流れに属し、装飾的な表現を追求、神秘主義・宗教・文学に関連した内容を好んだ。
    • その代表と言えるドニにとって、重要な主題は家族であった。
  4. 印象派からフォーヴィズムまで
    • 印象派は厳格な分割主義の原理から遠ざかり、点描に代わる長めのタッチや自由な色彩表現を採り入れた。
    • これが広がったのがフォーヴィズムである。その大胆なタッチと鮮やかな色彩が「フォーヴ(野獣)」と批評された。
    • 数年の活動の後に終焉を迎え、画家たちはそれぞれ独自の道を歩んでいく。
  5. フォーヴィズムからキュビズムまで
    • フォーヴィズム最後の展覧会が 1907年に開催されたが、そこでセザンヌの回顧展も併せて開催された。
    • これがきっかけとなり、画家たちの興味は色彩から、空間と量感の表現に移っていった。
    • キュビズムを牽引したピカソは複数の視点から対象物を捉え、そのイメージを組み合わせることで、絵画上に現実を再構築することを試みた。
  6. ポスト印象派とエコール・ド・パリ
    • パリには、印象主義をはじめとする前衛的な運動から距離を置いた画家たちもいた。
    • 両大戦間の時期に、特定の技術運動に属さず、明確な主義や信条を立てない画家たちをエコール・ド・パリと呼ぶ。
    • 第一次世界大戦前はモンマルトルが、戦後はモンパルナスが主な拠点となり、貧しい人々や労働者に共感し、その日常を描いた。
    • 1920年代には装飾芸術が注目されると同時に、古典絵画に立ち返ろうとする「秩序への回帰」と呼ばれる傾向があった。

出展作家一覧

名も知らぬ画家たちの作品が多いが、6つの美術運動に特徴的な作品が多く、非常にわかり易い展覧会であり、勉強になった。スーラやシニャック以外にも多くの画家が点描に取り組んでいたことを改めて知ったし、ナビ派モーリス・ドニが、家族を描く時の色彩が明るいのが少し意外であった。

ドニ《休暇中の宿題》 1906年

SOMPO 美術館所蔵の印象派の作品は写真撮影が可能となっている。

ルノワール《浴女》 1892-93年頃

ルノワール《帽子の娘》1910年

ゴッホ《ひまわり》1888年