新規事業創出、イノベーションの考え方のポイントを示した本が「ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する」である。
従来の戦略論は、既存市場での戦い、既存市場での自社ポジショニングなり資源なりを中心にした競争戦略を議論した。これは競合がひしめく「血みどろの海」での戦い方を示したものと言える。それに対して、まったく新しい価値を提案して競争自体を無意味なものにしよう、未開拓の市場「青い海」を作ろうというのが、この本の主張である。そのために必要な基本的な考え方のポイントやフレームワークが提示される。僕の印象では、それはまったく新しい思考フレームワークというよりも、従来の戦略に対する考え方を上手に整理したものである。コンパクトによくまとまっており、参考になる。
新しい価値イノベーションを起こし、従来のコスト-価値のトレードオフに縛られず、価値を高めながら同時にコストを押し下げるのがブルー・オーシャンの特徴である。
日経ビジネス 2005.9.19号には、ブルー・オーシャン戦略の5カ条ということで、
- 自社と他社の強さと弱さ、またその差を分析
- 特に自社にあって他社にはない強さを分析
- 強さの中でもっとも顧客に訴えられる要素を分析
- 強い要素が売りの製品・サービスを創り、価格を手頃に
- 強さを長く保つために、さらに強い要素を加える
上記を実践するにあたり、この本の中の「戦略キャンバス」という考え方は、いかに他社と違う価値を訴求するかを視覚化するツールであり、参考になる。横軸に競争要因、縦軸に買い手にとっての価値をとって、自社および他社の「価値曲線」を描く。その曲線は戦略のプロフィールを示すものであり、(1)メリハリ (2)高い独自性 (3)訴求力のあるキャッチフレーズという特徴があるなら、それは優れたブルー・オーシャン戦略になる。そのためには製品・サービスに備わっている要素を「取り除く」「思い切り減らす」「大胆に増やす」「付け加える」ことを考える。
買い手にとっての効用→適正な価格→利益を確保するコストという順番で考え、それらがすべて成立する戦略であること、実現への障害を取り除くことが重要となる。