Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

The Google Story

「ザ・サーチ」に引き続き、最近出版された Google 関係の本をいくつかまとめて読んでいる。The Google Storyは、その名の通り、Google の創業から現在に至るまでの物語である。

PageRank を使った Google の新しい検索技術が生まれた 1998年、なぜ AltaVista はそれを採用しなかったのか? Yahoo! や Excite はなぜ Google の技術を買わなかったのか?

Excite は広告ビジネスに夢中で Google の検索技術の重要性が見抜けなかった。一方、AltaVista の技術者は、自社技術の弱点を Google の技術が補強することを理解していた。しかし親会社である DEC の技術陣は、自社以外の外部の技術に頼るのを嫌がった。典型的な Not Invented Here 症候群である。

人手によるディレクトリが売りの Yahoo! にとっても、ネット全体を高速に検索する技術は必要と思われた。しかし Yahoo!Google の技術を採用しなかった。当時の Yahoo! にとって重要なのは、Yahoo! を訪れた人ができるだけ長く Yahoo! のサイトに留まって、モノを買ったり広告を見たりメールをチェックしたりしてもらうことであった。Google のような高速検索は、Yahoo! のサイトから即座に目的のサイトに利用者を誘導してしまう。Yahoo! のポータル戦略と、検索によるデスティネーションへの誘導が相容れなかったのである。ただし Yahoo! の創業者の一人である David Filo は、Sergey BrinLarry Page に大学をいったん離れて起業することを勧めたという。

当時 100万ドルという値段の技術であったが誰も買わなかったために、二人は創業という道を選択、2005年夏の時点で 100億ドルもの価値を持つ企業になっている。

前日のエントリに書いたように、時を経て Yahoo! も従来のポータル戦略からの転換を図っている。ネット広告ビジネスにおける「イノベーションのジレンマ」とも言えよう。マスをめざしていたポータルが、ロングテールへリーチするように転換を図れるか。今までに蓄積していたコンテンツとデータベースを、オープンに使わせていくことになるだろう。

この本ではその他にも、Google News を事例にとった 20% ルール(20%を独自の新規テーマ追求に費すべし)や、一流シェフによる無料の食事提供など、よく知られた Google Story がいくつも載っており、楽しく読める本である。

Google は「20%ルール」により、イノベーションを次々に生むユニークな組織マネジメントを実行している。技術者にとってはある種ユートピアとも言える環境を作って、優秀な技術者をどんどん採用している。技術者が 20%ルールの中でアイディアを多く出し、それを相互に厳しくフィルタリングする仕組みによって、Google の技術イノベーションは支えられている。Google の技術者採用に使われているという Google Labs Aptitude Test (GLATGoogle ラボ適性検査)が、この本の最後に紹介されている。興味のある方はGLATの問題と解答サイトへどうぞ。

The Google Story

The Google Story