東京理科大 MOT 大学院 宮永教授の「イノベーションとセレンディピティ-- 技術と市場の相互翻訳」に関する講演を聞く機会があったが、その中でちょうど4年前に読んで感銘を受けた本が紹介されていた。情けないことにまったく記憶から忘れ去られていた。それはカーネギーメロン(Carnegie Mellon)大学の金出教授による 「素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術」という本で、文庫化されていた。コンピュータ・サイエンスの研究者を対象とした本だが、新商品やサービスの企画にも適用できる考え方・実行の方法論が紹介されている。
新しい創造に向けた発想そのものは単純・素直・自由・簡単でなければならない。それを邪魔するのが専門家としての知識 --- 知っていると思う心である。なまじっか知っていると思うから、そのアイディアは難しいとか過去に考えたけどダメだったという発言になる。発想するときは素人であれ。
しかし発想を実行に移すときには知識もスキルも必要だ。Xerox PARC は製品化には失敗したが、優れたアイディアを形にすることができたのはやはり超一流の専門家集団だったからである。玄人として実行せよ。
米国で世界中からやってくる研究者と知的格闘をし、問題解決をし続けてきた経験が、明快な論旨で語られる。読むと元気が出る本である。
素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術 (PHP文庫)
- 作者: 金出武雄
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2004/11
- メディア: 文庫
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この本との再会のきっかけを作ってくれた宮永教授の講演「技術と市場の相互翻訳」については、「技術者のためのマネジメント入門―生きたMOTのすべて」の第7章に主な論点が示されている。
- 作者: 伊丹敬之,森健一
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/10/01
- メディア: 単行本
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