Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

竹中平蔵『闘う経済学』に見る学問と政策の間

『闘う経済学―未来をつくる公共政策論入門』は、2001年から6年間、小泉内閣のもとで金融再生・郵政民営化など重要な経済政策の仕事をした竹中元大臣が、「公共政策論」の教科書的な位置づけで著わした本である。理論(学者)と実践(経済政策責任者)両方を見通した目で、経済学の考え方は間違いなく役に立つこと、しかし実際の政策との間には埋めなければならない隙間があることを説く。その隙間の一つが、すべての政策は民主主義の政策プロセスを経なければ決定できないことである。生き物である政治・政策プロセスをうまく活用していくには、トップのリーダシップと、細部に目を向けた戦略実行力(「戦略は細部に宿る」)が重要であることを訴えている。郵政民営化など既得権や抵抗勢力との闘いの実例が、その説得力を増している。

「骨太方針」と「経済財政諮問会議」のあり方を逆手に利用することで、改革に向けた官邸主導の新しい政策決定プロセスにつなげていったこと、激しい個人バッシングを受けつつもそういった批判に耐えるための戦術など、淡々とした語り口の中からも、その熱い闘いぶりが感じられる。

議院内閣制の本質として、閣議の決定は事前に与党の承認を得ている必要があること、その与党内の各種組織(総務会と政務調査会)とその意思決定プロセス、党議拘束の実態、国会における本会議と委員会の関係など、外部からはなかなかわからない、複雑な政策決定プロセスを解説してくれているのが勉強になった。