海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』は、医療事故に対する現場の医師からの警鐘である

厚生労働省の変人・白鳥圭輔と、愚痴外来の田口公平が活躍する『チームバチスタの栄光』シリーズ最新刊が『イノセント・ゲリラの祝祭』である。個性的なキャラクターが活躍する小説で、現代医療のさまざまな問題をえぐり出す「海堂尊ワールド」全開！である。とうとう厚生労働省に象徴される医療行政・法律の領域にまで踏み込んでしまった。先進国随一の「死因不明社会」に対する警鐘を鳴らし、厚生労働省による医療行政の失敗、医療事故の現場にいる医師たちの悲痛な叫びを、小説の登場人物を通して伝え、あるべき姿を問おうとする。

エンターテイメント小説としては賛否が分かれるだろう。『チーム・バチスタ』や『ジェネラル・ルージュ』と違って、作家の主義・主張が全面に出てきており、文句なく面白い小説とは言い難い内容であると思う。しかしこういう小説という形式をもって、現代医療の抱える問題を世の多くの読者に提示し知ってもらうことを、現役の勤務医であり作家である海堂尊は選んだのだろう。そしてそういう人がいなければ、自分の身に関わるかもしれない医療事故の問題について、何も知らないという恐ろしい現実に気づかされる。

『チーム・バチスタ』シリーズについて紹介した過去のエントリは以下の通り：