Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

佐藤優『自壊する帝国』

佐藤優の処女作、国策捜査の現場を記録した 『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』を読んだ時の衝撃は忘れられない。その2作目、ソ連崩壊を現場の外交官・情報分析官の目から描いた 『自壊する帝国』が文庫となった。「文庫版あとがき」が大幅に加筆され、最新のロシアの状況にも触れられている。

佐藤優はものすごい知性・教養の塊の人だ。神学を基本にした深い教養、学問として体系的に学んできた素養を武器に、ロシアや周辺各国の政治の中枢部に友人・知人のネットワークを作った。そして彼でしか得られない情報を入手し、また彼でしか立ち会えない現場に潜り込んでいる。その博識さ、語学力、記憶力、分析力、行動力、そして酒豪ぶりにはただただ脱帽するしかない。フィクションではない、本物のインテリジェンス活動を描いたこの本が面白くない訳がない。

自壊する帝国 国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて