Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

三浦しをん『風が強く吹いている』再読

素人集団による箱根駅伝出場を描く、三浦しをん『風が強く吹いている』

1年くらい前に単行本を読んだが、このたび文庫化されたので再読した。三浦しをんのエッセイを電車の中で読むのは注意を要するが、この小説も電車の中では読めない。胸が詰まって、思わず涙ぐみそうになる箇所がいくつもあるからだ。

文庫版は最相葉月による解説が素晴らしい。執筆に6年を要したこと、徹底管理型ではない指導者がいて若者をどう伸ばしていくかに腐心している陸上部に、著者が取材したことなどが明かされる。そして三浦しをん自身による次の言葉を引き出している。


「私自身、報われなかったのはがんばらなかったからだという考え方に納得がいかないからです。才能や実力のない人に到底たどりつけない目標を与えてがんばらせるのは、人間を不幸にすると思う。できる、できないという基準ではない価値を築けるかどうかを、小説を通じて考えてみたかった。報われなかったからといって、絶望する必要はないんじゃいか、と」

才能のある者が超人的な努力をしてたどりつくところとは、また別なところがそこにはある。


風が強く吹いている 風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)