Muranaga's View

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新興市場における携帯電話の驚異 --- The Economist:「新興市場におけるテレコム産業」特集

ガラパゴス携帯」ということばが象徴しているように、日本のケータイは独自の進化を遂げた。では日本以外のグローバル市場はどうなっているのか。まずは欧米市場。iPhone に代表されるスマートフォンが普及し始めている。そしてアフリカ・中国・インドなどの新興市場ではベーシックな携帯電話の普及が著しい。このような開発途上国・貧しい国で、携帯電話がなぜ、どのように普及しているのか、そして今後どうなるのか。日本にいて国内向けのビジネスを営んでいるとなかなか状況が見えない。

The Economist(September 26th, 2009)は、「新興市場におけるテレコム産業」と題して、携帯電話ビジネスを特集している。いい機会なので少しづつ読んでいくことにする。

最初の導入部分をまとめておく(以下、図をクリックすると、原文のウェブサイトに飛ぶ)。

Mobile marvels 「携帯電話の驚異」
貧しい国は既に携帯電話の恩恵を受けており、第2ラウンドへの準備ができている


Where to look for growth

ウガンダに住む Ms Wokhwale は 2003年、ウガンダで「村の電話」("village phone")オペレータになった最初の15人のうちの一人である。マイクロ・ファイナンスにより、ベーシックな携帯電話端末と屋根に置くアンテナを購入。村の他の住人たちが通話をするたびにお金をとり、少しだけ儲けが出るようにした。この利益で借金を返し、二つ目の携帯電話を買うことができた。さらに携帯電話からの収益でビールを売ったり、音楽・ビデオショップを開いたりすることも可能となった。

どんな人にとっても電話で話すことはとても重要であり、貧しい人でも通話料を払うので、Ms Wokhwale は成功した。道路、郵便、列車、固定電話が使えない中、携帯電話は旅行を代替し、素早い情報へのアクセスを可能にし、ビジネスを始めることを容易にした。途上国では、収入が増えると、家計はエネルギーや水よりも携帯電話に使われるようになることがわかった。

先進国では固定電話から携帯電話へ徐々に移行したが、途上国では携帯電話が即、通信(テレコム)を意味している。2000年の時点で、全世界の携帯電話7億台のうち1/4を途上国が占めた。2009年初頭までに40億台のうちの3/4 を占めるまでになった(図1)。複数台持つ人がいることを考慮しても、36億人の携帯電話利用者がいると考えられている。

成長が著しいため正確な数は把握しづらいが、2009年3月までの1年で、インドでは 1.28億、中国では 8900万、アフリカ全体で 9600万、新規加入者が増えた(図2)。中国が世界最大の携帯電話市場で、7億人が契約している。テレコム産業は先進国から途上国へ重心が移動しているのである。


Where to look for growth

Not the usual suspects

3つのトレンドがテレコム業界を作り変えようとしている。

  1. 中国、インド、アフリカ、中東の途上国での携帯電話の普及は、西欧の通信事業者ではなく、その国の事業者の台頭によってもたらされている。彼らは独自のビジネスモデルと産業構造を作り出し、利用者一人当たりからの利用料が少なくても利益が出ることを可能にした。
  2. 中国の二つの通信機器メーカー Huawei と ZTE がグローバルに台頭してきて、西欧のメーカーを淘汰している。その典型的な犠牲者が Nortel だ。
  3. 音声とテキスト・メッセージの次のサービスが開発されている。富裕国では音楽ダウンロードやゲームといった他愛ないサービスだが、貧しい国では携帯電話での農業に関するアドバイス、ヘルスケア、送金など、新たなサービスが経済開発に大きな便益をもたらす可能性がある。さらに数年以内には、携帯ネットワークと低価格の機器により、フル・インターネットアクセスが開発国にもたらされようとしている。

この特集では、この3つのトレンドを一つ一つ吟味する。それぞれも重要だが、これらのトレンドが一緒になって、貧しい国の産業構造を作り変えているだけではない。世界を変えているのだ。


Mobile marvels

ここまでが特集の導入部である。The Economist の同じ号には "The power of mobile money" 「モバイル・マネーの威力」という社説(leader)が掲載されており、アフリカで普及した携帯電話の次のステップとして、携帯電話による電子マネーの可能性を記している(こちらは JB Press で邦訳がでている)。


The power of mobile money

The Economist(September 26th, 2009)特集「新興市場におけるテレコム産業」まとめ

  1. "Mobile marvels"(原文)→ 「携帯電話の驚異」(日本語要約)
  2. "Eureka moments"(原文)→ 「発見の瞬間」(日本語要約)
  3. "The mother of invention"(原文)→ 「発明の母」(日本語要約)
  4. "Up, up and Huawei"(原文)→ 「上へ上へ、そして遠くへ(Huawei)」(日本語要約)
  5. "Beyond voice"(原文)→ 「声を越えて」(日本語要約)
  6. "Finishing the job"(原文)→ 「仕上げ」(日本語要約)