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上達するゴルファーの考え方を教える『ロジカルゴルフ』

なかなか90を切れない「停滞ゴルファー」と、安定して80台、70台で回る「上級ゴルファー」の違いとは何か?停滞しない「上達ゴルファー」になるためには? のべ 2万人もの生徒を教えてきたレッスンプロ、尾林弘太郎が提唱する「考えるゴルフ」をまとめた本が『ロジカルゴルフ』である(尾林プロのブログ)。アベレージ・ゴルファーは累積の練習量で10万球、100ラウンドくらいをクリアすると、技術の安定・停滞を感じ始めるらしい。これを超えてからは練習量ではなく、「考えた練習とラウンド」が必要になる。

ロジカルゴルフ―スコアアップの方程式 (日経プレミアシリーズ)

ロジカルゴルフ―スコアアップの方程式 (日経プレミアシリーズ)

『ロジカルゴルフ スコアアップの方程式』は、停滞せずに上達していくための心構え、スイング技術、コース戦略を 137 のメッセージとしてまとめている。たとえば「停滞ゴルファー」は最高の結果をイメージしてゴルフをするが、「上達ゴルファー」は最悪の結果を考えて危機回避をする。そのように考え方を変えられるかが停滞から脱する鍵となる。

この本の中で特に興味を引いたのは「スイング部品」の考え方。トップ、ダフリ、スライス、フック、プッシュ、プル、シャンクのミスがどうして出るのか。それを防止するスイング要素は何か。ミスを防止する「スイング部品」と、その組み合わせ・調合を練習で身につけることの重要性が説かれる。

『ロジカルゴルフ 実戦ノート』は続編。実際にコースをラウンドする時の上級者の考え方が紹介される。「停滞」しない、「上達」するゴルファーになるためには、スイング技術だけでなく、上級者の思考技術・考え方を学ぶ必要がある。「停滞ゴルファー」は狭いところに打つためのスイング技術を求めるが、上級者は狭いところに打てないものと考え、コース戦略を考える。ミスをミスと見せないマネジメント技術を身につけている。

この続編ではラウンドするにあたって「1ストロークを打つ際に考えるべき15のこと」を順序だてて説明されるので、とてもわかり易い。「状況判断」→「結果設定」→「戦略(すべきこと)」→「実行力(すること)」→「結果分析・反省」というプロセスにおいて、15もの考えるべきこと・実施すべきことを解説する。それは以下の通り:

  1. 状況判断:
    1. ライの判断
      • ライ優先、距離は後
      • 地面:フェアウェイ、ラフ、ベアグラウンド(ハーフトップで打つ)、バンカー、芝(順目、逆目)
      • 傾斜
    2. 風の判断
    3. 危険エリアの判断
      • 絶対危険エリア(100%そこに打ちたくない)を決める。パットでも。
  2. 結果設定:「状況判断」と自分の技術から現実に球の止まる地点を決める
    1. 球筋の想定
      • 風・傾斜から出やすい球筋を予測する。
    2. 結果設定
      • 「球が止まる地点」を決める。
      • 「あのバンカーは仕方ない」など「仕方ないエリア」を決める。
  3. 戦略:「結果設定」した地点に球を止めるためにすべきことを決める
    1. 必要感覚距離
      • 風、打ち上げ・打ち下ろし、傾斜から必要と感じる距離を決める。
    2. 球筋の選択
      • 発射ライン、曲がりを「スイング部品」調合で決める。
      • 例:フェード=プッシュ防止+フック防止、ドロー=プル防止+スライス防止
      • それに風・ライの要素を加味する。
    3. クラブ選択
      • ライが優先、距離はあと
      • 必要感覚距離 + 球筋 でクラブを自動的に選択
      • キャリーの飛距離を現実的に認識すること
      • 迷ったときは大きいクラブで「飛ばさない」選択をする。
    4. スイングマネジメントを行う
      • 毎回変化するライへの 1球での対応力
      • 傾斜、ラフに対する部品調合を練習で高めておく。
    5. ディレクション(打ち出しライン)を決める
      • 球筋の曲がり幅の許容範囲を設定する
      • ドローの時は両肩の平行線より少しプッシュに発射
      • フェードの時は両肩の平行線より少しプルに発射
  4. 実行力:
    1. 素振りとルーティン
      • 「スイングマネジメント」通りに実行するための素振りとルーティン
    2. アドレスする
      • スイング軌道を先に考え、アドレスを合わせる。
      • 右ひじがボールとの距離のセンサー
      • 右ひじ → グリップ →スタンスの順番で細かく足踏みで微調整
      • 発射ラインを景色から決め、そのラインを景色に左右されずに時計回りに作る。
    3. スイングする
      • アドレス後は「スイングボックス」に入る。結果を忘れスイングに集中する。
      • 素振りとルーティンの段階で注意ポイントを確認し、その感覚をメモリーする。その感覚が消えない間にスイングする(2秒以内)。
  5. 結果分析・反省:
    1. 結果を受け入れる
      • すべての結果は自分が作り出したもの、100% 自己責任である。
      • 感情をコントロールして平常心を保つ(怒っている暇はない)。
    2. 反省する
      • うまく行った原因、ミスした原因を振り返る。
      • 結果がよくないときによかったこと(できたこと)を確認することが重要。

「1打打つのに15のことを考えているんだ!」とはじめは驚いた。しかし読み進めるうちにそうしなければいけないと感じるようになる。今の自分のレベルではすべてを考えるのは無理だが、少しづつできるようになっていきたいものである。計画し実行し、結果を「反省・分析」して、練習の質を高めていくという当たり前のことを繰り返す大切さを再認識させられる。

"Play each stroke as a thing to itself. "「1打 1打をその 1打としてプレーする」という言葉を噛みしめたい。「1打を打つために、すべきことに集中して、結果を受け入れ、反省する。」この本に書かれているように、

  • ゴルフは「100% 自己責任」のスポーツ
  • ミスをミスとして素直に、そして冷静に受け止める
そのようなプレーヤーになりたいものである。

『書斎のゴルフ』Vol.20 に「ロジカルラウンド」という著者のラウンドレッスンの紹介記事がある。この本と合わせて読むと、実際のラウンド例(ホール図つき)に基づいて、非常に実戦的に「ロジカルゴルフ」のコース戦略マネジメントを学ぶことができる。(さらに、この号の『書斎のゴルフ』には北野正之プロ「上手な人のゴルフ習慣」という記事があり、これを読むとラウンド中に使うゴルフ脳の質と量が、上級者では全然違うレベルにあることを痛感する。非常に読み応えのある号である。)

余談になるが、この本を読んでいる時に感じたのは、ゴルフはビジネスとよく似ている、ということ。『ロジカルゴルフ」に書かれた思考プロセスは、いわゆる PDCA(Plan, Do, Check, Action) サイクルと同じことだし、リスクをリスクと認識してそれを最小化するマネジメントも、経営に通じる。優れた経営者の中にゴルフが上手い人が多いのは、そのビジネスでの思考がそのままゴルフにもあてはまるからなのかもしれない。

そろそろ僕も通算で 100ラウンドになろうかというところ。練習も週 1回 250球として 5年半だから、7万球というところだろうか。「停滞する」前に、この本に出合えてよかった。

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