池田学の作品は、超細密なペン画で描かれるスケールの大きなテーマの大作で、イマジネーションに溢れている。ミクロに細かく描き込まれたものが折り重なって、マクロの大きなテーマを構成する。部分と全体が織りなす壮大な美と言ってもいいだろう。2017年に開催された池田学の展覧会に行きそびれたが、その後、NHK BS の再放送で、最新作「誕生」の制作現場が紹介されたのを観て、ますますこの作家に興味を持った。3m x 4m もの大作である「誕生」は、米国マディソンにあるチェザム美術館の「アーティスト・イン・レジデンス」という制度を利用して、美術館の中で、3年3ヶ月かけて制作は行われた。制作現場を一日 1時間公開して、見学者と画家とが交流する。1mm にも満たないペン先で、一日に描けるのは 10cm 四方だと言う。
それ以来「この作家はどういう人なのだろう?その頭の中はどうなっているのだろう?」と、行けなかった展覧会の図録や、「誕生」の制作過程を画家自身が解説する本、「美術手帖」の池田学特集、さらには池田学自身がマディソンでの生活の様子を記したブログ「マディソン日記」などを眺めたり読んだりしていたが、ついにその代表作をこの眼で観る機会を得た。六本木・森美術館で開催されている「カタストロフと美術のちから展」に、「予兆」(2008)と「誕生」(2016)が出品されたのである。
「予兆」(2008)の全体とその一部:
「誕生」(2016)の全体とその一部:
池田学がペンで描き込んだ世界の一部が垣間見えただろうか?
iOS やアンドロイドのアプリでも、池田学の作品を観ることができる。タブレットで自由に拡大・縮小しながら、そのミクロとマクロの織りなす世界を堪能ことができる。(このアプリは、友人が経営する IT ベンチャーが開発した。)
ブログ「マディソン日記」は、2019年になって再開された。更新されるのが楽しみである。
ikedamag.exblog.jp
池田学に関する本・雑誌を、簡単な読書メモと共に、紹介しておく:
NHK BS の再放送で、最新作「誕生」の制作現場が紹介され、その人柄・考え方を知ったのを機に、この画集(展覧会の図録)を購入することにした。実物の迫力には全然かなわないだろうが、それでもその魅力を十分に堪能できる。
最新作「誕生」はマディソンの美術館の「アーティスト・イン・レジデンス」という制度を利用して制作された。美術館に滞在して制作、その過程や完成された作品を公開することで文化交流を図る制度とのこと。その 3年にわたる制作現場を NHK BS の再放送をたまたま観ることができたのだが、美術館で制作の部屋を公開して観覧する人たちと交流しながらの制作、それが自分に合っているという画家に、好感を持った。
この本は「誕生」の制作背景を画家自身が解説、さらに絵の一部を取り上げて説明する。この本のカバー自体が、「誕生」の複製画になっているというユニークな装丁。1mm 以下のペン先で描くため、1日に描ける量は 10cm 四方だという。
米国での生活を書き連ねた「マディソン日記」というブログも興味深く読んだ。