国立新美術館で開催中の日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念「ブダペストーヨーロッパとハンガリーの美術400年」展に行ってきた。日本とオーストリアとの国交もちょうど 150周年にあたり、「ハプスブルク展」も開催されたが、1869年当時、「オーストリア=ハンガリー帝国」という国があり、そこと日本が国交を結んだのである。ハンガリーの王を、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が兼ね、その下で二つの国がそれぞれ別の政府と国会を持つという「二重帝国」であった。ハンガリーの独立を形式的に認めるものの、実質的な支配はオーストリア、すなわちハプスブルク帝国が握るという産物である。
ブダペスト国立西洋美術館と、ハンガリー・ナショナル・ギャラリー、二つの美術館所蔵の絵画・彫刻が 130点も展示されている、非常にボリューミーな展覧会である。ルネサンスから20世紀初頭までの美術を、年代順・地域別・テーマ別に展示してあり、ヨーロッパの美術史の軌跡を辿ることができる。イタリア(ヴェネツィアとフィレンツェ)、ネーデルラントとドイツ、オーストリア、スペイン、フランス…。宗教画、肖像画、風景画、静物画、風俗画…。印象派、ポスト印象派、象徴主義、アール・デコ…。
それに加えて、あまり知られていないハンガリーの画家・作家たちの作品を観ることができる。シニェイ・メルシェ・パール《紫のドレスの婦人》は、鮮やかな紫が印象に残る絵である。ハンガリーの絵画は、長い間ハプスブルク家の統治下にあり、またパリから距離もあるためか、印象派の影響が限定的であると感じた。
作品リストを見てもわかる通り、有名な作品は少なく、少し地味な企画の展覧会かもしれない。しかし多様な作品がたくさん集められ、とても見応えがある。人の出足もそんなに多くはなく、じっくり一つ一つの絵を楽しむことができる。絵画のモチーフやアトリビュートに関する知識、そして宗教画、特に聖書の物語を知っているともっと楽しめたのかもしれない。関連する書籍で少しづつでも学んでいきたいものだ。
ハンガリーに関する豆知識を少しだけ。一つはハンガリーの人名は、日本と同じく、姓・名の順である。ただし海外で活動する時には、他の欧米のやり方に倣って、名・姓の順で表記することも多い。もう一つ。ハンガリー Hungary は英語名。ハンガリー語ではマジャルである。日本が英語では Japan、日本語では Nippon となっているのと似ている。