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超絶技巧が凄い「超写実主義絵画の襲来」(Bunkamura ザ・ミュージアム)

多くの展覧会が延期、美術館が閉館している中、会期を短縮して開館している Bunkamura ザ・ミュージアム「超写実主義絵画の襲来」展に出かける。去年の台風の水害により現在は休館しているホキ美術館所蔵の写実絵画の展覧会である。ホキ美術館には 2017年10月に出かけて、その超絶技巧の細密な絵画に度肝を抜かれた。今回の展覧会には約 70点が出品されており、あの感動を再び味わうことができた。

www.bunkamura.co.jp

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生島浩《5:55》

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五味文彦《いにしえの王は語る》

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小木曽誠《森へ還る》

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小木曽誠《森へ還る》(部分)

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島村信之《幻想ロブスター》

2年半前にホキ美術館を訪問した時の感想をそのまま引用しておく:

写実絵画は、洋画としてはとうの昔に「終わった」と考えられるべきものなのかもしれない。写真の登場とともに、「現実を写し取る」絵画の役目は終わり、抽象画、心の内面を描く絵に、近現代の美術は進んでいったと考えられる。そういう時代にあえて写実の道を選んだ画家たちがいる。その「超絶技巧」は、素直に「凄い」と心を打たれる。その技術を見せつけるために、あえて難しいモチーフを選んだのではないかと思わされるものもある。女性の表情、肌、髪。甲殻類、樹木。布、ガラス、水。そして風景…。ちょっと離れてみても凄いし、近づいて仔細に見てもやはり凄い。

絵画のような写真を撮ったのがソール・ライターだとすれば、写真のような絵画を描くのが写実絵画である。古典絵画の写実の技法を、究極まで高めたのが、スーパーリアリズム、超写実主義ということになるのだろう。写真で切り取られた画像ではなく、それをもとに、あえて人が絵筆を持って、現実を現実らしく描く。写真とは違う存在感が、写実絵画からは感じられる。画家の来歴を見ると、レオナルド・ダ・ヴィンチフェルメール、ベラスケスなどの模写をしてきた人が多い。中にはイタリアで壁画修復を学び、画家に転じた羽田裕のような人もいる。彼は何層にも重ねて描く油絵を「塗装工学」と呼ぶらしい。点描のような細密表現が独特である。

相変わらず、森本草介の筆触を消す技法、セピアトーンで、少しだけソフトフォーカスのかかった女性の絵や風景画が好きである。エディンバラ在住の原雅幸の風景画にも心惹かれる。

日本には数多くの超写実絵画の画家たちがいる。下記の本でその一端を知ることができる。

写実絵画とは何か? ホキ美術館名作55選で読み解く

写実絵画とは何か? ホキ美術館名作55選で読み解く

水害で休館しているホキ美術館が、無事に再開されますように。

www.hoki-museum.jp

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