試乗もせずに車を買うという前代未聞のことをやってしまった。新型レヴォーグ STI Sport。2020年8月20日に先行予約販売が始まり、しばらく悩んでいたものの、結局 9月になってから申し込み、12月初めになってようやく試乗。さらにそこから3週間、クリスマスを過ぎてからの納車となった。旧型と比べて、エクステリア・デザインはキープ・コンセプトだが、車の中身は全然別のものになっており、走りの性能と高機能な安全運転支援機能アイサイト(EyeSight)の大幅な進化に魅かれた。
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ステーションワゴン好きの一人としては、レヴォーグよりもクラスが一つ上の Dセグメントの外国車、上質で洗練されたデザインのボルボ V60 と比べたりもしたのだが、日本車としては最高レベルの運転支援システム、コストパフォーマンス、安心できるディーラー対応などを考慮して、結局のところ、新型レヴォーグを選択した。この10数年、レガシィ、レヴォーグ(VM型)、新型レヴォーグ(VN型)と乗り継いできた訳で、つまるところ、僕はスバルのツーリングワゴンが好きということなのだろう。
旧型と比較して、新型レヴォーグが大きく変わったのは、運転支援システム「アイサイト」の進化、縦型のセンター・インフォメーション・ディスプレイ、フル液晶メーターを備えたデジタル・コクピット、強化されたボディー剛性と新開発の 1.8L エンジンによる走りの性能である。さらに STI Sport には、電子制御ダンパーによるしなやかな乗り心地、ドライブ・モード選択による「キャラ変」といった魅力がある。
納車して数日、実際に走らせてみての性能や利便性について、旧型と比較したファースト・インプレッションをまとめておく。
乗り込んですぐに目につくのが縦型の 11.6インチのセンター・インフォメーション・ディスプレイである。このタブレットのようなシステムを使って、さまざまな設定を行う。カーナビの地図も大きく表示される。いわゆるインフォテインメント・システムといわれるものである。
そして運転席の目の前にあるのが 12.3インチのフル液晶メーターである。
- 11.6インチ・縦型ディスプレイ(インフォテインメント・システム):
- 動作はきびきびとして使い易い。
- 設定項目がたくさんあり過ぎて、設定には少なくとも 1時間、それ以上はかかる。iPhone / iPad のようなデバイスを新たに買って設定している感覚に近い。
- 画面上のエアコンボタンを自分の好みに設定できる。僕の場合、「外気/内気」をワンプッシュで切換えられるようにした。
- 坂道発進などを楽にしてくれる AVH(オートビークルホールド)のハードボタンはなくなり、ワンタッチで On/Off できなくなった。ディスプレイ経由で 2アクションになるのが少々煩雑。しかもエンジンをかけるたびに、デフォルトで AVH Off に設定し直されてしまう。
- このセンター・インフォメーション・ディスプレイの再起動は、VOLUMEノブを 10秒以上長押しすることにより行う。
- 12.3インチ・フル液晶メーター:
- 地図表示、メーター表示、アイサイトの状況表示と3つ切り替えることができる。
- 高速道路上では地図表示よりも、メーター表示やアイサイトの状況表示の方が使い易い。隣のレーンにいる前後の車の様子がわかる。
- パドルシフトを使って、マニュアルでギア操作をする時、8段あるギアのどれに入っているかはメーターの一番下に表示される。この位置だと、ステアリングが邪魔になって、少々見づらい時がある。ステアリングや座席の高さを調整する必要がある。
- インテリア
- 質感は、旧型に比べて格段に向上していると感じる。Dセグメントの外国車に比肩するところまではいかないが、日本車としては、かなりいい方なのではないだろうか?
- シート
- 前席のホールド性は、旧型に比べて高い。前席・後席共にシートヒーターが備わっている。
- 後席に向けて、エアコンの吹き出し口、USBの電源が用意される。
- ウィンドウ
- 細かなことだが、エンジンを切っても、ウィンドウを開けられるようになった。ガソリンスタンドで店員と話す時に、わざわざドアを開け閉めしなくて済む。
- 荷室
- フロア下には大容量のサブトランクが備わっている。
- ゴルフバッグが 3-4個、真横に積める荷室の積載性も、旧型から継承している。
- リアゲートは電動で開け閉めができるようになった。特にスバルのエンブレムに手や肘をかざすと、リアゲートが開くようになっている。
新開発の 1.8L エンジン、パワートレインは、旧型からかなり進化していると感じる。特にアクセルワークに合わせた滑らかな加速は素晴らしい。
- スバルグローバルプラットフォームをさらに強化したボディー剛性により、高速走行時の安心感が増している。
- 車内の静粛性も、旧型より増している。これには新開発の 1.8L エンジンも貢献していると思う。
- 旧型 1.6L に比べて、新型 1.8L は力強い。レギュラーガソリンで走り、アイドリング・ストップ機能も継承している。
- 走り出してすぐに気づくのは加速の滑らかさ。旧型で感じたアクセルワークと実際の加速とのラグは、ほとんど感じない。アクセルを開けるとリニアに加速していく。
- CVT はパドルシフトで使うと 8段変速になる。
- 低速域では、低いブロロロ…という音が心地よい。往年の水平対向エンジンのボクサー・サウンドを感じさせる。
- 燃費については、もう少し走り込んでから、旧型と比較したい。
方向指示器のレバーの使い方には、慣れが必要である。
- 方向指示器には「ワンタッチ機能」があって、レバーをチョンと軽く押すと、ウィンカーは 3回だけ点滅する。レバーを奥まで押し込むとずっと点滅していて、ステアリングを戻すと消える。
- 曲がり角を曲がる時は、レバーを奥まで押し込めばいい。
- 車線変更する時には、軽く押した状態を保持するというのが、正しい使い方のようだ。ウィンカーを出して意思表示してからおもむろに車線変更するには、「ワンタッチ機能」の3回だけの点滅時間は少し短すぎる。
- とは言え、今までの使い方だと車線変更する時にも、レバーを押し込んでしまって、ウィンカーを出しっ放しにしがちである。たとえば右に車線変更する時に、方向指示のレバーを右に押し込んでしまうと、車線変更した後も点滅がそのまま続いてしまう。それを消すためには、軽く左に戻せばいいのだが、慌ててレバーを今度は左に押し込んでしまうと、左へのウィンカーが点滅してしまう。ウィンカーが右に点滅したり左に点滅したり…。周囲に迷惑をかけることになる。
- これは慣れるのに少し時間がかかりそうである。この方向指示器のワンタッチ機能を Off することもできるが…。
新型レヴォーグ STI Sport の最大の特徴は、ドライブ・モードの切替えによる「キャラ変」である。エンジン、ステアリング、電子制御ダンパー、AWD、アイサイト、エアコンの特性を変えることにより、Comfort / Normal / Sport / Sport+ という4つのモードに切り替えられるだけでなく、Individual という自分好みの設定を行うことができる。
- ドライブ・モード切替え:
- Comfort モードは、穏やかな走り。ステアリングは軽く、サスペンションもしなやか。旧型にはなかった快適な乗り心地を実現しており、家族を乗せる時にぴったりである。。
- Normal / Sport が、旧型のような乗り心地に近い。
- Sport+ はスポーツカーのような特性になる。
- 自分向けの Individual 設定は、Comfort をベースに、ステアリングとエアコンを Normal に設定することにした。
- 電子制御ダンパー(サスペンション):
- 道路の凹凸の吸収は素晴らしい。特に Comfort モードでは、凹凸やマンホールをしなやかに乗り越えていく。
- Comfort モードでは、道路のざらつき感も抑えられている。路面に吸い付くような乗り心地で、個人的には最も気に入っているモードである。
- Normal / Sport モードが、旧型のサスペンションに近い。ロードノイズも拾うようになる。
- Sport+ モードでは、硬い乗り心地になる。減衰が大きくなり、路面状況がダイレクトに伝わるようになる。
- 2ピニオンの電動ステアリング:
- とても滑らかで、かつダイレクトに操舵している感がある。
- Comfort モードでのステアリング・フィールは軽い。
- 逆に Sport+ モードだと重くなり、ハンドル操作がそのままダイレクトに車の挙動につながる。
ドライバーをモニタリングするシステムが備えられており、アイサイトX と連動する。ドライバーがわき見運転をしたり、居眠り運転をしたりすると警報が鳴る。ステアリングから手を離したまま、反応しないでいたりすると、ドライバーに異変が起こったと認識して、直線道路の安全なところに車を自動的に止めるようになっているらしい。
- ドライバー・モニタリングシステム:
- ドライバーとして登録できるのは 5人。登録していないドライバーが座ると、登録を促される。
- ドライバーごとに、シートポジションやミラーの位置を合わせてくれる。
- エンジン始動前にドアを開けると、ドライバーをスキャンし始める。この時シート運転席に座っているドライバーを認識する。マスクをしていたり、よそ見をしたりしていると、認識に失敗することがある。
- わき見運転をしたり、居眠り運転(まばたきを検知)をしたりすると警告音が鳴る。
そして今回のレヴォーグの目玉と言える先進運転支援システム「アイサイト X」について記しておく。
- アイサイトの進化:
- ステレオカメラだけでなく、前後方にミリ波レーダーやカメラが備えられて、360度センシングを実現。前方・側方への障害物が検知されるようになっている。
- 狭い路地から出る際、駐車場にてバックで出る際など、見通しが悪い時に、障害物を検知するとプリクラッシュ・ブレーキが作動する。
- 後方から近づいてくる車は死角に入りがち。ドライバーがそちらへ向かってウィンカーを出したり、車線変更しようとしたりすると、警報を鳴らすだけでなく、ステアリング操作を元に戻すように力が働く。
- アイサイト X:
- 3D 高精度地図と衛星により自社位置を認識して運転を支援する。
- 渋滞時ハンズオフ:高速道路・有料道路上で 50km/h 以下(渋滞時)だとハンズオフ運転が可能になる。この時、いったん停車しても先行車に追従して再発進する。
- アクティブ・レーンチェンジ:高速道路・有料道路上で 70km/h - 120km/h で、システムが車の後方・前方を確認しながら車線変更を行ってくれる。
- カーブや料金所で減速する。
- ドライバーの異常を検知すると、路肩に停車する。
- アイサイト X の 3D 高精度地図:
- 日本デジタル道路地図協会の全国デジタル道路地図データベースを使用。
- データ更新頻度は、2021年4月以降、年4回を予定(有償)。スバルのディーラーにて更新する。
アイサイト X については、もっと長距離を走り込んでから、その性能や使い勝手をまとめることとしたい。
カーナビゲーションをはじめとするインフォテインメント・システムの使い勝手は下記の通り:
- カーナビゲーション:
- カーナビの地図:
- マップマスター製とのこと。最初の3年間は、無償で毎月の差分更新が受けられる。4年目以降については、有償で地図を購入すれば、差分更新は無償となる。
- 毎月の差分更新は WiFi を使う。マンションの駐車場など、自宅の WiFi が届かない環境だと、差分更新は難しい。Pocket WiFi や WiMAX を使うことになる。
- さっそく差分更新してみると、87MB のデータで 5回分の更新であった。更新にかかる時間は30分ほど。
- 最新版は 2020年11月版の地図データであり、2020年5月のバージョン番号がついており、2020年3月に開通した首都高・横浜北西線はちゃんと反映されていた。
- 有償地図を購入して更新する場合は、USB メモリー(64GB 以上の空き容量)を使う。
- ハンズフリー電話:
- 音声操作:
- ステアリングにあるトークスイッチを押すと、音声認識モードとなる。
- 予め決まったコマンドを発話することにより、カーナビ、電話、音楽再生(iPhone)、テレビ、ラジオ、エアコン(温度の上げ下げ、風量指定)を操作することができる。
- 「Hi、メルセデス」のような対話型のシステムではない。定型の音声コマンドで電話帳や履歴などの選択候補をディスプレイに表示させて、そこから音声で次の操作を選んでいく。認識に失敗した場合には、指での選択操作を組み合わせていく。
- 一方、Apple CarPlay 接続することによって、iPhone の操作は Siri を使って対話的に行える。電話や音楽再生は Siri を使って、対話型で進める方がよいかもしれない。メッセージの送受信もできる。
- Apple CarPlay に対応:
- USB 接続した時に、単なる iPhone として接続するのか、Apple CarPlay 対応機器として接続するのかを選択する。
- iPhone として接続する時には、音楽を再生することができる。
- Apple CarPlay として接続すると、電話をかける、音楽を再生するといったことに加えて、Google マップ、Apple のマップ、Yahoo! カーナビなどを、大型ディスプレイ上で使える。ただ Yahoo! カーナビとの連動については、まだ動作が不安定である。
- iPhone の Siri を使って、音声対話でアプリケーションの操作ができる。つまり「Hey, Siri」と話しかけて、ハンズオフで電話をかけたり、メッセージを送ったり、音楽を再生したりできる。
- Siri に話しかける時には、ステアリングのトークスイッチを押し続ける。
- SUBARU STARLINK サービス:
まだ数日乗っただけだが、その走りと乗り心地の進化にとても満足している。滑らかな加速に加えて、特に Comfort モードのしっとりとした走り、しなやかに道路の凹凸やマンホールをいなしていくサスペンション、静粛性などは、旧型とはレベルの違うものを感じている。そして走りや乗り心地だけではなく、運転支援システム・アイサイトや、インフォテインメントと言われる車載 IT の大きな進歩が印象に残るレヴォーグのフルモデル・チェンジであった。5年も経つと、全然レベルの違う IT システムになる。iPhone のようなデジタル・ガジェットのバージョンが上がる感覚に、少し通じるものがあるかもしれない。
一方、環境性能と言う点では課題が残っている。今後、すべての車が電動化になっていく時代にあって、もしかしたらスバルというメーカーは単独では生き残れないかもしれない。スバルの水平対向エンジンの車を買うのは、これが最後になるのかもしれない。ふとそんなことを考えたりした。
しかしスバルには今の水平対向エンジン・AWD・CVTはそのままに、電動モーターを組み合わせる e-BOXER という技術がある。今回のレヴォーグ用に新開発されたエンジンは全長が短縮されてスペースを作っているし、荷室には大容量のサブトランクがあってそこにバッテリーを積むことができる。そう考えると、次のマイナーチェンジには、e-BOXER 採用のレヴォーグが出てくるのではないか?そうなることを勝手に想像して、期待しているスバリストの一人である。
追記:2021年1月5日
冬休み中に 500km ほど走らせてみて、アイサイトと車載 IT の進化について、改めて旧型と比較しながらまとめてみた。
愛車遍歴(スバル遍歴)
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