2021年3月、107歳で亡くなった現代美術家、篠田桃紅の個展が、そごう美術館で開催されている。もともとは書家であったが、文字を解体し、墨による抽象画を描いた。43歳で渡米。日本人は文字の形と意味をつい探してしまうが、文字の意味のわからない海外に拠点を移すことにより、墨そのものの美しさを見て欲しいという考えによるものだった。書から墨による抽象画へと発展したアメリカでの活躍であったが、乾燥したアメリカの気候では、墨は滲まずにかすれてしまう。再び日本に戻り、墨の可能性を追求していくことになる。
その作品を前に、筆の動きを想像する。一気呵成に運ばれたと思われる筆の動きに、ある種の潔さを感じて、気持ちがいい。