トーハクの本館の一室で開催されている特別展「空也上人と六波羅蜜寺」を観に行く。
お目当ては日本史の教科書に載っている空也上人像である。
10世紀以降、現世利益ではなく浄土への往生を求めることで現世の苦しみから逃れることを説く浄土教が流行した。念仏によって阿弥陀仏に帰依することにより、極楽浄土への往生を願う信仰である。民間布教者で「市聖」と呼ばれた空也(903 - 972)は比叡山を離れ、京の町中を遊行して人々に念仏の教えを説いた(『詳説 日本史研究』山川出版社より)。
六波羅蜜寺にある空也上人像は、上人が亡くなってから 200年以上も経った 13世紀の仏像だが、市井の人々の畏敬の念と、上人の「南無阿弥陀仏という言葉が 6体の仏になった」と言う伝承を表している。運慶の四男・康勝の作。この展覧会では、ぐるっと 360度回って、さまざまな角度からこの写実的な仏像を観ることができる。
空也上人は疫病がおさまるように祈り、十一面観音菩薩立像を造って、西光寺を創建した。これが今の六波羅蜜寺である。六波羅蜜寺は鳥辺野と呼ばれる埋葬の地の近くにあり、「あの世」と「この世」の境界にある寺として、人々の信仰を集めた。
展覧会場では、来場者一人一個限定で、海洋堂の空也上人像のフィギュアが販売されていた。なかなかの人気のようである。
トーハクには「博物館でお花見を」との垂れ幕があるので、レストラン「ゆりの木」でのランチのついでに。