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「没後50年 鏑木清方展」:鏑木清方は単なる「美人画家」ではなかった(東京国立近代美術館)

「西の松園、東の清方」と、京都の上村松園と並び、「美人画家」として称される鏑木清方伊東深水川瀬巴水の師匠でもある。「没後50年 鏑木清方展」東京国立近代美術館で開催されている。

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先日の山種美術館の上村松園の展覧会と同じように、「美しい日本美人に会いたい」という軽いノリで観に行ったのだが、いい意味で期待が外れた、期待以上の展覧会であった。

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一つは鏑木清方美人画家というだけでなく、人物像を通して明治以降の近代東京の庶民の生活を描いた風俗画家の側面も多く持っていたということだ。そしてもう一つは、その絵が細部まで描き込まれたものであったということである。

《築地明石町》は、鏑木清方の最も有名な美人画の一つだろう。44年間行方知れずだったが 2019年に再発見された。今回の展覧会でも目玉の一つであり、チラシなどでも前面に出ている。再発見の時に伴っていた 2作品《新富町》、《浜町河岸》と並び、清方 3部作として展示されており、なかなかの圧巻である。

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「没後50年 鏑木清方展」チラシ

シンプルで清廉な印象を受ける《築地明石町》は、近づいて単眼鏡で拡大して観ると、とても繊細にディテールが描き込まれていることに驚く。額の生え際の髪の毛。後れ毛。眉。睫毛。着物の紋様。身につけている指輪。そして遠くに薄く描かれた風景。細やかに描き込まれつつも、全体を通して清廉な印象を与える美人画を通して、当時の彼女たちの暮らしが伝わってくる。

この鏑木清方の魅力をより深く知るために、ミュージアムショップで『鏑木清方原寸美術館 100% KIYOKATA!』を購入した。《築地明石町》再発見を機に刊行された画集で、所蔵者や学芸員にのみ許されていた至近距離での観察を可能にしてくれる。今回の展覧会にも出展されている清方 3部作《築地明石町》《新富町》《浜町河岸》をはじめ、《明治風俗十二ヶ月》、《三遊亭円朝像》、《墨田河舟遊》、《弥生の節句》、《端午の節句》、《鰯》、《初冬の花》、《晩涼》、《目黒の栢莚》の一部が原寸大で、時には 200% まで拡大されたプリントを、じっくり観ることができる。展覧会で見るよりも、もっと近くで詳細を確認することができる。解説は清方 3部作の再発見に貢献した、東京国立近代美術館学芸員である鶴見香織氏による。

近くの毎日新聞社が入ったビルでランチをとった後、もう一度美術館に戻り、常設展を見学する。弟子の伊東深水によって描かれた鏑木清方の絵が展示されていた。

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伊東深水《清方先生寿像》1951年

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山口蓬春《残寒》1942年