Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

将棋の魅力を伝える本

梅田望夫さんの新著『シリコンバレーから将棋を観る -羽生善治と現代』を楽しみにしている。


シリコンバレーから将棋を観る -羽生善治と現代


誰でも、明日から「指さない将棋ファン」になれるのだ。

将棋から一度は遠く離れたけれど将棋の世界が気になっている人、将棋は弱くてもなぜか将棋が好きで仕方ない人、将棋を指したこともないのに棋士の魅力に惹かれて将棋になぜか注目してしまう人……。

そんな人たちに向け、素人でも感じ取れる将棋の魅力、そして棋士という素晴らしい人たちの魅力を描くことで、「将棋を観てみよう」と思う気持ちを一人でも多くの人が持つことになればいい……。それだけを願いながら、本書を書き始めることにする。

ブログで紹介されている「はじめに」の中の一節であるが、対象とする読者に今の我が家がぴったりとあてはまるのだ。

昔、弱いながらも休み時間のたびに友達と将棋をしていた父親。息子たちが将棋を指すようになって、その挑戦を受ける。その様子を見ていてどうやら将棋の世界は面白いらしいと気づいた母親。将棋の駒の動かし方も知らないらしいが、キャラの立った棋士が多いことでますます将棋の世界に興味を持ったようである。

特に先日の NHK BS で放送された「将棋界の一番長い日」の解説は、ツボにはまったらしい。渡辺明竜王山崎隆之七段のサービス精神旺盛なやりとりは漫才を見ているみたいで面白い。ところが山崎七段が退いて、宮田敦史五段が登場すると雰囲気はガラッと変わる。彼は解説はそっちのけで、盤面を見ながらじぃっと考え込んでしまい、ほとんど一言も発しない。手順を読むのに没頭するあまり、大盤にかぶさってしまい、渡辺竜王に注意されていた。

そしてつい数日前の「名人戦」。解説の木村一基八段の軽妙な語り口。A級最終順位戦を戦っている姿からは想像もできない、その話しっぷりに驚いていた。

そういう将棋世界の入り口に立った人には、『頭脳勝負―将棋の世界』がお薦めであろう。渡辺竜王自身が将棋の世界の魅力をあますことなく伝えている。渡辺竜王が最強コンピュータ将棋ソフト、ボナンザとの対戦を振り返った『ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか』、そして渡辺竜王の奥様のブログ「妻の小言。」も面白すぎて必読。


頭脳勝負―将棋の世界 (ちくま新書) ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)

現代将棋は羽生善治という稀有の知能抜きには考えられない。その思考法に迫った『羽生―「最善手」を見つけ出す思考法』認知科学人工知能の視点から考察を加えた『先を読む頭脳』、そして何よりも羽生善治名人自身が語る『決断力』。これらの本を読むと、人間の思考というものについて深く考えさせられる。


羽生―「最善手」を見つけ出す思考法 (知恵の森文庫) 先を読む頭脳 (新潮文庫) 決断力 (角川oneテーマ21)

こうして見ると、あまり多くはないが、ポツポツと将棋の本を読んできたのだな、と思う。本当に長い間、将棋とは遠ざかっていたし、いまだにヘボ将棋しか指せないが、将棋への興味は消えなかったということだろう。こういう僕のような、あるいは棋士のキャラクターを楽しむ家内のような「指さない将棋ファン」の素質を持った人は、少なからずいるに違いない。そう言う人に向けて梅田さんの新著は書かれたものだろうし、うちの場合、家族で楽しめそうだと期待している。