Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

Science

海と生物との関わりを学ぶ「特別展 海 ー 生命のみなもと ー」(国立科学博物館)

国立科学博物館で開催されている「特別展 海 ー 生命のみなもと ー」に行く。夏休みの間は激混みだろうと思い、9月末の週末まで待ったのだが…。開館直後の時間帯から、家族連れでなかなかの混雑ぶりであった。開催が 10月 9日までと迫ってきているからかもし…

大栗博司『重力とは何か』『強い力と弱い力』『超弦理論入門』:宇宙論・素粒子論・超弦理論への骨太な啓蒙書 3部作

理論物理学者の思考を知る橋本幸士先生の楽しいエッセイを読んだら、むくむくと素粒子論、宇宙論の本を読みたくなり、ミチオ・カク『神の方程式』を新たに読んだり、大栗博司先生や村山斉先生の一般向けの啓蒙書を本棚から引っ張り出して読み直している。以…

ミチオ・カク『神の方程式 「万物の理論」を求めて』:4つの力の統一理論をめざす科学者たちの挑戦

ミチオ・カク『神の方程式 「万物の理論」を求めて』は、究極の「万物理論」をめざす科学者たちの挑戦の物語である。一般相対性理論と量子論は統合できるのか?重力、電磁気力、強い核力、弱い核力を統一して記述できる方程式は見出せるのか?その方程式はビ…

橋本幸士『物理学者のすごい思考法』:最先端の理論物理学研究者の日常を知る

超ひも理論、素粒子論という最先端を研究する理論物理学者は、一体どういう思考をしているのか。どのような日常生活を送っているのか。そしてどういう少年時代を過ごしたのか。橋本幸士教授による『物理学者のすごい思考法』は、その一端をつまびらかにして…

『立花隆のすべて』『精神と物質』:25年の時を超えて

新旧『立花隆のすべて』 あれ?またもや同じ本が2冊? 右は 1996年に発刊された文藝春秋の臨時増刊号『立花隆のすべて』(単行本化・文庫化されている)。左は25年の時を経て、2021年8月に出た『立花隆のすべて』。今年 4月に 80歳で亡くなった立花隆を、さ…

風景写真を見て科学者は何を思うのか:「風景の科学展 芸術と科学の融合」(国立科学博物館)

絵の力に釘付けになった「ゴッホ展」を後にして、国立科学博物館に向かう。企画展の一つ、「風景の科学展 芸術と科学の融合」を観るためだ。グラフィック・デザイナーの佐藤卓が企画したユニークな写真展だ。www.kahaku.go.jp写真家・上田義彦が撮影した風景…

貴重な初版本を集めた[世界を変えた書物]展(上野の森美術館)から、東洋文庫ミュージアムへ

金沢工業大学の稀覯(きこう)書コレクションの中から、科学・数学の分野で新たな知の地平を切り拓いた初版本が展示されている[世界を変えた書物]展に行く(PDF チラシ)。会期終了直前ということもあり、会場である上野の森美術館の中は、かなりの人でご…

STAP 細胞:体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見

凄い発見である。理化学研究所のプレス・リリースが一番わかり易いかもしれない。海外の報道を中心に集めてみた。この研究結果が他の研究所でも再現されるのか、人間の細胞にも適用できるか。これからいろんなところでレビューされるのだろう。 理化学研究所…

立花隆『がん 生と死の謎に挑む』

日本人の半分ががんになり、三分の一はがんで死ぬ時代。立花隆自身ががんになり、同時期に長年の友人をがんで亡くした。それをきっかけに「そもそもがんとは何なのか。」「がん医療はどこまで進んだのか。」といった基本的な疑問に答えるべく、多数のがんの…

現代の叡智へのインタビュー『知の逆転』

いやぁ、凄いメンツにインタビューしたものだ。『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊』のジャレド・ダイアモンド, 生成文法のノーム・チョムスキー, 『レナードの朝』のオリバー・サックス, 人工知能の大家、『心の社会』のマービン・ミンスキー, インターネットを…

ヒッグス粒子を「発見」する CERN の加速器 LHC

2012年7月4日、新しい素粒子がほぼ発見されたと CERN(欧州原子核研究機構) から発表があった。素粒子に質量を与えるヒッグス粒子の発見だが、もう少しデータの解析に時間がかかるらしい。それにしても何をもって新しい素粒子を「発見」したと言えるのだろ…

佐藤勝彦『相対性理論から100年でわかったこと』は、一人の宇宙物理学者の思いを率直に語っている

インフレーション宇宙を提唱した宇宙物理学の重鎮による、非常にわかりやすい現代物理学へのガイドブック。これから物理学を勉強する人に向けて現代物理学をコンパクトに概観する。つまり、相対論・量子論をベースに、最新の素粒子論・宇宙論を案内する。理…

素粒子=「場」を理解すべく、『光の場、電子の海 --- 量子場理論への道』を再読

ヒッグス粒子の発見が確実視されつつある中、現代物理学では「素粒子は(空間を飛びまわる)粒子ではない」と考えられている。粒子ではなくて、何なのか?「場である。」現実世界にマップしないと考えられない僕の頭ではなかなか理解できない考え方である。…

新書で読む宇宙論

ブライアン・グリーン、ミチオ・カクなど海外の科学啓蒙書は、ストリング理論、多元宇宙論などをそれぞれ詳しく解説する。一方、日本の啓蒙書は、村山斉先生の『宇宙は何でできているのか』など、新書で最新宇宙論を概観する。新書なので通勤電車の中で気軽…

南極観測を知る

映画「南極料理人」を DVD で観て以来、わが家では南極がちょっとしたブームである。「南極料理人」は極寒のドームふじ基地で越冬する南極観測隊を、食事をメインの題材にして、淡々とユーモラスに描いている。極地、しかも一日中太陽が顔を出さない極夜の季…

「はやぶさ」プロジェクトリーダ、川口淳一郎教授の講演を聴く

小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトリーダ、JAXA の川口淳一郎教授の講演を聴く機会があった。サンプルリターンの科学的・技術的意義に始まり、「はやぶさ」プロジェクトの計画から運用における随所での臨機応変の対応が紹介された。小惑星サンプルリタ…

「はやぶさ」本の決定版:川口淳一郎『小惑星探査機はやぶさ --- 「玉手箱」は開かれた』

小惑星探査機「はやぶさ」に関する良書はたくさん出ているし、プロジェクトリーダである川口淳一郎教授の手による『はやぶさ、そうまでして君は』を涙なしに読むことはできない。この本と同時期に川口教授が書かれた『小惑星探査機はやぶさ --- 「玉手箱」は…

小惑星探査機「はやぶさ」を知る DVD

小惑星探査機「はやぶさ」を知るためにさまざまな本が出版されて、中でもプロジェクトリーダである川口淳一郎先生の本は涙なしには読むことができない。最近は「はやぶさ」に関する DVD もいくつか出て、視覚的に「はやぶさ」を知ることができる。 小惑星探…

涙なしに読むことができない『はやぶさ、そうまでして君は --- 生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話』

瀕死の床から奇跡的に呼び戻すことに成功した小惑星探査機「はやぶさ」。何度とない試練を絶対にあきらめなかったプロジェクトリーダである川口淳一郎先生だからこそ、知り得ない事実があり、語れることがある。語る言葉がある。はやぶさ、そうまでして君は…

『宇宙は何でできているのか』『宇宙に果てはあるか』『光の場、電子の海』

東大の数物連携宇宙研究機構(IPMU)の村山機構長による『宇宙は何でできているのか』は、現代物理学の素晴らしい入門書である。これほどコンパクトでスピーディに現代物理学を語った講義があっただろうか?「素粒子物理学で解く宇宙の謎」という副題にある…

小惑星探査機「はやぶさ」を知る

小惑星探査機「はやぶさ」(Wikipedia)が帰還、大気圏に再突入した6月13日から4ヶ月。コンテナから回収された試料から多数の微粒子が見つかったそうだ。イオンエンジンやリアクションホイールの故障、通信断絶、満身創痍になりながらも数々の工夫を凝らして…

『はやぶさ --- 不死身の探査機と宇宙研の物語』

数々の苦難を乗り越え、2010年6月13日に小惑星探査機「はやぶさ」は地球に帰還した。大気圏再突入の様子を今か今かと Ustream で待ち、数分の遅れはあったものの、オーストラリアのウーメラ砂漠上空で閃光のように光る映像を確認した夜。あの興奮は今もまだ…

「ブラック・スワン」が現れる「果ての国」を扱うフラクタル理論

『ブラック・スワン』(上、下)は、リスクを取り扱った本である。正規分布に従う国を「月並みの国」、ベキ乗分布に従う国を「果ての国」と呼び、後者では「ブラック・スワン」が現れる可能性がある。富の分配は「果ての国」の話である。ロング・テールもそ…

「オステリア・モンテマーレ・トットリーネ」にて、脳のモデル化の話を聞く

「オステリア・モンテマーレ・トットリーネ」(Osteria Monte-Mare Tottorine)は、その名の示すとおり、鳥取の新鮮な食材をカジュアルなイタリアンで楽しむ店。鳥取県のアンテナショップの階上にある。美味しい店をたくさん知っている友人の太鼓判通り。日…

タクシー王子、超凡思考、海堂尊、法律力、科学入門、無邪気な脳

ここ数週間は、わりと軽めの本を何冊かまとめて読んでいる。川鍋一朗『タクシー王子、東京を往く。―日本交通・三代目若社長「新人ドライバー日誌」』小学生の次男も含め、家族全員が読んだ初めてのビジネス書(ビジネス書以外であれば『ハリー・ポッター』シ…

進化論を学ぶ --- 『図説 種の起源』、『「進化」大全』、『マンガ「種の起源」』、ドーキンス『利己的な遺伝子』、グールド『ワンダルフ・ライフ』、『ドーキンス vs. グールド』、『進化と人間行動』

ダーウィン生誕200年(実はリンカーン生誕200年でもある)であった昨日の進化論に関するエントリの続き。進化論をその成り立ち・歴史から包括的に紹介した本としては、『新版・図説 種の起源』や『「進化」大全』、『マンガ「種の起源」』 がおすすめである…

ダーウィン生誕200周年、『種の起源』刊行150周年 (The Economist, February 7th 2009)

今日2009年2月12日はダーウィン(Charles Darwin)生誕200年にあたり、また今年2009年は『種の起源』("On the Origin of Species"、岩波文庫〈上〉・〈下〉)が発刊されて150年ということで、The Economist 誌が進化論を紹介している("Unfinished business…

進化医学の入門書『進化から見た病気』

進化医学、あるいはダーウィン医学を提唱したネシーとウィリアムズによる『病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解』を一度読んでみたいと思っていたのだが、高価でもあり、また店頭で中身を確認する機会がほとんどないことから、そのままになってい…

Caltech 下條信輔教授による講演『選好、選択の行動とその神経基盤』を聴く

神経科学の最前線で活躍しておられる カリフォルニア工科大学(Caltech)の下條信輔教授(Caltech 研究室、下條潜在脳機能プロジェクト)による『選好、選択の行動とその神経基盤−神経経済学と意思決定の認知神経科学−』という講演を聴く機会があった。神経…

『クォーク 第2版』、『こんなにわかってきた素粒子の世界』

今年のノーベル賞は日本人(日系人)が物理学賞、化学賞を受賞した。受賞者の一人、南部陽一郎さんが書いた『クォーク 第2版―素粒子物理はどこまで進んできたか』は、僕の学生時代に初版が出て話題になったブルーバックスである。僕を含め、当時の理系の学…