Muranaga's View

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『謎解き 鳥獣戯画』を読んで、「特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて」に行った気になる

緊急事態宣言によりトーハクも臨時休館となり、「特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて」に行くこともかなわなくなった。

chojugiga2020.exhibit.jp

謎解き 鳥獣戯画 (とんぼの本)

謎解き 鳥獣戯画 (とんぼの本)

  • 発売日: 2021/03/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

代わりに、と言っては何だが、この特別展を企画したトーハクの学芸員、土屋貴裕氏による詳しい解説が掲載された『謎解き 鳥獣戯画』を読んで、展覧会に行った気になることにした。甲乙丙丁全四巻、全場面が掲載された折り込みページが付いている。展覧会の公式図録はオンライン販売されているものの、今日時点では品切れ中であった。

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鳥獣戯画」の文化財としての指定名称は「紙本墨画鳥獣人物戯画」、鳥獣だけでなく人物を中心に描いた巻もある。甲乙丙丁4巻を合わせた全長は 44m 50.8cm。800年に及び伝来の中で失われた部分(「断簡」)もあり、当初はもっと長かった。甲・乙巻は平安時代末期、丙巻が鎌倉時代初期、丁巻はそれよりやや後に描かれたとされている。色がなく、詞書(ことばがき)がない。このため作品のテーマや意図がはっきりとはしていない。京都の高山寺(こうさんじ)に伝来している。

この本では各巻について、絵師が何人か、どういう絵師だったと考えられるか、断簡や模本の存在、紙の表裏に描かれていたのを「相剥ぎ」(あいへぎ)によって薄く2枚に分けて前後につなぎ合わせたことなど、専門的な解説がなされている。

それと同時に、甲巻の前半・後半での絵師二人の違いなど、鑑賞のポイントやみどころが紹介されている。実際の展覧会では、動く歩道で甲巻を鑑賞するようになっている。行ってみたかったなぁ。

書を原点とした墨の抽象画「篠田桃紅展」(そごう美術館)

2021年3月、107歳で亡くなった現代美術家篠田桃紅の個展が、そごう美術館で開催されている。もともとは書家であったが、文字を解体し、墨による抽象画を描いた。43歳で渡米。日本人は文字の形と意味をつい探してしまうが、文字の意味のわからない海外に拠点を移すことにより、墨そのものの美しさを見て欲しいという考えによるものだった。書から墨による抽象画へと発展したアメリカでの活躍であったが、乾燥したアメリカの気候では、墨は滲まずにかすれてしまう。再び日本に戻り、墨の可能性を追求していくことになる。

その作品を前に、筆の動きを想像する。一気呵成に運ばれたと思われる筆の動きに、ある種の潔さを感じて、気持ちがいい。

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www.sogo-seibu.jp

artexhibition.jp

川瀬巴水の抒情的な風景版画を満喫する(平塚市美術館)

吉田博や川瀬巴水の風景版画が好きである。2021年は吉田博の展覧会だけでなく、「昭和の広重」と称された川瀬巴水の展覧会も開催される。しかも2回にわたって。まずは今回訪れた平塚市美術館での「川瀬巴水展」。これはもともと去年行われるはずだった展覧会が、コロナ禍により今年に延期されたものである。そして10月には SOMPO美術館でも、川瀬巴水の回顧展が予定されている。

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川瀬巴水展(平塚市美術館)

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www.city.hiratsuka.kanagawa.jp www.sompo-museum.org muranaga.hatenablog.com muranaga.hatenablog.com

川瀬巴水伊東深水とともに、渡邊庄三郎による「新版画運動」の担い手となった絵師であり、その詩情溢れる風景画は版画とは思えぬほどの写実性が追求されている。何度も摺りを重ねることにより、複雑な色合いを作り出す。そして風景の中にアクセントとなる人物を配することで、旅情を感じさせる絵となっている。「昭和の広重」と言われたのも、むべなるかな。

巴水自身は、小林清親の「光線画」の影響を受けたと述べているように、夜景に浮かび上がる光、それに照らされる水面などが見事に表現されている。そして雪景色も美しい。光と影の対比が、木版画と言う手法によって、味わい深いものとなっていると感じる。

連休初日、開館直後の平塚市美術館は空いていて、好きな絵の前を何度も行ったり来たりして、繰り返し見ることができた。写真撮影が許された絵がいくつかある。

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旅みやげ第二集《金沢下本多町》(1921年

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東京二十景《芝増上寺》(1925年)

《芝増上寺》は川瀬巴水の中でも最も人気のある版画の一つであり、最高の 3,000枚が売れたと言う。

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東海道風景選集《馬入川》(1931年)

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東海道風景選集《馬入川》(1931年)

歌川広重を慕う作風が強く出ているという批判を払拭するために、東海道風景選集は手がけられたそうで、巴水は宿場町とは異なる場所を選んでいる。《馬入川》の変わり摺りが展示されていた。

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《鶴が岡八幡宮》(1931年)

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増上寺の雪》(1953年)

文部省文化財保護委員会から木版画技術記録事業の対象に選ばれた川瀬巴水は、馴染み深い増上寺の雪景色を題材にした。42回もの摺りを重ねている。制作は渡邊、彫師は佐藤寿録吉、摺師は斧銀太郎。版元のもとで、絵師・彫師・摺師が協力して作り上げる伝統的な木版画の制作過程が記録され、そのすべての資料が東京国立博物館に保管されている。

芝公園にオフィスがある僕にとっても、増上寺の三門(三解脱門)は馴染み深い場所であり、川瀬巴水の描く雪景色には、時代が異なるもののどこか懐かしさを覚えてしまう。

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今回の展覧会では、本や雑誌、カレンダーや絵はがきといった、巴水のさまざまな仕事が紹介されている。絵はがきやカレンダーは、今でも十分ニーズがあると思う。

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川瀬巴水展」図録

平塚市美術館をあとにして、先週見つけたばかりの「隠れランチスポット」に車を走らせる。藤沢ジャンボゴルフという練習場にあるニューオータニのレストランである。ゴルフクラブを持たずに練習場に来るのは、初めての経験かもしれない。ホテルのような雰囲気のクラブハウスにあるレストランでランチ。そして購入してきたばかりの図録をゆっくり楽しんだ。

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muranaga-golf.hatenablog.com

川瀬巴水の作品集は何冊か出版されている。いずれも渡邊庄三郎と歩んだ新版画を中心に、巴水の生涯の仕事を辿ることができる。

川瀬巴水木版画集(新装版)

川瀬巴水木版画集(新装版)

  • 作者:川瀬巴水
  • 発売日: 2017/03/01
  • メディア: 大型本
川瀬巴水作品集 増補改訂版

川瀬巴水作品集 増補改訂版

里山ガーデンフェスタで春の花を楽しむ

里山ガーデンに出かけるのは4年ぶり。春の「里山ガーデンフェスタ」が開催されている。「ガーデンネックレス横浜」の会場でもある。

雨が本格的に降る前に、と思って、朝一番に出かけたのだが、幸い小雨程度で済み、また人影もまばらでラッキーだった。大花壇に植えられている色とりどりの春の花(PDF)を満喫した。

www.satoyama-garden.jp

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ひとめで心を奪われてしまった「渡辺省亭 - 欧米を魅了した花鳥画 -」展(東京藝術大学大学美術館)

かねてより名前は知っていたものの、実物を見る機会がほとんどなかった日本画家・渡辺省亭(1851 - 1918年)。その初めての回顧展「渡辺省亭 - 欧米を魅了した花鳥画 -」が、東京藝術大学大学美術館で開催されており、いそいそと出かけた。そしてその花鳥画をひとめ見て、一瞬で心を奪われてしまった。

seitei2021.jp

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「渡辺省亭 - 欧米を魅了した花鳥画 -」展(東京藝術大学大学美術館)

渡辺省亭は明治から大正時代にかけて活躍した日本画家であり、生涯を浅草周辺で暮らしたが、日本画家として初めてパリに渡航し、印象派の画家たちと交遊した経験を持つ。ロンドンのギャラリーで個展が開催されるなど、グローバルに活躍し、欧米での評価が高い。

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《牡丹に蝶の図》1893年

まず観る者の目を引くのは、描かれている動植物の迫真的な写実表現である。パリに遊学した際に印象派の画家たちを驚かせたと言うその筆致(ドガに直接渡した鳥の絵が展示されている)は、単に上手いというだけでなく、瀟洒な印象を与える。流麗な筆使いと明暗のはっきりしたコントラスト。シンプルな背景の中に、主題がエレガントに浮き立つ。鳥や動物には表情があり、絵からはストーリーを感じる。

「その手に描けぬものはなし」と称された河鍋暁斎も凄いが、ちょっとあざとさを感じるところがある。渡辺省亭の場合、そういった押しつけがましさがなく、その柔らかな絵は観る者を和ませる。床の間を飾り、四季を感じさせる掛け軸は、引きも切らない人気があったと言う。

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《百舌鳥に蜘蛛図》 《金魚図》

日本画の伝統と洋風とを融合させた、これほどの画家が、なぜ日本では忘れ去られてしまったのだろうか?生前はのちに巨匠と呼ばれる画家たちと変わらない人気を誇ったが、後年は美術団体に属さず、展覧会にも出品せずに、画壇との距離を置いたとのことだ。弟子はとらず、ひとり注文に応じて制作を続けた。

焼成前に金属を取り除いてぼかしを表現する濤川惣助の無線七宝は、数々の万国博覧会に出品され海外でも高く評価された。その原画を提供したのが渡辺省亭であることが知られるようになったのは、最近のことだと言う。明治42年(1909年)に完成した東宮御所、現在の迎賓館赤坂離宮には、渡辺省亭原画、濤川惣助による七宝の額が飾られている。

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《懸巣に蔦》 《山翡翠翡翠に柳》

《懸巣に蔦》 《山翡翠翡翠に柳》がその原画である。カケスは振り返ってこちらを見ているようだ。飛ぶ宝石とも言われたカワセミ、そして手前にはヤマセミが描かれている。枝垂れた柳との対比が美しい。

この展覧会の公式ガイドブックは市販されている。このブログの絵は、ガイドブックから転載している。

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公式ガイドブック『渡辺省亭 - 欧米を魅了した花鳥画 -』

ガイドブックには、「原寸で見る省亭の世界」というページがあり、その魅力を伝えている。

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《牡丹に蝶の図》1893年

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迎賓館赤坂離宮 七宝額原画》

会場には大型の『渡辺省亭画集』(65,000円)も置かれていた。Amazon では売り切れている。

渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-

渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-

  • 発売日: 2021/03/25
  • メディア: 大型本
渡辺省亭画集

渡辺省亭画集

  • 発売日: 2021/03/15
  • メディア: 大型本

美術館の外に出ると、上野公園の新緑が美しい。この回顧展はおそらく僕の記憶にずっと残るであろう。心が洗われた時間であった。

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痛風の発作から1週間、尿酸値を抑える薬を飲み始めた

人生初の痛風の発作から1週間、尿酸値を抑える薬を飲み始めた。尿酸の生成を抑制するウリアデックという薬である。一般名、トピロキソスタット

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発症してすぐに医者に行き、痛み止めの薬を処方してもらった。幸い、痛みは 2日ほど、腫れも 3日ほどで収まり、「風が吹いても痛い」というほどの重症ではなかったようだ。1週間ほど様子を見て、症状も収まったようなので、ウリアデックを処方されて飲み始めた。

痛風の症状が出た時の尿酸値は 8.3 mg/dl。今後、尿酸値が下がっているか経過を見て、下がらないようだったら量を増やしていくとのこと。

コレステロールを抑える薬と一緒に、毎朝1錠づつ飲んでいく。「薬漬け」の日常が始まるということだ。やれやれ。

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新型レヴォーグ STI Sport の代車はレヴォーグ GT

新型レヴォーグのリコールおよび改善対策で、2週続けて代車に乗ることになった。先週はインプレッサ STI Sport。今週は新型レヴォーグ GT(正確には先進のアイサイトが搭載された GT EX)。ディーラーも対応が大変だろう、何とレンタカーの代車であった。

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真っ黒で精悍な印象のレヴォーグ。こんな車に後ろにつかれたら、すぐに道を譲ってしまいそうだ。

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レヴォーグ GT EX

GT というベーシックグレードだが、乗り心地や加速感など、僕には十分過ぎるほど。ブラックで精悍なエクステリアとは裏腹に、しなやかな乗り心地を実現している。初代レヴォーグのようなロードノイズを拾うざらつき感はなく静かだし、道路の凹凸もうまくいなす。そして先週乗ったインプレッサ STI Sport よりもパワーに余裕がある。インプレッサはきびきびとスポーティ、新型レヴォーグはしなやかな上質感。訴求している方向性が違うのかもしれない。

さて、代車の GT を返して、愛車の STI Sport の Comfort モードの走りと比較してみると、僕が感じることのできる違いはわずかである。GT は 17インチ、STI Sport は 18インチとタイヤが違う。その中にあって STI Sport の静粛性が優っている気がするが、もしかしたらひいき目による気のせいかもしれない。STI Sport の電子制御可変ダンパーを使った凹凸のいなしは、さすがに GT よりいい印象である。

ちょっと意外だったのは、GT の方がステアリングに遊びがあることだ。STI Sport の Comfort モードと比べても余裕がある。ステアリングの反応がいいという意味では STI Sport だが、GT の方が心持ちゆったり運転できる。

STI Sport の最大の特徴はモード変更による「キャラ変」である。Sport+ モードにした時のスポーティー性は、GT の Sport モードよりも遥かに上である。ダイレクトなハンドリング、硬いサスペンション、そしてパワーのある加速感。スポーツカーのような走りのワゴンになる。こういったスポーティーな走りや内装の上質感を求めないのであれば、ベーシックグレードの GT / GT EX でも十分だと思う。

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今回は、運転支援システムであるブレーキが過敏に反応する改善対策として、制御プログラムを書き換えた。ディーラーで数時間かかる対応であったが、テスラだったら無線で書き換えてしまうのかもしれない。この手の制御プログラムのデバッグ・調整は、かなり難しいと思う。かといって安全に関わるものだから、メーカーにはしっかりとした品質保証が求められる。

2週続けての代車は煩わしいものだったが、違うスバル車に試乗できる機会だったと前向きにとらえよう。こんな機会はあって欲しくはないが、一度 e-BOXER の車に乗ってみたいものである。

今回の代車はレンタカーだったが、レヴォーグを借りて初めて乗る人は、アイサイトやセンターインフォメーションの操作など、使いこなすのは大変だろうなと想像する。