クラウド・コンピューティングの技術に関するよい本が2冊出ている。
『クラウド大全 サービス詳細から基盤技術まで』はクラウドの現状を知るのによい入門書である。Amazon Web Services、Google AppEngine、Force.com、Windows Azure という四大パブリック・クラウドを概説するとともに、クラウドの基盤である分散処理技術を解説しており、分散処理モデルの一つである MapReduce とそのオープンソース実装である Hadoop を紹介している。
そして "Cloud Application Architectures" は、さらにその一歩先を行く。今、IT マネジャーや技術者にとって、「クラウド環境に移行するべきかどうか」「移行するとしたら、どういう風に AWS(Amazon Web Services)を使うべきか」が最大の関心事であろう。この問いに答えるには、自らが AWS のクラウド環境を使って調査するしかないわけだが、この本には、初期の頃から AWS と格闘してきたパイオニアによる知見がまとめられている。
まだ最初の数章を読み始めたところで、全体をざっと眺めてみただけだが、出版元の O'Reilly のサイトで紹介されているように、技術者あるいはそのマネジャーに向けて、現在自分たちが抱えているトランザクション型の Web アプリケーションを、「クラウド環境に持っていくべきなのか」「具体的にはどのように移行を実現すべきなのか」、クラウドに対応した Web アプリケーションの作り方について、コスト・可用性・性能・スケーラビリティ・プライバシー・セキュリティの観点から、検討を加えたガイドブックとなっている。
初版本は印刷ミスがあったとのことで、図が2枚抜け落ちているが、O'Reilly のサイトに掲載されている。ただこのサイトに掲載された Figure 1-2 も間違いで、実際には Figure 4-1 と同等の図が入るのではないかと思う。
このようなミスはあるものの、AWS の先駆者の知見をタイムリーにまとめた本として有用である。また AWS 以外のクラウド・コンピューティングへの解、たとえば GoGrid のようなデータセンターのマネージド・サービスに、クラウドの味付けを加えたアプローチについても触れられている。
追記:2009.5.21
O'Reilly のサイトに掲載されている図も、正しいものに入れ換えられた。