Muranaga's View

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数々の画家の作品が並ぶ「近代の日本画展」(五島美術館)

横浜の自宅から第三京浜で 20分。五島美術館の「近代の日本画展」を見る。

Web サイト・チラシから概要を引用する:

館蔵の近代日本画コレクションから、「花鳥画」を中心に、橋本雅邦、川端玉章横山大観川合玉堂安田靫彦前田青邨川端龍子、金島桂華など、明治から昭和にかけての近代日本を代表する画家の作品約40点を選び展観します。大東急記念文庫創立75周年記念特集展示として、日本の古代から中世の歴史資料も同時公開(会期中一部展示替あり)。

東京美術学校日本美術院、京都画壇など、近代の日本画家たちの作品を一堂に比較しながら見ることができる。流派によって様式が定まっていた中、西洋絵画の影響を受け、より写実的に、より奥行きを表現するように発展していった近代日本画

大きくは保守的な旧派(日本美術協会系)、革新をめざした新派(東京美術学校を追われ、日本美術院を設立した岡倉天心たちの一派)に分かれ、また写生を重視した京都画壇がいる。そして中には浮世絵や西洋画を学びつつ、独自の境地を切り開いていった画家(たとえば渡辺省亭、河鍋暁斎など)もいる。そのスタイルの違いや、画家による個性の違いを見出していくのが楽しい。

近代日本画を見るにあたって、このブログでも何度か参照しているが、古田亮『日本画とは何だったのか』が、僕にとってはよいガイドブックになっている。数多いる画家たちを、日本画の様式の歴史の中で位置づけながら見ることができる。

たとえば橋本雅邦と川端玉章が一緒に飲みに行く仲間であり、新派の橋本雅邦が教えたのが横山大観菱田春草である。川端玉章は、新派と旧派の中間のような作品を描く。京都画壇は写生を基礎としていたので、特に花鳥画・動物画において西洋の写実性との相性がよい。

今回の展覧会では、前回、京橋の画廊でみた渡辺省亭の作品も展示されていた。中でも特に個人的に目を引いたのは、大橋翆石《猛獅虎の図》である。ふさふさとした毛並みを感じさせる写実性の高い表現に驚いた。

実は 1900年のパリ万博において、多数出展された日本画の中で、唯一評価され金賞を受賞したのが、大橋翆石である。その写実表現が世界基準にあったということになる。この写実的な動物画の流れは、後に竹内栖鳳木島櫻谷らの京都系動物画へ展開されていく。

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大東急記念文庫創立75周年記念特集展示 第1部「古文書・古記録」も行われている。この中に『中右記』を見つけ、これは大河ドラマ「光る君へ」の藤原実資の日記では?と思ったが、早とちり。実資の日記は『小右記』であった。『中右記』は藤原宗忠の日記。

五島美術館の庭園を散策することができる。多摩川河岸段丘が形成する急傾斜の庭園である。