Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

日本人による日本人のための展示会 CEATEC

日本最大のIT・エレクトロニクス展 CEATEC 2010 が盛況のうちに閉会した。

テレビについては 3D というだけでは差異化にならず、東芝はグラスレス 3D、ソニーは超大画面で 3D の上流から下流までのサポート、パナソニックはエコ家電を訴求した。特に東芝のグラスレス 3D は大人気で長蛇の列。多くの人に先進性をアピールしたものと思う。

今年大きく目立ったのは Androidスマートフォンタブレット端末。ドコモからはサムソン製の Galaxy SGalaxy Tabau からはシャープ製の IS03。そしてシャープはガラパゴス(GALAPAGOS)。いずれも自由に触れて、大人気であった。Galaxy は動作がきびきびしている。Galaxy TabiPad に比べて外に持ち出し易い大きさである。そして iPhone / iPad と違い、Flash がフルサポートされている。Galaxy S / Tab がグローバル仕様なのに対して、IS03 は国内仕様。おサイフケータイワンセグをサポートしている。Android をきめ細かくローカライズした印象を受ける。

これだけ Android が増えてくると、どれも似たような端末に見えてくる。iTunes / AppStore のようなサービス面での差異化・囲い込みがますます重要になってくる。その意味で、シャープのガラパゴス(GALAPAGOS)は、従来のハードウェアビジネスではなく、サービスでビジネスを作る路線をめざしている。電子書籍のみならず TSUTAYA の動画など、さまざまなコンテンツの端末となるようだ。ただし、ガラパゴスという名の示す通り、最初からグローバルを志向するのではなく、日本国内という「ニッチ」市場をまず獲得する戦略と考えられる。

テレビのインターネット化では、パナソニックがオークションなど新サービスを打ち出していた。一方、東芝は「レグザ Apps コネクト」という、iPhone / iPad のような端末と連携して、新しいテレビの楽しみ方を提案。テレビを見ながら iPadツイッターを同時に眺めるという視聴スタイルがわが家では定着しつつあるが、このようにテレビとタブレットを連携させることは、今後より一般的になっていく気がしている。ソーシャルメディアも加味しており、その第一歩となる提案であったと思う。

一方、インターネット・テレビの台風の目と見られている Google TV について、ソニーからの展示はなかった。またソニーのネット戦略である Qriocity についても展示はなかった。9月初旬にベルリンで開かれた家電見本市 IFA では、かなりインターネット戦略を訴求していたのだが…。

そう思って改めて CEATEC の会場を見まわすと、海外からの出展がほとんどないことに気づく。IFA では Samsung(サムソン)、LG といった韓国勢が、CEATEC の数倍はあろうかという会場スペースをふんだんに使って、3D やインターネットテレビタブレットなどを大々的に訴求していたのに対し、CEATEC ではドコモのブースでサムソンの Galaxy が展示されているのみ。ソニーも IFA と CEATEC とで展示戦略を大きく変えている。つまり、グローバルに展開している企業は、CEATEC を別物と見ているということだ。逆にシャープは、IFA よりも CEATEC に力を入れ、新しいタブレット端末を大量に導入してきた。こちらはニッチかもしれないが日本市場を着実に獲るという考え方なのであろう。

グローバルに展開する企業から見ると、日本市場は成長性が低く、また日本人好みの先進性があってきめ細かなニーズに対応する必要がある点で、魅力が薄くなってきているのだろう。そして CEATEC は今、日本人による日本人のための展示会になっているのであった。グローバル展開を志向する日本企業は今後、国内市場をどうとらえ、どう取り組んでいくのか。考えさせられる機会となった。