Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

上手すぎる!幕末から明治の奇想絵師「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展(サントリー美術館)

2月22日、「奇想の系譜展」(東京都美術館)に続いて、「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展(サントリー美術館)を観た。前日の葛飾北斎に始まって、江戸時代、そして明治にかけての超個性的な絵師の作品ばかりを見て、結構「お腹いっぱい」になったというのが正直なところだ。その後、3月10日にサントリー美術館を再訪して、河鍋暁斎の前後期両方の展示を制覇した。河鍋暁斎も「奇想の絵師」の一人に数えられてよい存在だと思う。

その絵の印象は一言「上手すぎる!」幕末から明治にかけて、御用絵師であった狩野派がいなくなっていく中、その画力で存在感を示し、人気を博したのが河鍋暁斎である。超絶技巧の緻密な絵を描くと思えば、大胆な筆使いを示したり、時にはユーモアたっぷりの戯画や風刺画を描いたりする。歌川国芳に入門した後、駿河狩野家に学んだ暁斎は、狩野派と浮世絵という日本美術の伝統的な表現の駆使して、強烈な個性のある画風を確立した。外国人との交流も多く、鹿鳴館ニコライ堂を設計した建築家ジョサイア・コンドルを弟子にして、その技法を伝えた。コンドルはその著『河鍋暁斎』を出版、早くから欧州で知られる絵師となった。

その後、さまざまな事情で日本美術史では埋もれてしまったが(たとえばフェロノサや岡倉天心が、崇高さに欠ける暁斎のような在野の画家を評価しなかったなど)、暁斎の曾孫である河鍋楠美氏の尽力もあり、暁斎もまた見直されるようになったようだ。2015年7月の「芸術新潮河鍋暁斎特集号にて、安村敏信氏が「全貌を掴ませない絵師は、いかにして葬られ、復活を遂げたか」という文章でその再評価の歴史を振り返っている。この時は、三菱一号館美術館で開催された「画鬼・暁斎 - KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」展に合わせて、特集が組まれたのであった。

f:id:muranaga:20190223132025j:plain

f:id:muranaga:20190223134235j:plain

暁斎の作品を観ていると、僕の好きな現代の大和絵師・山口晃が、河鍋暁斎に相当インスパイアされていることが感じられた。そういえば、山口晃はその著書『ヘンな日本美術史』でも暁斎を取り上げているし、2015年の「芸術新潮」の河鍋暁斎特集でも、幕末から明治にかけて洋画が台頭する中、一人でオールジャパン、日本美術を代表するような存在感を示した河鍋暁斎の魅力を語っている。

三菱一号館美術館を設計したジョサイア・コンドルが、日本画で師事したのが河鍋暁斎。そのバリエーション豊かな技法、森羅万象をテーマとした幕末・明治の絵師について、平成の大和絵師・山口晃が語る。2015年7月、三菱一号館美術館で開催された河鍋暁斎展。改めてその凄さを感じた。

別冊太陽 河鍋暁斎

別冊太陽 河鍋暁斎

河鍋暁斎 (岩波文庫)

河鍋暁斎 (岩波文庫)

画家の目から見た日本美術。少し専門的で難しい。鳥獣戯画雪舟。そして、なぜか日本美術史の真ん中から忘れ去られてしまった河鍋暁斎をきちんととりあげ論評している。

2015年7月に、三菱一号館美術館にて、河鍋暁斎展を見て、その技法・扱うテーマの豊かさに驚かされた。「芸術新潮 2015年7月号」の特集から、もう一度この本の河鍋暁斎の章を読み直してみた。

2019年2月、辻惟雄『奇想の系譜』『日本美術の歴史』を読み直し、改めてこの『ヘンな日本美術史』を読むと、画家ならではの、作品を生み出す側からの視点と思考が興味深い。

muranaga.hatenablog.com

muranaga.hatenablog.com

環八内回りのロードサイドには、意外とガソリンスタンドが見つからなかった

関越練馬インターを降りてまもなく、「ポーン」という音とともに、ガソリンが残り僅かというオレンジの表示が点灯した。どうやら残り 9リットルを切ると点灯するらしい。横浜の自宅までは 40km 弱、レヴォーグの平均燃費 10-12km/l だと 100km は走れる勘定だから、このまま突っ走ってもよかったのだが、ガス欠のランプを気にしながら走るのも精神的によろしくないので、途中でガソリンを入れることにした。

ところが環八に入って世田谷方面に向かうロードサイドに、なかなかガソリンスタンドが見つからない。反対方向にはいくつかあるのだが、ENEOS の看板になかなか遭遇しない。

結局、京王線八幡山駅付近のガードをくぐったところまで来て、ようやく ENEOS があり、給油した。7-8台が並列に斜めに止めて給油できる。セルフ専用 24時間営業。

普段、新横浜駅近くの ENEOS で給油しているので、いつもと違うガソリンスタンドは、ちょっと新鮮な感覚だった。

前後を撮影するドライブレコーダーを装着した

昨今流行りのドライブレコーダーを、愛車レヴォーグに装着した。前後を撮影できること、既存のリアビューカメラの映像を記録できること、EyeSight と干渉しないことなどを考え、スバル純正のドライブレコーダーを選んだ。実際のメーカーは、デンソーテン。

ドライブレコーダーの写真を撮ったつもりだが、フロントガラスに付着した花粉も写っている:

f:id:muranaga:20190224155416j:plain

車内にいる時は、WiFi 接続のスマートフォンのアプリで、映像を確認することができる。GPS 情報も記録されているので、Google マップと連動する。速度や G値も表示されて、なかなか興味深い。

DR Viewer S

DR Viewer S

  • DENSO TEN Limited
  • 写真/ビデオ
  • 無料

記録媒体である microSD カードを PC に差し込むと、専用のビューアソフトを使って、映像の再生・切り出し・バックアップができる(ダウンロードサイト)。microSD の容量がいっぱいになると、古いデータの上に、新しい映像を上書きするので、必要に応じてバックアップすることが推奨されている。Google Earth 形式でデータを保存することも可能。

ビューアソフトによるフロント、リアそれぞれの映像は以下の通り(リア映像は鏡像になっている)。ドライブレコーダー初期化直後の時刻設定のためか、2015年1月1日のデータになっていたが、再起動すると今日の日付に再設定され、一安心。

f:id:muranaga:20190224172900p:plain

f:id:muranaga:20190224172917p:plain

「いざという時のために」と思って装着したドライブレコーダーだが、こんな映像が記録されることを考えると、「あまり雑な運転はできないな」と思う。しばらくの間は、自分の運転自体も締まったものになるかもしれない。

muranaga.hatenablog.com

muranaga.hatenablog.com

念願の「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」(東京都美術館)に行ってきた

念願の「奇想の系譜展」を観に、東京都美術館に行ってきた。期待以上に、見応え十分。
辻惟雄先生が『奇想の系譜』で紹介し、それを契機に日本でも改めて評価された画家たち、すなわち岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳白隠、鈴木其一の作品が並んでいる。

www.tobikan.jp

f:id:muranaga:20190223095505j:plain

f:id:muranaga:20190223114310j:plain

後期展示の曽我蕭白「群仙図屏風」は観られなかったが、図録を見ることで補うことにする。

f:id:muranaga:20190223204350j:plain
曽我蕭白「群仙図屏風」「雪山童子図」

f:id:muranaga:20190223204336j:plain
曽我蕭白「群仙図屏風」

f:id:muranaga:20190223204320j:plain
曽我蕭白「群仙図屏風」

また今回の展覧会の奇想の絵師たちを「発掘」した辻惟雄先生の名著『奇想の系譜』新装版の現物を手に取ることができた。文庫版より大きく、絵がカラー。文庫本を持っていたとしても、入手する価値あり、である。

新版 奇想の系譜

新版 奇想の系譜

上野から六本木まで足を延ばし、「奇想の系譜展」と「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展をはしご。昨夕の葛飾北斎に始まり、岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳白隠、鈴木其一、最後は河鍋暁斎と、2日間で江戸時代のすごい絵をたくさん観たことになる。いずれも強烈な個性の絵師ばかりで、実のところ精神的には疲れたというのが、正直なところかもしれない。「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展については、稿を改めることとする。

muranaga.hatenablog.com

muranaga.hatenablog.com

1970年に刊行、それまで異端・傍流とされていた江戸時代の絵師・岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳に焦点を当てた。その作品の独自性・特異性、作品の生まれた時代背景、絵師の生まれ育ち、師弟関係が、興味深い語り口でまとめられている。

その後、この本で取り上げられた絵師が、日本美術の中で再評価され、伊藤若冲などの人気は凄いものになっている。江戸絵画史を塗り替えた意味でも名著と言ってよい本だろう。辻惟雄先生はこの本を書いた時は、37歳。とにかく面白く、読者をぐいぐいとひっぱり読ませる文章である。

惜しむらくは、文庫本(2004年刊行)の図版がモノクロであること。若冲蕭白の極彩色の魅力を伝えるには、カラー版であって欲しかった…。しかし朗報が一つ。2019年2月より、辻先生の弟子である山下裕二先生監修の「奇想の系譜展」が東京都美術館で開催される。この本で取り上げられた作品をその目で観る絶好の機会であるとともに、展覧会の開催にあわせて『奇想の系譜』フルカラーの新装版も刊行された。

圧巻のボリュームの作品が年代順に展示されている「新・北斎展」(森アーツセンターギャラリー)

週末金曜日、会社帰りに森アーツセンターギャラリーで開催されている「新・北斎展」に行く。会場に着いた途端に、単眼鏡を持ってこなかったことに気づく。昨日の定期券に続いての忘れ物。結構混んでいて、離れて観ざるを得ない状況もあったので、単眼鏡を置いてきたのは失敗だった。

今回の展示会は「新・北斎」”Hokusei Updated" と名付けられている。日本有数の北斎研究家・収集家であった永田生慈氏監修によるもの(残念ながら 2018年2月に逝去)で、島根美術館にそのコレクションを寄付する前に、この展示会が開催された。今回の展示作品の数は 480。展示替えもあるので、300 以上もの作品を一度に観ることができる。圧巻のボリュームの錦絵や肉筆の作品が、年代順に並べられている。

f:id:muranaga:20190223002836j:plain

f:id:muranaga:20190223002750j:plain

f:id:muranaga:20190222182218j:plain

春朗、宗理、葛飾北斎、戴斗、為一、画狂老人卍…。常に新しい画業を追求する北斎は、名前を変えるとともに画風をアップデートし続けている。今までの名声に固執することなく、その名と共に画風を捨てる…。まさに自己を否定し、破壊し続けるイノベーションの人であり、最期まで画技を希求し続けた。今回、その最晩年、絶筆に近いとされる肉筆の「富士越龍図」や「雲龍図」を観ることができた。

北斎に圧倒された後、高層の森ビルから見る夜景も美しく感じた。

f:id:muranaga:20190222190745j:plain

macg.roppongihills.com

muranaga.hatenablog.com

北斎決定版 (別冊太陽 日本のこころ)

北斎決定版 (別冊太陽 日本のこころ)

北斎漫画(全3巻セット) (Hokusai Manga 3 Vol Set)

北斎漫画(全3巻セット) (Hokusai Manga 3 Vol Set)

定期券を忘れたので、久しぶりに切符を買った

定期券を家に忘れて来てしまった。家に戻る時間がもったいないから切符を買おう。片道470円。往復940円。痛恨のミスである。

切符を買って通勤電車に乗るのは、何年ぶりだろう。あまりにも久しぶりなので、「切符の買い方」を忘れていて、戸惑う自分がいた。

  1. 運賃表を見上げて値段を確認する。
  2. 乗り継ぎ駅とそこからの路線を指定する。
  3. 運賃のボタンを押す。

僕の場合、目黒駅で都営三田線に乗り継ぐのだが、画面に「目黒駅から東京メトロ南北線)」は出てくるのだが、「目黒駅から都営線三田線)」が出てこなくて、一瞬慌てた。いったん南北線への乗り継ぎを選んでみたものの、目的の切符のボタンが出てこないので、いったん元の画面に戻り、そこで「次画面」に進むボタンを発見した。次画面に進まないと、三田線への乗り継ぎ切符を買うボタンは表示されないのだった。

電車の発車時刻まで1分、プラットフォームに電車が入ってくる音がしていたので、かなり焦った。何とか目的の切符を買って、電車に駆け込むと、ようやく一息つくことができた。

「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」(東京都美術館)に行きたい!

雑誌読み放題サービスの無料お試しで、「サライ」最新号を読んだ。東京都美術館で2019年2月9日から開催されている「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」が特集されている(「美術手帖」による紹介記事)。辻惟雄『奇想の系譜』(1970年初版)により、それまで傍流・異端とされていた岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳といった江戸絵画師が、脚光を浴びるようになった。辻先生の発掘から半世紀を経て、今や伊藤若冲などはメジャー化して、展覧会には数時間もの長い行列ができるまでになった。

奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)

奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)

辻先生の弟子である山下裕二先生が監修したのが、今回の展覧会であり、奇想の画家として、先の 6人に白隠と鈴木其一を加えている。「サライ」ではその見所となる絵がカラー図版で紹介されている。『奇想の系譜』と併せて読むと、展覧会のよい予習になる。

サライ 2019年 03 月号 [雑誌]

サライ 2019年 03 月号 [雑誌]

『奇想の系譜』は、初版発刊の 1970年当時、日本美術史の中で光の当たっていなかった江戸時代の絵師を、その個性的な作品とともに紹介した。画家の生まれ育ち、師弟関係、作品の生まれた時代背景などを活写し、またその作品の魅力を余すところなく伝えている。円山応挙伊藤若冲の写実の対比など、非常に興味深い。埋もれていた日本美術を再発見し、江戸絵画史を書き替えるきっかけになった名著である。当時、辻先生は37歳、読者を惹きつける力のある筆致で、ぐいぐいと読ませる。

僕が持っているのは 2004年刊行の文庫本。文庫本版の唯一の弱点は、図版がモノクロであること。極彩色の作品がモノクロで紹介されても、迫力に欠ける。いきおい今回の「サライ」のようなカラー図版を参照しながら、読むことになる。しかし、今回の展覧会をきっかけに、この名著『奇想の系譜』のオールカラー版が刊行された。きっと展覧会の会場にも置いてあるだろう。実物を見て、購入するか決めたい。

新版 奇想の系譜

新版 奇想の系譜

3連休でもあり、『奇想の系譜』を再読した後、さらに辻先生の『日本美術の歴史』を読み進めた。「奇想」ではない、狩野派琳派池大雅円山応挙葛飾北斎がどのように記述されているのか、確認したかったのだ。

日本美術の歴史

日本美術の歴史

それにしても、最近の展覧会は「反則」だよなぁ、と思う。何が反則かって、展示替えである。作品リスト(PDF)を見ると、たとえば岩佐又兵衛の山中常盤物語絵巻は第四巻が前期(2/9 - 3/10)、第五巻が後期(3/12 - 4/7)と分けて展示される。伊藤若冲の旭日鳳凰図は前期、曽我蕭白の群仙図屏風は後期の展示となっている。うーむ…。2回行くことになるのだろうか。

kisou2019.jp

bijutsutecho.com

1970年に刊行、それまで異端・傍流とされていた江戸時代の絵師・岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳に焦点を当てた。その作品の独自性・特異性、作品の生まれた時代背景、絵師の生まれ育ち、師弟関係が、興味深い語り口でまとめられている。

その後、この本で取り上げられた絵師が、日本美術の中で再評価され、伊藤若冲などの人気は凄いものになっている。江戸絵画史を塗り替えた意味でも名著と言ってよい本だろう。辻惟雄先生はこの本を書いた時は、37歳。とにかく面白く、読者をぐいぐいとひっぱり読ませる文章である。

惜しむらくは、文庫本(2004年刊行)の図版がモノクロであること。若冲蕭白の極彩色の魅力を伝えるには、カラー版であって欲しかった…。しかし朗報が一つ。2019年2月より、辻先生の弟子である山下裕二先生監修の「奇想の系譜展」が東京都美術館で開催される。この本で取り上げられた作品をその目で観る絶好の機会であるとともに、展覧会の開催にあわせて『奇想の系譜』フルカラーの新装版も刊行された。

一人の著者、つまり辻惟雄先生による日本美術通史。大学の講義ノートがもとになっており、教科書のようにも読めるし、物語のようにも読めるというコンセプトで作られたらしい。

その通りの内容で、『奇想の系譜』の文章同様、日本美術の通史・概観を興味深く、すいすいと読み進められる。図版もカラー。さらに詳しく知りたい人のための文献ガイド、索引もある。

辻先生いわく、日本美術の特質は「かざり」「あそび」「アニミズム」の三つである。