雑誌読み放題サービスの無料お試しで、「サライ」最新号を読んだ。東京都美術館で2019年2月9日から開催されている「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」が特集されている(「美術手帖」による紹介記事)。辻惟雄『奇想の系譜』(1970年初版)により、それまで傍流・異端とされていた岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳といった江戸絵画師が、脚光を浴びるようになった。辻先生の発掘から半世紀を経て、今や伊藤若冲などはメジャー化して、展覧会には数時間もの長い行列ができるまでになった。
- 作者: 辻惟雄
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/09/09
- メディア: 文庫
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辻先生の弟子である山下裕二先生が監修したのが、今回の展覧会であり、奇想の画家として、先の 6人に白隠と鈴木其一を加えている。「サライ」ではその見所となる絵がカラー図版で紹介されている。『奇想の系譜』と併せて読むと、展覧会のよい予習になる。
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2019/02/09
- メディア: 雑誌
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『奇想の系譜』は、初版発刊の 1970年当時、日本美術史の中で光の当たっていなかった江戸時代の絵師を、その個性的な作品とともに紹介した。画家の生まれ育ち、師弟関係、作品の生まれた時代背景などを活写し、またその作品の魅力を余すところなく伝えている。円山応挙と伊藤若冲の写実の対比など、非常に興味深い。埋もれていた日本美術を再発見し、江戸絵画史を書き替えるきっかけになった名著である。当時、辻先生は37歳、読者を惹きつける力のある筆致で、ぐいぐいと読ませる。
僕が持っているのは 2004年刊行の文庫本。文庫本版の唯一の弱点は、図版がモノクロであること。極彩色の作品がモノクロで紹介されても、迫力に欠ける。いきおい今回の「サライ」のようなカラー図版を参照しながら、読むことになる。しかし、今回の展覧会をきっかけに、この名著『奇想の系譜』のオールカラー版が刊行された。きっと展覧会の会場にも置いてあるだろう。実物を見て、購入するか決めたい。
- 作者: 辻惟雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2019/02/04
- メディア: 大型本
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3連休でもあり、『奇想の系譜』を再読した後、さらに辻先生の『日本美術の歴史』を読み進めた。「奇想」ではない、狩野派や琳派、池大雅や円山応挙、葛飾北斎がどのように記述されているのか、確認したかったのだ。
- 作者: 辻惟雄
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2005/12/09
- メディア: 単行本
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それにしても、最近の展覧会は「反則」だよなぁ、と思う。何が反則かって、展示替えである。作品リスト(PDF)を見ると、たとえば岩佐又兵衛の山中常盤物語絵巻は第四巻が前期(2/9 - 3/10)、第五巻が後期(3/12 - 4/7)と分けて展示される。伊藤若冲の旭日鳳凰図は前期、曽我蕭白の群仙図屏風は後期の展示となっている。うーむ…。2回行くことになるのだろうか。
その後、この本で取り上げられた絵師が、日本美術の中で再評価され、伊藤若冲などの人気は凄いものになっている。江戸絵画史を塗り替えた意味でも名著と言ってよい本だろう。辻惟雄先生はこの本を書いた時は、37歳。とにかく面白く、読者をぐいぐいとひっぱり読ませる文章である。
惜しむらくは、文庫本(2004年刊行)の図版がモノクロであること。若冲や蕭白の極彩色の魅力を伝えるには、カラー版であって欲しかった…。しかし朗報が一つ。2019年2月より、辻先生の弟子である山下裕二先生監修の「奇想の系譜展」が東京都美術館で開催される。この本で取り上げられた作品をその目で観る絶好の機会であるとともに、展覧会の開催にあわせて『奇想の系譜』フルカラーの新装版も刊行された。