Muranaga's View

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「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」(東京都美術館)に行きたい!

雑誌読み放題サービスの無料お試しで、「サライ」最新号を読んだ。東京都美術館で2019年2月9日から開催されている「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」が特集されている(「美術手帖」による紹介記事)。辻惟雄『奇想の系譜』(1970年初版)により、それまで傍流・異端とされていた岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳といった江戸絵画師が、脚光を浴びるようになった。辻先生の発掘から半世紀を経て、今や伊藤若冲などはメジャー化して、展覧会には数時間もの長い行列ができるまでになった。

奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)

奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)

辻先生の弟子である山下裕二先生が監修したのが、今回の展覧会であり、奇想の画家として、先の 6人に白隠と鈴木其一を加えている。「サライ」ではその見所となる絵がカラー図版で紹介されている。『奇想の系譜』と併せて読むと、展覧会のよい予習になる。

サライ 2019年 03 月号 [雑誌]

サライ 2019年 03 月号 [雑誌]

『奇想の系譜』は、初版発刊の 1970年当時、日本美術史の中で光の当たっていなかった江戸時代の絵師を、その個性的な作品とともに紹介した。画家の生まれ育ち、師弟関係、作品の生まれた時代背景などを活写し、またその作品の魅力を余すところなく伝えている。円山応挙伊藤若冲の写実の対比など、非常に興味深い。埋もれていた日本美術を再発見し、江戸絵画史を書き替えるきっかけになった名著である。当時、辻先生は37歳、読者を惹きつける力のある筆致で、ぐいぐいと読ませる。

僕が持っているのは 2004年刊行の文庫本。文庫本版の唯一の弱点は、図版がモノクロであること。極彩色の作品がモノクロで紹介されても、迫力に欠ける。いきおい今回の「サライ」のようなカラー図版を参照しながら、読むことになる。しかし、今回の展覧会をきっかけに、この名著『奇想の系譜』のオールカラー版が刊行された。きっと展覧会の会場にも置いてあるだろう。実物を見て、購入するか決めたい。

新版 奇想の系譜

新版 奇想の系譜

3連休でもあり、『奇想の系譜』を再読した後、さらに辻先生の『日本美術の歴史』を読み進めた。「奇想」ではない、狩野派琳派池大雅円山応挙葛飾北斎がどのように記述されているのか、確認したかったのだ。

日本美術の歴史

日本美術の歴史

それにしても、最近の展覧会は「反則」だよなぁ、と思う。何が反則かって、展示替えである。作品リスト(PDF)を見ると、たとえば岩佐又兵衛の山中常盤物語絵巻は第四巻が前期(2/9 - 3/10)、第五巻が後期(3/12 - 4/7)と分けて展示される。伊藤若冲の旭日鳳凰図は前期、曽我蕭白の群仙図屏風は後期の展示となっている。うーむ…。2回行くことになるのだろうか。

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1970年に刊行、それまで異端・傍流とされていた江戸時代の絵師・岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳に焦点を当てた。その作品の独自性・特異性、作品の生まれた時代背景、絵師の生まれ育ち、師弟関係が、興味深い語り口でまとめられている。

その後、この本で取り上げられた絵師が、日本美術の中で再評価され、伊藤若冲などの人気は凄いものになっている。江戸絵画史を塗り替えた意味でも名著と言ってよい本だろう。辻惟雄先生はこの本を書いた時は、37歳。とにかく面白く、読者をぐいぐいとひっぱり読ませる文章である。

惜しむらくは、文庫本(2004年刊行)の図版がモノクロであること。若冲蕭白の極彩色の魅力を伝えるには、カラー版であって欲しかった…。しかし朗報が一つ。2019年2月より、辻先生の弟子である山下裕二先生監修の「奇想の系譜展」が東京都美術館で開催される。この本で取り上げられた作品をその目で観る絶好の機会であるとともに、展覧会の開催にあわせて『奇想の系譜』フルカラーの新装版も刊行された。

一人の著者、つまり辻惟雄先生による日本美術通史。大学の講義ノートがもとになっており、教科書のようにも読めるし、物語のようにも読めるというコンセプトで作られたらしい。

その通りの内容で、『奇想の系譜』の文章同様、日本美術の通史・概観を興味深く、すいすいと読み進められる。図版もカラー。さらに詳しく知りたい人のための文献ガイド、索引もある。

辻先生いわく、日本美術の特質は「かざり」「あそび」「アニミズム」の三つである。