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念願の「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」(東京都美術館)に行ってきた

念願の「奇想の系譜展」を観に、東京都美術館に行ってきた。期待以上に、見応え十分。
辻惟雄先生が『奇想の系譜』で紹介し、それを契機に日本でも改めて評価された画家たち、すなわち岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳白隠、鈴木其一の作品が並んでいる。

www.tobikan.jp

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後期展示の曽我蕭白「群仙図屏風」は観られなかったが、図録を見ることで補うことにする。

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曽我蕭白「群仙図屏風」「雪山童子図」

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曽我蕭白「群仙図屏風」

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曽我蕭白「群仙図屏風」

また今回の展覧会の奇想の絵師たちを「発掘」した辻惟雄先生の名著『奇想の系譜』新装版の現物を手に取ることができた。文庫版より大きく、絵がカラー。文庫本を持っていたとしても、入手する価値あり、である。

新版 奇想の系譜

新版 奇想の系譜

上野から六本木まで足を延ばし、「奇想の系譜展」と「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展をはしご。昨夕の葛飾北斎に始まり、岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳白隠、鈴木其一、最後は河鍋暁斎と、2日間で江戸時代のすごい絵をたくさん観たことになる。いずれも強烈な個性の絵師ばかりで、実のところ精神的には疲れたというのが、正直なところかもしれない。「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展については、稿を改めることとする。

muranaga.hatenablog.com

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1970年に刊行、それまで異端・傍流とされていた江戸時代の絵師・岩佐又兵衛狩野山雪伊藤若冲、曽我蕭白長沢芦雪歌川国芳に焦点を当てた。その作品の独自性・特異性、作品の生まれた時代背景、絵師の生まれ育ち、師弟関係が、興味深い語り口でまとめられている。

その後、この本で取り上げられた絵師が、日本美術の中で再評価され、伊藤若冲などの人気は凄いものになっている。江戸絵画史を塗り替えた意味でも名著と言ってよい本だろう。辻惟雄先生はこの本を書いた時は、37歳。とにかく面白く、読者をぐいぐいとひっぱり読ませる文章である。

惜しむらくは、文庫本(2004年刊行)の図版がモノクロであること。若冲蕭白の極彩色の魅力を伝えるには、カラー版であって欲しかった…。しかし朗報が一つ。2019年2月より、辻先生の弟子である山下裕二先生監修の「奇想の系譜展」が東京都美術館で開催される。この本で取り上げられた作品をその目で観る絶好の機会であるとともに、展覧会の開催にあわせて『奇想の系譜』フルカラーの新装版も刊行された。