Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

社内の知識レベルを合わせるべく、『生成 AI 導入の教科書』を読む

デジタルマーケティングのための Web サイト構築、映像制作を生業とする会社にいるので、生成 AI の活用は必須マターである。

muranaga.hatenablog.com

昨年(2023年)末、僕が目を通した以下の本を候補に、読書会・勉強会を企画した。

  1. 保科学世(アクセンチュア)『生成AI時代の超仕事術大全』
    • 生成AIの仕事への活用、そのために必要なスキル、生成AIによる業界変化の未来を描く。包括的。ボリューム大(コンサルっぽい)
  2. 小沢健祐(オザケン)『生成AI 導入の教科書』
    • 生成AIを実際に導入する際の戦略・実践のポイントを描く。バランスよい構成。簡潔で実践的(現場のプロジェクトリーダーならでは)。生成AIの現状とビジネスの変革、プロンプトエンジニアリング術、導入済企業へのインタビューなど。
  3. 有園雄一『マイクロソフト Copilot の衝撃 生成AI時代のマーケティング
  4. 小林雅一『生成AI 「ChatGPT」を支える技術はどのようにビジネスを変え、人間の創造性を揺るがすのか』
    • 生成AIの技術と可能性について骨太に描く。より深く生成AIの歴史・技術を理解したいビジネスパーソン向け。
  5. 馬渕邦美『ジェネレーティブAIの衝撃』
    • 項目の概説を羅列してある印象。パナソニックコネクトなどへのインタビューに特徴。
  6. 池田朋弘『事例で学ぶ ChatGPT 最強の仕事術』
    • 文書作成・調査・企画立案・IT・営業マーケティング・外国語など状況別に有用なプロンプトの与え方を紹介。

知識レベルを合わせるという目的においては、1と2がよさそう。特に 2がコンサイスによくまとまっており、読書会向け。3はマーケティング限定、すぐに読める。4はいい本だが副読本という位置づけ。より深く理解したい人向け。5は参考程度。6 は実践的。読書会の後の実践編で活用できそう。

そう考え、2. 小沢健祐(オザケン)『生成AI 導入の教科書』の内容を Powerpoint にまとめて、読書会を実施した。より深く知りたい人は 4. を読んでもらい、すぐに実践してもらう人には 6. が参考になる。

以下は、資料を箇条書きに変換したもの。これも生成 AI を利用して行い、手で修正を入れた。

小澤健祐『生成 AI 導入の教科書』
  • 著者:AI 専門メディア(https://ainow.ai/)編集長、ディップ(株)でAI活用Pj推進
  • Chapter 1 AI は「作る時代」から「使う時代」へ ━ 生成AIとは
  • Chapter 2 「今までの DX は絆創膏」 ━ つぎはぎの DX と生成AI
  • Chapter 3 生成 AI によるビジネスモデルの変革
  • Chapter 4 生成 AI を社内で活用するために理解しておくべきこと
  • Chapter 5 「業務理解が第一歩」生成 AI の導入ステップ
  • Chapter 6 生成 AI の既存システムとの連携パターン
  • Chapter 7 生成 AI を活用するプロンプトエンジニアリング術
  • Chapter 8 これからの生成 AI をめぐる動向
  • Chapter 9 企業における AI 導入のベストプラクティス

各章の終わりに、ポイントがまとめてある

Chapter 1 AI は「作る時代」から「使う時代」へ ━ 生成AIとは
  • ChatGPT をはじめとする生成 AI の可能性
    • チャットというシンプルな会話形式で高度な AI をエンドユーザに提供
  • リスク・課題
    • ハルシネーション、バイアス、プライバシー、透明性・説明可能性、法規制、知的財産権
  • 大規模言語モデル(LLM=Large Language Model)
    • 自然言語の大規模な機械学習モデル:文の生成・要約・質疑応答・翻訳など
    • Transformer (GPT=Generative Pre-trained Transformer)
    • GPT-3: 1,750億 パラメタ *GPT-4: 1,100億パラメタ x 16モジュール = 1.8兆パラメタ
    • スケーリング則:パラメタ数・学習量 → モデルの性能向上
  • AIを「作る」ことの大変さ
    • 企画、データ収集、前処理、モデル選択・構築、PoC、実装、保守
  • AIを「使う」時代
    • 大規模な汎用モデル + 個別チューニング
    • 生成 AI でも「解決する課題は何か」が重要

*補足

  • Transformer の自己注意機構 … ある単語と他の単語との関係性を計算、文脈の中での単語の意味付けをベクトル化
  • Pre-trained (学習)… 文章の穴埋め問題を大量に解かせることで、予測能力を学習
  • Udemy 講座

udemy.benesse.co.jp

Chapter 2 「今までのDXは絆創膏」 ━ つぎはぎの DX と生成AI
  • 汎用AI ⇔ 特化型AI、 従来のAI(識別AI、分析AI)そして 生成AI
  • LLM による生成 AI= (汎用性の高い)自然言語処理に特化した AI
    • 言語:認知(思考) & コミュニケーション の根本 → それが AI で扱えるようになった
    • 自然言語理解・生成文章の品質、多様なアプリケーション、プログラミング応用
  • DX:データとデジタル技術で企業変革して、競争優位を生み出す
    • デジタイゼーション:非構造化データを構造化
    • デジタライゼーション:構造化データから新たな知識や洞察を得る
  • 絆創膏だった DX(局所最適)
    • 技術中心、ツール目的、現場感、組織文化、専門スキル不足
  • 根本治療の DX(全体最適、会社の基盤)
  • 生成AI が「ハブ」、各ツールと連携
    • 統合I/F、データ連携、自動化・最適化
Chapter 3 生成 AI によるビジネスモデルの変革
  • 生成 AI は1次情報を分析してまとめるのが得意
    • 2次情報を扱う人間の役割・重要性が変わる
    • (例)SNS、Web上コミュニケーション(chat)の自動化
    • (例)パーソナライズ(メッセージ、キュレーション)
  • 1次情報の収集力、2次情報生成の AI マネジメント力が鍵
  • 1次情報を持つ企業 と 生成 AI プラットフォーマー との連携
  • LLM をハブとした生成AI・各種アプリケーション連携
  • 業界特化の「バーティカルモデル」に生成 AI は期待される
Chapter 4 生成 AI を社内で活用するために理解しておくべきこと
  • 優先するのは現場の経験(Employee Experience)
    • LLM による生成 AI= あらゆる業務に対応する学習能力を持つ
    • 現場の課題、そして解決策を AI に提供する必要がある → 現場の担当者も AI 活用の場に参加し、ともに考え、動く
  • 汎用 AI(全体最適
    • ChatGPT で「要約」「報告書作成」「メール返信」などの業務効率化
  • 特化型 AI(部分最適
    • ChatGPT に複雑な現場のルール・業務フローをプロンプトで伝えるのは難しい
    • 既存システムと AI との連携が必要
    • データをセキュアに扱わなければならない → API によるシステムの連携、大量のプロンプトを与えなくても生成 AI に情報を渡せる
  • 「社内政治」で部署間の連携・協力体制確立が必須
Chapter 5 「業務理解が第一歩」生成 AI の導入ステップ
  1. 「生成AIを使う」プロジェクトの組成:
    • ドメイン知識を持つエキスパート:プロンプトの質を担保する
    • 現場を巻き込むプロジェクトマネジャー
    • 集中型 よりも ハブ&スポーク型:現場でのプロンプトエンジニアリング、緊密な連携が必要
  2. 現場のヒアリング
    • 負荷の高い業務は何か、優先度の高い課題の特定、それを解決するプロンプトの準備
    • インタビュー、ワークショップ、プロセスマッピング(可視化)、データ分析、プロジェクトへのフィードバック
  3. 生成 AI を中心にしたシステム全体像の設計:API による自社ツール・データ連携が重要
    • どのサービスで生成AIを活用するか … Copilot、プラグインAPIの活用
    • サービス同士の連携をどうするか … 既存ツール・データベースとの連携
    • 各部署のシステム構築の必要性:特化型AIによる効率化 … 特定の部署・業務
    • システムの目的と範囲:どのような機能?どのような価値?
    • ユーザインタフェース
    • 応答生成ロジック … 文脈を考慮して生成AIの応答を調整
    • モデルの統合と実装 … API によるシステム統合、性能・応答時間を考慮した最適化
    • ユーザフィードバック収集とシステムの改善
    • セキュリティとプライバシー
  4. 生成 AI の導入環境の構築
    • 最も重要なのは、生成 AI を活用するスキルの教育
      • プロンプトエンジニアリングの基本原則やベストプラクティスを教える
      • プロジェクトベースの学習
      • プロンプト・ライブラリ:テンプレートや例文をまとめたもの
      • ノウハウの共有とフィードバック
      • 実戦的なデモとワークショップ
      • 外部エキスパート、トレーナーの招へいドメイン知識を持つエキスパート:プロンプトの質を担保する
    • ソフトスキルの強化 … 人間と同様、AI とコラボする
    • データプライバシーと倫理的な使用
      • 生成 AI に提供するデータの匿名化
      • 学習データのバイアスを評価
      • 著作権への理解
  5. 特定部署でのテストの実施
Chapter 6 生成 AI の既存システムとの連携パターン
  • パターン1:独自に LLM を開発
  • パターン2:生成 AI 開発企業のサービスを活用
    • ChatGPT、MS Copilot を活用 … 高度なプロンプトエンジニアリングが必要
    • メリット … 専門知識・技術の低減、時間とコスト節約、最新技術、スケーラビリティ
    • デメリット … カスタマイズの制限、長期コスト、依存性、プライバシーとセキュリティ、透明性
  • パターン3:API 経由で生成 AI を利用する
    • ソフト開発技術者が必要、だがシステム統合・連携が可能
    • メリット/デメリット … パターン2と共通
  • パターン4:生成 AI が組み込まれたサービス活用
    • 例:企業向けのプロンプト共有サービス、各種プラグイン
  • パターン5:ノーコード・ローコードでアプリケーションを作成する (2023/12月情報)
    • 例:GPTs、Copilot Studio
    • 自然言語で Chat アプリを作成する:ソフト開発技術者不要
Chapter 7 生成 AI を活用するプロンプトエンジニアリング術
  • プロンプトエンジニアリング … LLM に入力する命令文の開発・最適化
    • 指示(具体的なタスク)、背景、入力データ、データの出力形式
  • プロンプトエンジニアリングのテクニック
    • Zero-shot
    • Few-shot:事例やデモを提供して、それを応答の条件付けとする
    • Chain-of-Thought (CoT):連鎖的な思考をさせる
    • Zero-shot CoT:「ステップバイステップで答えて」
    • Self-Consistency:Few-shot と CoT の組み合わせ
    • 知識生成プロンプティング:生成AI の知識と人間の知識のズレを調整
      • プロンプトに事実や定義を含める
      • プロンプトに関連するキーワードを含める
      • プロンプトに文脈や背景情報を含める
  • 生成 AI の文章生成の型
    • 0→1:文章生成
    • 1→10:文章拡張
    • 10→1:要約
    • 1→1:文章変換:翻訳、文章修正
  • 生成 AI の活用術
    • 具体的なキーワードを使う … 曖昧性・比喩・慣用表現は AI は苦手⇔プログラミングは得意
    • 項目に分けて指示する … # でマークアップ
    • ステップを明示してあげる
  • 生成 AI で重要性が増すソフトスキル
    • 「仕組み化力」 → 業務を作業に分解 → 人に任せる作業、AIにやらせる作業、自分がやる作業
    • 生成 AI をマネジメントする能力
Chapter 8 これからの生成 AI をめぐる動向
  • マルチモーダル化
  • Code Interpreter自然言語から Python を実行、ファイルベース
  • GPTs、Copilot Studio:自然言語で独自の Chat アプリを作成
  • さまざまなサービスと生成 AI が連携
  • AI アラインメント
    • AI の行動や意思決定が人間の価値観や目的と一致するように調整する
  • HAI(Human-AI Interacition)
    • 人間の心理・社会側面・倫理・法律などの視点を取り入れ、AI をより人間にとって使いやすく
Chapter 9 企業における AI 導入のベストプラクティス
  • Microsoft
    • Azure Open AI Services
    • 日本企業と欧米との違い
    • 小さな AI モデル
  • 日清食品
    • Nissin AI-chat powered by GPT-4 を1ケ月で公開
  • ベネッセ:AI チャット
    • 次世代コンタクトセンター、自由研究お助けAI
    • 次世代Webサイトプロジェクト with メンバーズ、ビービット
    • Webサイト制作・運用における生成AI活用
    • 体験を作る、誰の何のためのものか、差別化(自社独自)、プロンプト、入出力調整
  • ディップ
    • 社員全員の作るプロンプトを有識者が審査、200種類以上のプロンプトデータベース
  • SHIFT AI
    • 日本企業の遅れ:成功事例・ノウハウの共有が少ない
    • 広告クリエイティブの品質判断、コピーライティング、デザイン制作
    • カスタマーサポート、内部業務の効率化
  • ABEJA:130億の LLM
    • プロンプトによるチューニングには限界
    • 形式知は対応できるが、暗黙知・アナログ情報を学習できない
  • STORIA 法律事務所
  • 生成AI活用普及協会:AIの社会実装
Appendix 参考資料

「マティス 自由なフォルム」展(国立新美術館)

国立新美術館で開催されている展覧会「マティス 自由なフォルム」に出かける。

フォービズムで有名な20世紀の巨匠マティスは、後半生をフランスのニースで過ごした。今回の展覧会には、ニース市美術館のマティスのコレクションが出品されている。

matisse2024.jp

Web サイトから展覧会のみどころを引用する:

マティスが晩年、精力的に取り組んだ切り紙絵に焦点を当てた展覧会は日本初。マティスが長い芸術家人生で最後に到達した記念碑的な表現に迫ります。

マティスがその60年以上におよぶ創造の歩みにおいて、熟慮と試行を重ねた末に到達したのは、アシスタントに色を塗ってもらった紙をハサミで切り抜き、それらを組み合わせて活き活きとした構図に仕立てあげる切り紙絵でした。色紙をハサミで切り取ることで色彩表現とデッサンを同時に行うことができたのです。筆とカンヴァスの代わりにこの「ハサミでデッサンする」手法で、自由自在に色とかたちを生み出し、そのキャリアの絶頂期を迎えたのです。

ニース市マティス美術館のメインホールで来場者を迎える切り紙絵の大作《花と果実》が、修復を経て、初来日している。その大きさは 410cm x 870cm。5枚のキャンバスがつながって構成されている。4枚の花びら、ないしは 3つの果実による形態が基本単位となり、それぞれが反復されて画面が作られている。

マティス《花と果実》1952-53年

展覧会のもう一つの目玉は、ニース郊外のヴァンスに建つロザリオ礼拝堂の再現展示である。ロザリオ礼拝堂は、最晩年のマティスが切り紙絵を応用し、建築の室内装飾や司祭服をデザインした、マティス芸術の集大成である。展覧会では、この礼拝堂で過ごす一日を体感できる空間が再現されている。

晩年のマティスは、切り紙絵の手法をさまざまな分野に応用、タペストリーや舞台装置などを手がけていたが、人生の総決算となるような仕事としてやりたかったのが建築分野での制作だった。

今回の展覧会のガイドブックが出ている。

国立新美術館の前には《禁断の果実》というインスタレーションがある。

bijutsutecho.com

「印象派 モネからアメリカへ」展(東京都美術館)

東京都美術館で開催されている「印象派 モネからアメリカへ」展は、マサチューセッツ州第2の都市ウスターにある美術館所蔵の展覧会である。

worcester2024.jp

Web サイトから概要を引用する:

第1回印象派展から150周年を迎える2024年、印象派がヨーロッパやアメリカへもたらした衝撃と影響をたどる展覧会を開催します。 19世紀後半、大都市パリには国外からも多くの画家が集いました。パリで印象派に触れ、学んだ画家たちは、新しい絵画の表現手法を自国へ持ち帰ります。 本展は、西洋美術の伝統を覆した印象派の革新性とその広がり、とりわけアメリカ各地で展開した印象派の諸相に注目します。

 アメリカ・ボストン近郊に位置するウスター美術館は、1898年の開館当初から印象派の作品を積極的に収集してきました。このたび、ほとんどが初来日となる同館の印象派コレクションを中心に、日本でもよく知られるモネ、ルノワールなどフランスの印象派にくわえ、ドイツや北欧の作家、国際的に活動したサージェント、さらにはアメリカの印象派を代表するハッサムらの作品が一堂に会します。これまで日本で紹介される機会の少なかった、知られざるアメリ印象派の魅力に触れていただく貴重な機会となります。

1898年の設立当時に集めた同時代のフランスの印象派の作品をはじめ、フランスから帰国したアメリカ人の印象派の画家たちの絵が並ぶ。後者は正直、初めて知る画家たちばかりである。

展覧会の入口の看板は、ハッサム《花摘み、フランス式庭園にて》という作品である。チャイルド・ハッサムは、ボストンからパリに留学、その間にバルビソン派や印象派など、さまざまな近代フランス絵画を目にして、それを応用した。

アメリカの印象派たちは、母国の風景や都市を題材に選ぶようになった。

ハッサム《コロンバス大通り、雨の日》1885年

ハッサムは、ボストンで当時開発されたばかりだったサウスエンド地区のコロンバス大通り沿いの部屋に居を構え、その往来を題材にした。

グリーンウッド《リンゴ園》1903年

ウスター出身のグリーンウッドも、印象派の様式をマサチューセッツの風景に適用させた。

グリーンウッド《雪どけ》1918年

グリーンウッドは、寒色系の影と暖色系の色彩を並べることで、凍える風景の中での太陽の暖かさを伝えている。

HARBS のさまざまなケーキを堪能した

サントリー美術館出光美術館を巡る一日。

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昼食はいつものようにミッドタウンの HARBS のランチサービスを楽しむ。パスタとサラダに、ハーフサイズのケーキと飲み物がつくセットである。

HARBS のケーキの中では、ミルクレープの大ファンなのだが、ランチサービスで選べる時とそうでない時がある。この日はミルクレープは選べず、ホワイトチョコレートケーキとアイリッシュチーズケーキを頼んだ。

一方、入口のショーウィンドウに並んでいた、チョコレートカスタードケーキも美味しそうで気になる。店員に聞くと、残り数が少ないらしい。そこでこのチョコレートカスタードケーキとミルクレープを買って、家で食べることにした。

あまり美味しそうに撮れてはいないけど…。至福。

「生誕300年記念 池大雅ー陽光の山水」展(出光美術館)

サントリー美術館のあとは、いつものように HARBS でランチ。その後、出光美術館に向かう。出光美術館では「生誕300年記念 池大雅ー陽光の山水」展が開催されている。

展示概要を Webサイト・チラシから引用する:

伊藤若冲円山応挙ら、日本美術を変革する個性的な画家たちが輩出され、百花繚乱の様相を呈した江戸時代中期の京都画壇。その中でもひときわ多くの人々に愛された画家に、池大雅(いけのたいが)(1723 - 76)がいます。幼い頃から神童としてその名を知られた大雅は、当時中国より新たに紹介された文人文化に深い憧れを抱き、かの地の絵画を典範とした作品を数多く描きました。一方で自然の光の中で描くことで培った抜群の色彩感覚と大らかな筆致、そして彼がこよなく愛した旅で得た経験によって、本場中国とは異なる、日本人の感性に合致した独自の文人画を創り上げたのです。

本展では、大雅が描いた作品の中から、山水画を中心とする代表作をピックアップして展示いたします。特に大雅が憧れた瀟湘八景、西湖といった中国の名勝と、自身がその足で訪れた日本の名所とを比較しながら、そのたぐいまれなる画業の変遷を追います。

晴れた日には戸外の白砂の上に屏風をひろげて絵筆をふるったという大雅の逸話の通り、その作品の前に立つと、きらめきに満ちた光や爽快な空気に包まれ、遠い中国の地でありながら、その風光の中に立っているかのような錯覚すら感じさせてくれます。厳選された名品を通して、「陽光の山水」と呼ぶにふさわしい大雅芸術の真骨頂を、心ゆくまでお楽しみください。

中国の山水画南宋画を見本としつつも、その画風は柔らかさを感じさせる。瀟湘八景(しょうしょうはっけい)という中国の名所を想像で描いた絵もあるが、日本の名所や四季といったモチーフを、時にほのぼのとさせてくれる人物を登場させて描いている。「陽光の中で描くことで磨かれた色彩感覚と筆致」とは、のちのフランスの印象派の考え方に通じるものがあるように感じた。

「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」(サントリー美術館)

3連休の初日は、サントリー美術館出光美術館を訪れる。

サントリー美術館で開催されているのは「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」である。

www.suntory.co.jp

展覧会のサイト・チラシから概要を引用する:

有楽斎(うらくさい)こと織田長益は天文16年(1547)に織田信秀の子、織田信長の弟として生まれました。武将として活躍し、晩年には京都・建仁寺塔頭「正伝院」を再興、隠棲します。正伝院内に有楽斎が建てた茶室「如庵」は国宝に指定され、現在は愛知県犬山市の有楽苑内にあり、各地に如庵の写しが造られています。正伝院は明治時代に「正伝永源院」と寺名を改め、いまに至るまで有楽斎ゆかりの貴重な文化財を伝えています。

しかし茶人・有楽斎として名高い一方、武士・長益には悲観的なイメージも伴います。天正10年(1582)に起きた本能寺の変では、二条御所に籠る長益の主君・信忠(信長の長男)が自害したにもかかわらず、長益は御所を脱出したことから、京の人々には「逃げた(男)」と揶揄されました。さらにその後、信雄(信長の次男)に仕え、徳川家康豊臣秀吉の講和を調整するなど存在感を示したものの、信雄が改易されると今度は秀吉の御伽衆に加わります。関ヶ原の戦いでは東軍として参戦し、戦後も豊臣家に仕えましたが、大坂夏の陣の前には家康の許可を得て主君から離れました。

信長、秀吉、家康の三天下人に仕えて時流を乗り切り、晩年を京で過ごした織田有楽斎の心中には、どのような思いがあったのでしょうか。本展覧会は、2021年に400年遠忌を迎えた織田有楽斎という人物を、いま一度総合的に捉えなおそうと構成したものです。

以下も Webサイトからの引用になるが、大名でもあり茶人でもあった有楽斎は、人と人の間に立って調整・調停をする能力に長けた人だったのではないかと想像される。

本能寺の変の後、長益は豊臣秀吉に仕え、摂津国島下郡味舌(現在の大阪府摂津市内)に二千石の知行を与えられました。 秀吉の没後は徳川家康との関わりを深くし、関ヶ原の戦いでは石田三成の軍勢と戦をまじえて戦功をあげ、本領を安堵されただけでなく大和国山辺郡(現在の奈良県山辺郡)に知行地を与えられました。その後、大坂城に入り淀殿の叔父として淀殿・秀頼母子を補佐しましたが、常に徳川方へ配慮し、冬の陣においては豊臣・徳川の間で和議を結ぶよう説得しました。

戦国時代から江戸時代にかけての激動の時代、長益は有能な大名としての地歩を固めていきますが、夏の陣を前に京都・二条へ移り、また建仁寺塔頭・正伝院を再興し、ここを隠棲の地とします。もともと長益は利休も一目を置く茶人であり、法躰となり有楽斎と号した後も茶の湯に執心し、高僧や、古田織部、細川三斎、伊達政宗などの武将と結びながら茶会を開いていきます。これらの活動を示す書状はいまも正伝永源院に多く残り、茶人としての姿をよく示しています。本章では、有楽斎が残したこれらの書状を用いて、茶人としての彼の姿に光を当てます。

愛知県犬山市の有楽苑に移築されている国宝の茶室「如庵」および重要文化財の「書院」の3次元計測データを、ジオラマのように立体化して表示する展示が面白かった。ソニーの「空間再現ディスプレイ」の技術である。

ゲーム機のコントローラで、さまざまな角度から茶室の様子を見ることができ、とても面白い。

www.sony.jp

観梅(2024)

今年は暖かく、梅が早く咲き始めているようだ。リモートワークの休憩がてら、近所の公園に出かけてみた。

なるほど。もちろん満開ではないし、しだれ梅は蕾の状態だが、「梅祭り」の時には、見ごろを過ぎているかもしれない。

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