東京都美術館で田中一村を堪能した後は、藝大美術館へ足を延ばす。「黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」展が開催されている。
黄土水のことは何も知らなかったのだが、NHK「日曜美術館 アートシーン」で少し紹介されて、その写実的な彫刻が印象的だったのだ。
Web サイトから展覧会の概要を引用する:
台湾出身者初の東京美術学校留学生として知られる彫刻家・黄土水(1895-1930)。東アジアの近代美術に独自の光彩を与える彫刻家として近年ますます評価を高めており、本国では2023年に代表作《甘露水》(1919)が国宝に指定されました。
本展では、国立台湾美術館からこの《甘露水》を含む黄土水の作品10点(予定)と資料類を迎えて展示するとともに、藝大コレクションより彼が美校で学んでいた大正から昭和初期の時期を中心とした洋画や彫刻の作品48点(予定)をあわせて紹介します。
日本の伝統的感性と近代美術との融合をめざした黄土水の師・高村光雲とその息子光太郎、《甘露水》にも通じる静かな情念をたたえた荻原守衛や北村西望の人物像、あるいは藤島武二、小絲源太郎らが手掛けた20世紀初頭の都市生活をモチーフとした絵画、台湾出身の東京美術学校卒業生の自画像作品など、バラエティに富んだ作品群を用意してお待ちしております。
台湾随一の彫刻家・黄土水が母校に帰ってくる――その歴史的瞬間を自らの眼でお確かめください。
《甘露水》は観音菩薩の聖性を含意する大理石を用いた女性等身大の写実彫刻。全身に光を浴びるイメージが表現されている。
1923年以降、黄土水は台湾意識を表現するモチーフとして、水牛を使用し始めた。自ら牛を飼って観察・写生し、牛の体形や動きをリアルに再現している。
黄土水の師である高村光雲やその息子・高村光太郎の彫刻も展示されている。その中でとても興味深かったのは《大正十二年 帝国絵画番付》である。1923年当時の洋画・日本画・彫刻の画家・作家たち。とてもなじみの深い名前が並んでいる。