Muranaga's View

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『日本人なら必ず誤訳する英文』を読んで、英文和訳の大切さを改めて認識

ダ・ヴィンチ・コード』の翻訳で知られる著者が、翻訳学校での人気講座「誤訳をなくす文法特訓」の内容を本にまとめたのが、『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文』である。誤読し易い英文、間違い易い構文が集められており、この本を読むと、今まで「だいたいの雰囲気」で英文を読んで理解したつもりになっていたことを、改めて認識させられる。

The Economist などの英文記事を読んでいると、単語の意味はわかっているのだけれども、どうしても文意が取れないところがある。記事の内容をまとめるくらいであれば、わからないところは飛ばしてしまえばよいが、きちんと翻訳するとなると、原文を正確に理解していない限り不可能だ。英文和訳ではごまかしが効かない。逆に言えば、訳してみて初めて、その英文を本当に理解しているかがわかる。

この本は、日本人が陥り易い間違いを例題形式で解説してくれる。本当ならば、机に向かってきちんと日本語に訳出しながら読み進むべきなのだろうが、新書サイズなので、通勤電車の中でパズルを解くような気分で読むことができる。しかも読み通すのに数日程度という手頃な分量である。全部で 140 の問題があるが、僕が最初に読んだ時の正答率は、(甘めに採点したにもかかわらず)わずか 42.8% であった。「基本編」でようやく5割、「難問編」にいたっては3割もいかないという出来である。TOEICTOEFL のような試験で高得点を上げていても、真の意味で英文が読めていない事実を思い知らされた。

僕がよく間違うのは、否定の省略形である:


"Any luck at all, we'll get promoted."
"Never with our luck."

Mrs. Jones couldn't risk opening that parcel, not with the children about, and so put it into a drawer.

Jimmy goes to bed hungry. Not when he was young. Practically never then.

あるいは比較級を使った表現:


・He is as wise as his younger brother.
・This is as good a place as any.

"Hey, don't you look sick?"
"I've never been better."

He is one-half as old as his sister.

Today's household product is much better than it was. Rarely have aesthetics and functionality been so much in public demand. Shops that sell tasteful items are emerging in the most unattractive of shopping malls.

助動詞や仮定法も気をつけていないとそのニュアンスの違いを読み過ごしてしまう:


・I must read the book three times.
・I have to read the book three times.

・It's time for you to send the children to bed.
・It's time you sent the children to bed.

問題の合間に、著者がどういう風に英語力をつけたかについて、インタビュー形式で語られている。著者は僕と同年代なので、大学受験時代に使った参考書がまったく同じである。特に駿台予備校の故・伊藤和夫先生による『英文解釈教室』は、僕自身にとっても英語読解力の基礎を作ってくれた本である。伊藤先生が「直読直解」「前から訳す」と言われていたことが、『日本人なら必ず誤訳する英文』でも繰り返し強調される。それは左から右へ読む進む中で予測しながら英文の構造を掴むこと、予測が外れたらもう一度読み直すことを指す。地道な構文解析と英文和訳の勉強をすること、それには『英文解釈教室』のような本を丁寧に読みこんで完全に自分のものにする勉強法が大事だと著者は説く。

そう、受験勉強の時は何度も同じ本を繰り返すことで地道に力をつけていったのだった。そう思って『日本人なら必ず誤訳する英文』も、2度目に取り組んでみた。初読の時から3ヶ月もたっているせいか、同じ問題を同じように間違える自分の記憶力のなさが情けなかったが、それでも正答率は 55.7% まで上がった。やはり繰り返し地道に勉強しないと、なにごとも身につかないのである。

新書というお手頃サイズの中に間違い易い英文例が凝集されており、英語読解力を確認するためにも、そしてそれを高める一助とするためにも、多くの英語学習者にお薦めしたい一冊である。

英文解釈教室 改訂版

英文解釈教室 改訂版

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