SOMPO 美術館で開催されている「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」を見に行く。スイスのジュネーヴにあるプチ・パレ美術館は、19世紀後半から 20世紀前半のフランス絵画を中心とした作品を収蔵している。
www.sompo-museum.org
今回の展覧会では、印象派以降のさまざまな美術運動を大きく 6つに分けて、その特徴のわかる作品を展示している。以下の解説は、今回の展覧会の鑑賞ガイドに基づいている:
- 印象派
- 伝統の主題や表現手法を否定し、新たな絵画を探究する画家たちが、官展に対抗すべく 1874年に自分たちで展覧会を開催。
- その際の皮肉交じりの批評をもとに、この画家たちは印象派と呼ばれるようになった。
- 新印象派
- スーラやシニャックは印象派の色彩分割をもとに、点描表現を生み出した。
- 様々な画家による点描の作品が展示されている。
- ナビ派とポン=タヴァン派
- フランス北西部ブルターニュ地方にある小さな村がポン=タヴァン。ここに滞在したゴーギャンと周囲の若い画家たちをポン=タヴァン派と呼ぶ。
- 伝統的な絵画からも、印象主義からも距離をとり、輪郭線で色面を囲む平面的な表現方法で、自身の想像力と描かれるものの外観を統合しようとした。
- その影響を受けたパリの若手画家たちがナビ(ヘブライ語で「預言者」の意味)派を結成した。
- 象徴主義の流れに属し、装飾的な表現を追求、神秘主義・宗教・文学に関連した内容を好んだ。
- その代表と言えるドニにとって、重要な主題は家族であった。
- 新印象派からフォーヴィズムまで
- 新印象派は厳格な分割主義の原理から遠ざかり、点描に代わる長めのタッチや自由な色彩表現を採り入れた。
- これが広がったのがフォーヴィズムである。その大胆なタッチと鮮やかな色彩が「フォーヴ(野獣)」と批評された。
- 数年の活動の後に終焉を迎え、画家たちはそれぞれ独自の道を歩んでいく。
- フォーヴィズムからキュビズムまで
- フォーヴィズム最後の展覧会が 1907年に開催されたが、そこでセザンヌの回顧展も併せて開催された。
- これがきっかけとなり、画家たちの興味は色彩から、空間と量感の表現に移っていった。
- キュビズムを牽引したピカソは複数の視点から対象物を捉え、そのイメージを組み合わせることで、絵画上に現実を再構築することを試みた。
- ポスト印象派とエコール・ド・パリ
- パリには、印象主義をはじめとする前衛的な運動から距離を置いた画家たちもいた。
- 両大戦間の時期に、特定の技術運動に属さず、明確な主義や信条を立てない画家たちをエコール・ド・パリと呼ぶ。
- 第一次世界大戦前はモンマルトルが、戦後はモンパルナスが主な拠点となり、貧しい人々や労働者に共感し、その日常を描いた。
- 1920年代には装飾芸術が注目されると同時に、古典絵画に立ち返ろうとする「秩序への回帰」と呼ばれる傾向があった。
名も知らぬ画家たちの作品が多いが、6つの美術運動に特徴的な作品が多く、非常にわかり易い展覧会であり、勉強になった。スーラやシニャック以外にも多くの画家が点描に取り組んでいたことを改めて知ったし、ナビ派のモーリス・ドニが、家族を描く時の色彩が明るいのが少し意外であった。
SOMPO 美術館所蔵の印象派の作品は写真撮影が可能となっている。