Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

湘南をドライブして、「イギリス風景画と国木田独歩」展と美術館カフェのランチを楽しむ(茅ヶ崎市美術館)

茅ヶ崎市美術館は、折にふれ、湘南ドライブをするつもりで訪れている。もちろん目的は企画展の鑑賞だが、カフェでの地元食材を使ったランチも楽しみである。横浜の自宅からは片道 1時間半弱。美術館のある緑地の駐車場に、開館時刻の少し前に着く。

www.chigasaki-museum.jp

今回の展覧会は「イギリス風景画と国木田独歩」国木田独歩と言えば自然主義の作家で『武蔵野』という作品が有名である。中学生の時、国語の授業で『牛肉と馬鈴薯』を読んだのを覚えている。その国木田独歩と、イギリス風景画に何の関係があるというのだろう?

Web サイトから展覧会の概要を引用する:

国木田独歩(1871-1908)は明治時代を代表する小説家。結核の治療で訪れた茅ヶ崎でその短い生涯を閉じた独歩の代表作『武蔵野』(1898)は、武蔵野の美しい風景を瑞々しい文体で描写しています。素朴な自然にロマンを見いだす新たな表現は文学者のみならず画家の間にも生まれました。

独歩の『武蔵野』に大きな影響を与えたのは、イギリスのロマン派詩人ウィリアム・ワーズワース(1770-1850)でしたが、産業革命や市民革命を経験し近代市民社会が成立した18~19世紀のイギリスでは、風景に対する関心が高まりをみせました。ワーズワース湖水地方を題材にして詩をつくり、ジョン・コンスタブル(1776-1837)は故郷の豊かな風景を、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)は光と色彩に溢れた自然を描きました。伝統的な風景画が刷新され西洋風景画の頂点が築かれたと言えます。

本展覧会では独歩の自然観に触れつつ、郡山市立美術館と府中市美術館の優品を通じて、コンスタブルやターナーのみならず、ジョン・マーティン(1789-1854)、サミュエル・パーマー(1805-1881)などの画家たちにも焦点をあて、近代イギリス風景画の流れをたどります。さらに、わが国において名所絵的に描かれることが多かった風景画が明治以降どのように描かれるようになったのかをたどり、イギリス風景画の受容についても考察します。

国木田独歩は肺結核を患い、茅ヶ崎にあったサナトリウムで療養し、満36歳という年齢で若くして亡くなっている。茅ヶ崎に縁のある作家が影響を受けたイギリスの作家や画家であったというわけだ。

ゲインズボロ《荷馬車のいる丘陵地帯の森の風景》1745-46年頃

ピーター・デ・ウィント《ウィットビー》

オランダ風景画の影響を受けたゲインズボロなどの作品のほか、ターナーやコンスタブルといった風景画家たちの版画作品などが展示されている。

ターナー《ネッカー川対岸から見たハイデルベルク》1846年

ターナーはドイツ最古の大学都市であるハイデルベルクをたびたび訪れ、その風景を描いた。原画は水彩画であるが、エッチングとライングレーヴィングにより、光が加えられ、ぼんやりとした大気の広がる幻想的な雰囲気の版画となっている。

リチャード・ウィルソン《キケロの別荘》

17-18世紀初めのイギリス風景画は、クロード・ロランやニコラ・プッサンの影響下にあった。それは実際の風景を理想的に再構成し、古代の神殿や聖書や神話の人物を登場させ、ドラマを演出するというものである。ウェールズ出身のウィルソンは、その影響を受け、肖像画から風景画に転向した。

幕末に来日した画家による作品も展示されている。ワーグマンは、油彩・水彩で日本の風俗を描き、高橋由一や五姓田義松が彼の指導を受けていた。

ワーグマン《西洋紳士スケッチの図》1870年代

そしてヨーロッパに学んだ日本人画家の作品も水彩画を中心に並ぶ。

大下藤次郎《蓮池》

牧野義雄《チェルシー発電所遠望》明治40年

テムズ川に面した発電所を描いた牧野義雄の作品は、ぼんやりとした光が湿気を帯びた空気と混ざり合っている。ターナーの作品から強く感銘を受けたのがよくわかる。

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美術鑑賞のあとは、もう一つの楽しみである美術館カフェでのランチである。地元の食材をふんだんに使ったメニューがユニークである。今日は焼きカレーのセット。大和豚のみそ漬けごはんサンドも美味しそうだ。

最近だと年に 1-2回の頻度で、茅ヶ崎市美術館を訪れている。2018年の小原古邨の花鳥画の展覧会は、NHK日曜美術館」でも紹介され、かなりの人出だったのを覚えている。この時はお隣の平塚市美術館まで足を延ばしている。今日の平塚は、七夕祭り真っ最中。人混みを避けたい僕は当然、茅ヶ崎から引き返している。

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