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滅多に見られない仏教美術の宝庫!創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」(東京国立博物館)

猛暑の日はエアコンの効いた美術館・博物館巡り。トーハクと都美に出かける。

まずはトーハク(東京国立博物館)の「神護寺」展へ。

神護寺空海が活動の拠点とした真言密教の始まりの地。なかなか行くことはできない京都の高雄山中にある寺だが、創建1200年(空海生誕 1250年)を記念した特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」には、所蔵する 9つの国宝のうち、8つが山を下りて来ている。

tsumugu.yomiuri.co.jp

Web サイトから開催趣旨を引用する:

京都市の北西部、高雄に所在する神護寺は、紅葉の名所として古くから知られてきました。天長元年(824)、高雄山寺と神願寺(じんがんじ)というふたつの寺院がひとつになり、神護(じんご)国祚(こくそ)真言寺(しんごんじ)(神護寺)が誕生します。高雄山寺は平安遷都を提案した和気清麻呂の氏寺で、唐で密教を学んだ空海が帰国後、活動の拠点とした寺院です。国宝「灌頂暦名(かんじょうれきみょう)」や国宝「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」は、空海に直接関わる作品としてあげられます。また、神護寺の前身寺院にまつられていた国宝「薬師如来立像」は、平安初期彫刻の最高傑作で、寺外での公開は神護寺史上初めてのことです。本展は、空海真言密教のはじまりの地、神護寺に伝わる寺宝の数々をご紹介するまたとない機会です。1200年を超える歴史の荒波を乗り越え伝わった、貴重な文化財をご覧ください。

まさにここにある通りで、滅多に見られない仏教美術、しかもその原点となる作品が陳列され、非常に見ごたえのある展覧会である。その作品の数々について、トーハクのブログ展覧会のサイトで紹介されている。学芸員による易しい解説はありがたい。

www.tnm.jp www.tnm.jp tsumugu.yomiuri.co.jp

パンフレットでもその概要を知ることができる:

今回の目玉の一つは、金剛界(後期展示)・胎蔵界(前期展示)の《両界曼荼羅》(高雄曼荼羅)である。数年かけて修理がされた日本最古の曼荼羅に会うことができる。4m 四方の中に、さまざまな仏が描き込まれている。この曼荼羅に描かれた不動明王が、日本最古の不動明王であり、その後の仏教美術において描かれた不動明王図のルーツとなっている。

そして展覧会では、その曼荼羅をさまざまな角度から迫っている。江戸時代に描かれた摸本。そして現代のデジタル映像技術を駆使した曼荼羅の紹介。高精細映像を活かして曼荼羅には何がどのように描き込まれているかがわかる。さらに黒く変色して見えなくなった銀泥を再現した映像がある。

国宝《五大虚空蔵菩薩坐像》(ごだいこくうぞうぼさつざぞう)は、曼荼羅と同じ配置で展示されている。黄・白・赤・黒・緑と鮮やかに塗り分けられていたのが感じられる。インドで事物の根源とされる、地の黄色、水の白色、火の赤色、風の黒色、空の青色の 5色(青は緑で代用)とのこと。

鎌倉時代、文覚とともに神護寺の復興に大きく貢献したのが、源頼朝後白河法皇である。日本史の教科書に掲載されていた《伝源頼朝像》が、思ったより大きいのに驚く。等身大に描かれているのである。

展覧会の最後は、圧巻の仏像群である。国宝《薬師如来立像》、その脇仏である日光・月光菩薩十二神将立像が並ぶ。神護寺の《薬師如来立像》は、威厳のある厳しい顔をしているのが特徴である。

神護寺の楼門に安置される一対の《二天王立像》は平安時代後期の作。参道を登ってきた人を迎える二天王。写真撮影をすることができる。

約 2時間かけて、神護寺の宝を堪能した。日本の仏教美術の原点となる作ばかり。見ごたえのある展覧会であった。