小学生だったか中学生だったか、同級生と一緒に帝国書院の地図帳を広げて「世界一小さな国はどこだろう?」と探していた。その時に必ず名前が出るのが、リヒテンシュタイン公国だった。スイスとオーストリアの国境にある、南北に 25km、東西に 6km、面積にして 160km2 ほどの、世界で6番目に小さな国である。神聖ローマ帝国のカール6世の時代に自治国として認められたのが 1719年、建国 300年を記念しての展覧会「リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」には、3万点もの侯爵家のコレクションから、絵画と磁器、約 130点が来日している。
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入場してすぐ展示されている映像により、現在のリヒテンシュタインの様子、侯爵家の住まいの様子がわかる。3万点ものコレクションは、ウィーンにある「都市宮殿」や「夏の離宮」に収められている。
今回の展覧会では、歴代のリヒテンシュタイン侯の肖像画に始まり、宗教画、神話画、風景画、静物画とジャンルに分けて展示されている。宗教画の中にはクラーナハ(父)による《聖バルバラ》、神話・歴史画の中にはルーベンスとその工房による《ペルセウスとアンドロメダ》がある。
風景画にはヤン・ブリューゲル(父)の《市場への道》がある。特に目を引いたのは19世紀になってからの作品で、ヴォルトミュラーという画家の作品だ。アルプスの山々の美しい風景を、とても写実的に描いている。ヴォルトミュラーの写実の技術は、風景画に留まらない。静物画、特に花の絵《磁器の花瓶の花、燭台、銀器》でも、その細密さや静物の質感に目を奪われた。
そして、中国や日本からの磁器は、ヨーロッパでも人気を博し、今回の展覧会でも数多く展示されている。景徳鎮や有田オリジナルの磁器に対して、金の装飾が加えられているのが、ある意味、東洋と西洋の文化の融合と呼べるだろうか。18世紀にはウィーンでも磁器が作られるようになり、美しい絵付の作品が並ぶ。こちらの花の絵は、磁器の上に描かれた陶版画である。色合いが褪せない陶版画は、贈答品として活用されたらしい。ウィーン窯・帝国磁器製作所の絵付師ヨーゼフ・ニッグは花の絵を専門としているとのこと。
リヒテンシュタインの至宝を堪能した後は、東急百貨店 TANTO TANTO でランチ。チケットを見せるとワンドリンク・サービスということで、スパークリングワインを頼みたいところではあったが、ぶどうジュースをお願いする。記念日が近かったこともあり、ちょっぴり贅沢なランチにしてみた次第。