新しく生まれ変わったアーティゾン美術館は、非日常のひと時が過ごせる空間である。旧ブリヂストン美術館の時代は、西洋絵画の印象が強かったが、新生アーティゾン美術館・石橋財団は、これから日本画や現代美術にも力を入れていくようで、「琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術」展は、その方向性を象徴するような展覧会である。
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17世紀初めに京都の町人文化として生まれ、江戸に引き継がれた琳派。19世紀後半にパリを中心に、日常に受ける印象や市民文化の喜びを描いた印象派。日本とフランス、東西の都市文化から生まれた画家たちが描く洗練された美を、いくつかの視点から見渡そうという試みであり、100点もの作品が展示されている。琳派のきらびやかな屏風が並んだ部屋の次には、印象派の風景画が展示されている。何とも奇妙な感覚にとらわれる展覧会である。
琳派の作品の中で最も多いのが草花を描いたもの。《草花図屏風》には、山吹、桜草、土筆といった春の花と、紫陽花や茄子などの夏の花が描かれている。俵屋宗達とその工房で多く制作されたもので、「伊年」という印が捺されている。
この隣には、尾形光琳の《槇楓図屏風》(写真撮影不可)が展示されていて、目を引く。華やかな屏風絵の傍らに、酒井抱一や鈴木其一の墨絵も展示されていて、その対比が面白い。
「継承」と言う視点で、琳派のオマージュ作品が並んでいる。鈴木其一《藤、蓮、楓図》は本阿弥光甫に対するオマージュであり、池田孤邨《青楓朱楓図屏風》も尾形光琳に対するオマージュである。
風景画家コローを慕ったのが、印象派のピサロやシスレーである。同じく「継承」というテーマで作品が並べられている。
女性の画家による母子を描いた2枚。
静物画への関心。
展覧会の最後は、都市を離れ、山を描いた作品が並べられている。
青を基調とした色使いと、再構成された山の造形。最後のセザンヌの絵は、今回、最も気に入った絵の一つである。
石橋財団のコレクションから選んだ展示も見応えがある。