Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

西洋絵画だけでなく日本画にも力を入れるアーティゾン美術館「琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術」展

新しく生まれ変わったアーティゾン美術館は、非日常のひと時が過ごせる空間である。旧ブリヂストン美術館の時代は、西洋絵画の印象が強かったが、新生アーティゾン美術館・石橋財団は、これから日本画や現代美術にも力を入れていくようで、「琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術」展は、その方向性を象徴するような展覧会である。

f:id:muranaga:20201121105203j:plain

muranaga.hatenablog.com www.artizon.museum

17世紀初めに京都の町人文化として生まれ、江戸に引き継がれた琳派。19世紀後半にパリを中心に、日常に受ける印象や市民文化の喜びを描いた印象派。日本とフランス、東西の都市文化から生まれた画家たちが描く洗練された美を、いくつかの視点から見渡そうという試みであり、100点もの作品が展示されている。琳派のきらびやかな屏風が並んだ部屋の次には、印象派の風景画が展示されている。何とも奇妙な感覚にとらわれる展覧会である。

f:id:muranaga:20201121105300j:plainf:id:muranaga:20201121105305j:plain
琳派印象派」展 会場入り口

f:id:muranaga:20201121105641j:plainf:id:muranaga:20201121105606j:plain
洛中洛外図屏風》(17世紀)

琳派の作品の中で最も多いのが草花を描いたもの。《草花図屏風》には、山吹、桜草、土筆といった春の花と、紫陽花や茄子などの夏の花が描かれている。俵屋宗達とその工房で多く制作されたもので、「伊年」という印が捺されている。

f:id:muranaga:20201121110014j:plain
伊年印《草花図屏風》(17世紀)

この隣には、尾形光琳の《槇楓図屏風》(写真撮影不可)が展示されていて、目を引く。華やかな屏風絵の傍らに、酒井抱一や鈴木其一の墨絵も展示されていて、その対比が面白い。

「継承」と言う視点で、琳派のオマージュ作品が並んでいる。鈴木其一《藤、蓮、楓図》は本阿弥光甫に対するオマージュであり、池田孤邨《青楓朱楓図屏風》も尾形光琳に対するオマージュである。

f:id:muranaga:20201121110621j:plain
鈴木其一《藤、蓮、楓図》(19世紀)

f:id:muranaga:20201121110558j:plain
池田孤邨《青楓朱楓図屏風》(19世紀)

風景画家コローを慕ったのが、印象派ピサロシスレーである。同じく「継承」というテーマで作品が並べられている。

f:id:muranaga:20201121110728j:plain
コロー《ヴィル・ダヴレー》(1835-40年)

f:id:muranaga:20201121110756j:plain
シスレー《サン=マメス 六月の朝》(1884年

f:id:muranaga:20201121112809j:plain
ゴッホ《モンマルトルの風車》(1886年

女性の画家による母子を描いた2枚。

f:id:muranaga:20201121112923j:plain
メアリー・カサット《日光浴(浴後)》(1901年)

f:id:muranaga:20201121113210j:plain
モリゾ《バルコニーの女と子ども》(1872年)

静物画への関心。

f:id:muranaga:20201121113433j:plain
ファンタン=ラトゥール《静物(花、果実、ワイングラスとティーカップ)》(1865年)

f:id:muranaga:20201121113323j:plain
セザンヌ《鉢と牛乳入れ》(1873-77年頃)

f:id:muranaga:20201121113621j:plain
モネ《黄昏、ヴェネツィア》(1908年頃)

展覧会の最後は、都市を離れ、山を描いた作品が並べられている。

f:id:muranaga:20201121113913j:plainf:id:muranaga:20201121113803j:plain
鈴木其一《富士筑波山図屏風》(19世紀)

f:id:muranaga:20201121113935j:plain
セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》(1904-06年頃)

青を基調とした色使いと、再構成された山の造形。最後のセザンヌの絵は、今回、最も気に入った絵の一つである。

石橋財団のコレクションから選んだ展示も見応えがある。

muranaga.hatenablog.com