Muranaga's View

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1年ぶりのアーティゾン美術館:「M式『海の幸』ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」展

都会の真ん中で非日常の時間を過ごせる別空間。アーティゾン美術館を初めて訪ねた時の印象である。あれからちょうど1年。再びアーティゾン美術館を訪れた。

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アーティゾン美術館

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石橋財団コレクションと現代美術家ジャムセッションとして、「M式『海の幸』ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」展が開催されている。アーティゾン美術館の代表的な所蔵作品である青木繁《海の幸》に対して、セルフポートレイトという独特の手法で知られる森村泰昌が、自分の研究・解釈をもとに、《M式「海の幸」》として、連作を作り上げた。

www.artizon.museum

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青木繁《海の幸》1904年

平面的な絵から立体的なジオラマを起こし、そこからさらに平面に戻す工程で、森村は作品を作り上げる。いや、森村自身が《海の幸》となっていく。

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《M式「海の幸」ジオラマ 01》2021年

作品の中で森村自身が着る衣装や、監視カメラによる制作風景が紹介されている。森村がたった一人で、メイクやスタイリング、撮影を行っていたことがわかる。

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こういった過程を経て生まれたのが《M式「海の幸」》10連作である。青木繁の《海の幸》が描かれた明治以降の日本の政治・文化の歴史の変遷を踏まえながら、森村自身がその登場人物となっている。ちょうど円を描くように連作は展示され、最後の作品が最初の作品にまた戻ってくるような構想になっている。

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森村泰昌《M式「海の幸」第1番:假像の創造」》2021年

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森村泰昌《M式「海の幸」第5番:「復活の日1」》2021年

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森村泰昌《M式「海の幸」第7番:復活の日2》2021年

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この10連作の後に、「ワタシガタリの神話」という映像作品が上映される。この《ワタシガタリの神話》は、青木繁に扮した森村が独白する作品である。《海の幸》についての森村ならではの研究・解釈が語られる。この映像は必見。森村自身がどのように青木繁やその作品である《海の幸》に迫っていったか。連作の背景にある森村の思いを知ることで、連作の意味をもう一度考えさせられることになる。

この展覧会の内容は「美術手帖」の記事に詳しく記されている。また森村泰昌自身へのインタビュー記事の中で、青木繁や《海の幸》について、森村の考えが語られている。

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ジャムセッションの後は、アーティゾン美術館所蔵の印象派のコレクション展に向かう。

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