印象派はもちろんだが、それよりも前の時代のオランダ絵画が好きである。そんな僕にとって、東京都美術館で開催されている「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」は、見逃せない展覧会だ。しかも修復されたばかりのフェルメールの《窓辺で手紙を読む女》を観ることができる。
ドレスデン国立古典絵画館は、ザクセン選帝侯アウグスト2世および3世のコレクションがベースとなっている。3,000点以上ある絵画のうち、400点がオランダ人画家による作品だと言う。今回の展覧会では、フェルメール、レンブラント、ライスダールといったオランダ人画家たちの作品が、肖像画・風俗画・静物画・風景画とバランスよく構成されている。著名な絵画の複製版画も数多く展示されている。
当時のオランダ市民の様子を描いた風俗画も興味深いが、僕が好きなのは風景画である。実はフェルメールの作品の中でも《デルフトの眺望》が一番好きだったりする。
もちろんフェルメールの風俗画も好きだ。室内にいる人物に外から差し込む光が当たり、静かな空間が広がる。精緻な筆致で室内が描かれ、そこにいる人物の物語に思いを馳せる。今回の展覧会の目玉は、何と言っても修復された《窓辺で手紙を読む女》である。今まで白い壁だったら女性の背景にキューピッドを描いた画中画が現れたことである。
展覧会のチラシも、表紙を開くと修復後の絵が現れるように工夫されている。
1979年の X線検査により、背景にキューピッドが隠れていることはわかっていた。それはフェルメール自身が塗りつぶしたものと考えられてきたが、2017年の調査で別の画家によって塗りつぶされたものだと判明、オリジナルに戻すという原則に基づき、今回の修復に至ったものである。修復前と比べて彩色もより鮮やかなものになっている。
余白の美というのだろうか、修復前は手紙の内容についてさまざまな想像を巡らせることができたが、修復後は手紙は何かを明らかにするようなものであったという印象を受ける。
この絵はレンブラント作であるとして、ドレスデン国立古典絵画館に所蔵されたらしい。レンブラント作に見せるべく、キューピッドは塗りつぶされたのであろうか?
フェルメールはつい先日《信仰の寓意》を「メトロポリタン美術館展」で観たばかり。コロナ禍の日本にいながらにして、フェルメールの実物の絵を鑑賞できるのはありがたいことである。
35点とも37点とも伝えられるフェルメールの全作品を紹介したムック本として、『フェルメール 生涯と全作品』はポストカード 5枚の付録がついて、お手頃である。