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ついに木島櫻谷の《寒月》に会えた(泉屋博古美術館東京)

絶対に一度は実物を見たかった絵がある。それは木島櫻谷このしまおうこくの《寒月》である。

泉屋博古美術館東京にて「特別展 木島櫻谷 ― 山水夢中」が開催されており、《寒月》は 6月3日から18日までの期間限定展示となっている。6月3日初日にいそいそと出かける。

展覧会の概要を Web サイトから引用する:

近代の京都画壇を代表する存在として近年再評価がすすむ日本画家・木島櫻谷(このしま・おうこく1877-1938)。 動物画で名を馳せた彼ですが、生涯山水画を描き続けたことも見逃すことはできません。何よりも写生を重んじた彼は、日々大原や貴船など京都近郊に足を運び、また毎年数週間にわたる旅行で山海の景勝の写生を重ねました。その成果は、西洋画の空間感覚も取り入れた近代的で明澄な山水画を切り拓くこととなりました。一方、幼い頃より漢詩に親しみ、また古画を愛した彼は、次第に中華文人の理想世界を日本の風景に移し替えたような、親しみやすい新感覚の山水表現に至ります。

本展では屏風などの大作から日々を彩るさりげない掛物まで、櫻谷生涯の多彩な山水画をご覧いただき、確かな画技に支えられた詩情豊かな世界をご紹介します。あわせて画家の新鮮な感動を伝える写生帖、収集し手元に置いて愛でた古典絵画や水石も紹介し、櫻谷の根底にあり続けた心の風景を探ります。

《寒月》は3番目の展示室に、《駅路之春》と並べてあった。展示室に入った途端に息を吞む。

木島櫻谷《寒月》1912年

一面雪に覆われた夜の竹林。月に照らされた竹。シルエットとなった世界に一頭の狐が姿を現す。寒い冬の静寂な空気。孤独な存在。

写実性の高い緻密な描写。構成のもたらす美。西洋画の手法を取り入れつつ、シンプルな表現に行きついた木島櫻谷 35歳の作品である。

この絵の前に 10分以上座っていただろうか。細部に至るまで堪能した。


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《寒月》は、夏目漱石が「屏風にするよりも写真屋の背景にした方が適当な絵である」と酷評したことでも知られる絵である。日本画と西洋画の融合に対する拒否反応だったのだろうか?

当時は西洋画の技術だけでなく、写真の登場により、画家たちは写実・写生の意味が問われた時代であっただろう。木島櫻谷もその一人であったと思われる。

展覧会では、《寒月》以外の山水画、そしてそれを生み出した写生帖の一部が紹介されている。中でも《帰農図》に心惹かれた。月に照らされ逆光のシルエットとして描かれた農婦たちの姿。ミレーの影響を感じる一方で、伝統的な日本画には見られない影が描かれている解説を読み、なるほど、と思った。

図録を購入、あとでゆっくり余韻を楽しむことにする。

木島櫻谷の代表作を集めた画集としては下記がある:

泉屋博古館東京に来る時はいつも泉ガーデンプレースの駐車場を利用していたが、今回はアークヒルズサウスタワーに車を止めた。こちらの方がランチの値段で、駐車券の割引サービスを受けられる。

昨日予定されていた三島でのゴルフが雨で中止になり、静岡の「さわやか」の炭焼きハンバーグが食べられなかったリベンジのつもりで、「ブラッセリー ル ヴァン」にて、デミグラスソースのハンバーグを注文した。ハンバーグはもちろんのこと、食後のコーヒーも美味しくてお代わりしてしまった。