Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

イアン・マキューアン (Ian McEwan) の小説に圧倒される

このところイアン・マキューアン (Ian McEwan) をまとめて読んでいた。考え抜かれた構成と重厚な描写に圧倒される。

『贖罪』(上)(下)を読み終わった直後は、何が真実で何が真実でなかったのかわからなくなった。果たして今まで読んできたはテクストは本当のところ何だったのか。何を信じればよいのか。宙ぶらりんの気持ちにさせられる。緻密な物語構成と圧倒的な筆力(翻訳もすばらしい)で、茫然自失のラストへと誘われる。一生かけて「贖罪」する小説家の物語。

満ち足りたアッパーミドルの脳外科医師が過ごす『土曜日』。幸福な予感で迎えた週末であったが、平穏な日常が実は脅威と紙一重であった。誰にでも起こりうる災厄。9.11 の同時多発テロ以来、常に心の中にある漠然とした恐怖。戦争への思い。何気ない日常を描きながら、現代人の心を静かに、しかし確実に揺るがせている課題が掘り起こされる。