Muranaga's View

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「つまらない」絵をテーマにした「江戸時代の美術—『軽み』の誕生」展(出光美術館)

先週、平安時代から室町時代までの日本絵画、やまと絵の名品を堪能。今週はさらに時代が下り、江戸時代の美術を楽しむべく、久しぶりに出光美術館を訪ねる。

今回の「江戸時代の美術—『軽み』の誕生」展は、狩野派の盟主、狩野探幽が提唱した「つまらない」絵をテーマにした展覧会である。「面白くない」と言う意味ではない。「詰まらない」、英語にすると unfilled。要するに、余白を残す美術である。何も描かない余白に詩情を込める「余白の美」である。

ウェブサイトおよびパンフレットから展覧会の趣旨を引用する。

江戸時代の画壇における狩野派の地位を盤石なものにした狩野探幽(1602 - 74)は、後水尾天皇に対して「絵はつまりたるがわろき」と語ったといいます。つまり、画面にすべてを描きつくすのはよくなく、ゆとりや隙を感じさせるようにするべきだ、と。このような価値観は、絵画の領域だけに当てはまるものではなく、軽みを追求した蕉風俳諧の理論などとも通いあいながら、江戸時代を広く覆ったものでした。本展では、絵画と書跡を中心に、「つまらない」美意識によって貫かれた美術の世界を紹介します。

古田亮『教養の日本美術史』には次のように書かれている:

(狩野)永徳が画面をモチーフからはみ出させることで見る人の方へ働きかけたのに対し、探幽はモチーフとそれを表すため周囲にあしらった墨の濃淡により、図様を描かずに残した部分を大気の表現に変え、見る人を包み画中の世界に取り込む。室町時代に範とされた南宋絵画の、モチーフを画面の隅に寄せて余白に情感を込める空間表現を時代に合わせて再生させたのである。(古田亮『教養の日本美術史』 P.201)

展覧会は、狩野探幽に始まり、松尾芭蕉など俳諧が記された絵図(発句自画賛)、浮世絵、そして焼き物の世界での余白の美とも言える柿右衛門様式の展示があり、最後に江戸琳派酒井抱一や鈴木其一に至る。

今回展示されていた酒井抱一の《十二か月花鳥図》は、出光美術館が取得したプライスコレクションの一つである。

酒井抱一《十二か月花鳥図》右隻

酒井抱一《十二か月花鳥図》左隻

bijutsutecho.com

今回、ショップで2023年初めに開催された「江戸絵画の華」展の図録を入手できたのは嬉しい。プライスコレクションの目玉でもある伊藤若冲の作品を出した展覧会だったのだが、休日は混んでいて行き損ねていたからだ。その図録に今回の酒井抱一《十二か月花鳥図》も掲載されている。

「江戸絵画の華」図録

「江戸絵画の華」図録

出光美術館から皇居方面を眺めながら、少し休憩した後、外に出てランチのお店を探す。午前11時になったばかりだが、とても賑わっているオープンカフェのお店の室内に残り一組として入ることができた。たまたまフラッと入れたが、予約客で室内の席はほぼ埋まっている模様。

魚介のパエリアとクリーム・パスタが美味しい!女性客が多い人気店なのも頷ける。ADRIFT by David Myers というスペイン料理のお店だが、ハンバーガーやパスタも食べられる。David Myers は、ミシュランで星を獲得したこともある人とのこと。

adrift-tokyo.owst.jp