8月1日、梅雨明け。東京国立近代美術館で開催されている「ピーター・ドイグ展」を観に行く。当日の朝、チケットぴあで日時指定チケットを購入、コンビニで受け取ってから、美術館に向かう。
大きなインスタレーションや抽象画、写真や映像といった表現が一般的な現代アートの中にあって、具象画を描き続けるピーター・ドイグ。1959年生まれだから、まさに僕と同世代の人である。その絵は何とも謎めいた風景画であった。近代の画家たちの構図や、広告や映画にインスピレーションを得て、自分が過ごしたカナダやトリニダード・トバゴの風景など、さまざまな心象風景を組み合わせて、絵を描いている。
たとえば《スキージャケット》。カナダで見た日本のニセコ・スキー場の広告から、イメージを創り出したと言う。
ドイツのダム湖を写した白黒の絵はがきを参考に描かれたのが《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》。ダムの門前にいる二人の人物は、ドイグが学生時代に英国国立歌劇場の衣装係として働いていた時に撮った写真に由来し、左手の人物は作家自身だと言う。
この絵に見られるように、画面を3分割して、前景・中景・後景を描き、奥行きを感じさせる作品が多い。《天の川》の構図も、3分割されている。風もない静かな闇夜。人気のない大自然の中に、小舟が描かれ、一人の人物が横たわっている。水面に映る鏡像は、必ずしも地上の景色と一致していない。この不穏さを感じさせるミステリアスなイメージは、映画「13日の金曜日」のラストシーンに由来していると言う。
今回の「ピーター・ドイグ展」は全作品、写真撮影可となっている。その謎めいた風景画を楽しんだ後は、久しぶりに常設展示に足を運ぶ。少しリニューアルされていて、個人的には、近代の日本の画家の絵や版画の展示がよかった。吉田博や川瀬巴水の風景画、小原古邨の花鳥画が好きなのである。
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パレスサイドビルまで歩いてランチ。皇居のお濠の水面は、緑色の水草でいっぱいになっていた。



