Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

高さ 1.5m、東京都内で一番低いガード下トンネル、高輪橋架道橋を歩いてみた

天井が低すぎて、タクシーの社名表示灯(行灯)を壊すという逸話で知られるガード下トンネル、高輪橋架道橋を歩いてみた。たまたま外出先がその近くだったのだ。ここは東京都内で一番天井の低いガード下である。今までタクシーに乗って通過したことはあったが、徒歩で通るのは初めて。高輪ゲートウェイ駅の新設により、この高さ 1.5m のトンネルもなくなってしまうと聞いており、歩いてみるのにちょうどよい機会となった。

高輪橋架道橋は、都営地下鉄泉岳寺の駅からすぐの場所にあり、第一京浜国道(国道15号)からの入り口には、高さ 1.5m 制限の標識が立っている。

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タクシーや自転車が次々に入っていく。

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実際に中に入ってみると、天井が低いだけでなく、レトロ感満載のトンネルであった。途中、さらに天井が低くなり、僕の身長だと首を曲げるか、腰をかがめないと、頭が天井に当たってしまう。

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確かにタクシーの行灯がぶつかりそうな高さである。東側からの入り口は、かなり低く見える。

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タクシーの行灯がぶつかりそう / 東側の入り口

このガード下トンネル、もとは水路であった。明治初期、この辺りはちょうど海岸線にあたり、鉄道を敷設するにあたり、海の中に堤を築いて、そこに線路を通した。外海に船が行けるよう、水路が作られたのである。

toyokeizai.net

三代目歌川広重の浮世絵『東京品川海辺蒸気車鉄道之真景』にその様子が描かれている。

dcollections.lib.keio.ac.jp

さて、このトンネルの第一京浜国道側の入り口のすぐ近くには、高輪大木戸跡がある。高輪の大木戸は、江戸の治安維持のため、宝永7年(1710年)に東海道の両側に石垣を築き、設置された。伊能忠敬が日本地図作成のために行った測量の起点がこの大木戸だとされる。明治初年に西側の石垣は取り払われ、現在は国道15号線(第一京浜国道)沿いに東側の石垣だけが残されている。

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高輪大木戸跡

ja.wikipedia.org

高輪ゲートウェイと言う駅名を JR が発表した時に出したプレスリリース(PDF)を読むと、「高輪ゲートウェイ」の名前は、この大木戸に由来しているらしい。大木戸=ゲートウェイ、ということなのだろう。

この地域は、古来より街道が通じ江戸の玄関口として賑わいをみせた地であり、明治時代には地域をつなぐ鉄道が開通した由緒あるエリアという歴史的背景を持っています。 新しい街は、世界中から先進的な企業と人材が集う国際交流拠点の形成を目指しており、新駅はこの地域の歴史を受け継ぎ、今後も交流拠点としての機能を担うことになります。新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として、街全体の発展に寄与するよう選定しました。

江戸時代からの大木戸。明治時代の鉄道の水路。それを埋め立てられてできたガード下。そして令和の時代を迎えて、新しい駅が開業する。その土地の歴史を巡る小さな旅であった。

目から鱗!『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』を読んで、絵画鑑賞の新たな視座を得る

絵画を理解するには、描かれた背景(美術史)、絵画の意味(モチーフやアトリビュートの意味)、造形(色・構図)について知る必要がある。秋田麻早子『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』は、造形について焦点を当てた本で、基本的なビジュアル・リテラシー、絵画を観察するスキームを身につけるための入門書と位置づけられる。絵の表面的な特徴から受ける印象だけではなく、絵のデザイン(構造や造形)をとらえる技術を、丁寧な説明で紹介する。カラー図版でさまざまな名画の読み解き方が示され、興味が尽きない。

この本を読むと、目から鱗が落ちる。今まで絵を「見て」はいたものの、「観て」はいなかったことを痛感する。本書でビジュアル・リテラシーの基本を身につけることができれば、絵画鑑賞の新たな視座を得て、その楽しみがさらに深まる予感がする。この本で紹介された技術を、早速、展覧会や画集を見る時に応用してみたい。

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

(1) 絵の中の主役はどこか。フォーカル・ポイント
(2) 絵を見る順序、経路の探し方
(3) 絵のバランスの見方
(4) 絵具と色
(5) 絵の構造、構図と比例
(6) 統一感

主に6つの見方を示し、最後に今まで示したスキームを駆使して、ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』、そしてルーベンス『十字架降架』(『フランダースの犬』でネロが最期に目にする絵)を総合的に分析してみせる。

そして自分の好きな絵を 3枚選び、その 3枚の共通項が何かを探すことを勧めている。この共通項こそが、自分が美しいと思うものに共通する特徴である。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

絵の構図・配色について解説する本は、他にもいくつか読んだことがある。『巨匠に学ぶ構図の基本』、『巨匠に学ぶ配色の基本』は、名画に画像処理で変更を加えて、オリジナルと比べてみることにより、その構図や配色の持つ意味や観る者にもたらす感覚を明らかにする、なかなか面白い試みの本である。『構図がわかれば絵画がわかる』においても、冒頭どこか凡庸な印象を与えるフェルメール『デルフトの眺望』が示され、実は画像処理で手前の人物を消していたことが明かされる。黒い点のもたらす構図の妙である。

巨匠に学ぶ構図の基本―名画はなぜ名画なのか? (リトルキュレーターシリーズ)

巨匠に学ぶ構図の基本―名画はなぜ名画なのか? (リトルキュレーターシリーズ)

巨匠に学ぶ配色の基本―名画はなぜ名画なのか? (リトルキュレーターシリーズ)

巨匠に学ぶ配色の基本―名画はなぜ名画なのか? (リトルキュレーターシリーズ)

構図がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

構図がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

今回読んだ『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』は、こういった本の中でも出色の出来だと思う。この本で学んだリテラシーを使って、『巨匠に学ぶ構図の基本』を読み直してみると、また新たな発見があるかもしれない。

『絵を見る技術』で示された 6つの見方について、その要点をまとめておく:

(1) 絵の中の主役はどこか。フォーカル・ポイント

  • 大きさ、位置の他、明暗の差(コントラスト)に注目する。
  • 誘導する線(リーディング・ライン)が集まっているところ。
  • リーディングラインは、線状というだけでなく、身振り手振り、グラデーションの違い、視線などでも構成される。
  • フォーカル・ポイントが二つある絵もある。大きさ、コントラスト、リーディングラインなどをバランスさせている。また二つのフォーカル・ポイントを連携させることも行われる。

(2) 絵を見る順序、経路の探し方

  • リーディングラインには、フォーカル・ポイントを示すだけでなく、画面内の「経路」を示す役割がある。主役の次に、どのような順路で絵を見て欲しいかが示されている。
  • 画面の角を避けるように「巡回型」経路を構成する絵が多い。
  • ジグザグの経路では、画面の両サイドに視線のストッパーを置くような工夫もある。S字のカーブを描くものもある。
  • 放射型の経路もある。集中線型、十字型、クラッカー型などのパターンがある。
  • 入口、出口を示した絵もある。
  • 2次元だけでなく、奥行きという3次元も考えた誘導がなされる。

(3) 絵のバランスの見方

  • 絵には柱となる「構造線」がある。リーディングラインは表層的な輪郭を追うのに対し、構造線はその内側の芯をつかむもの。
  • 縦、横、斜めの3種類。縦は堂々とした感じ、横は穏やかな感じ。斜めは起き上がりそう、倒れそうという動きを感じさせる。
  • 斜めの構造線は、右上がりの方が元気な印象、右下がりの方が不安な印象を与えると言う。
  • 構造線が曲線の場合もある。放物線は揺れたり上昇下降を示したり、優美な印象を与える。円は完璧・完成を示し、丸みのある超然とした印象。S字はリズムある躍動。
  • 絵には複数の線があり、その関係性をリニア・スキームという。絵の構造は、このリニア・スキームに抽象化されている。
  • 縦線を横線で支えたり、斜めの線で支えたりする。
  • 主役を真ん中に置くのは難しい。左右でバランスを取る工夫が必要。それを自然に表現して極めた巨匠がラファエロ
  • ラファエロ以後はフォーカル・ポイントを左右どちらかに振って、バランスを取るような配置になる。

(4) 絵具と色

  • 合成絵具が出るまでは、青色の絵具(ウルトラマリン)は貴重で、金と同じくらい高価だった。聖母マリアやキリストの衣装などに使われ高貴なイメージがある。このウルトラマリンを偏愛したのがフェルメール。青と金の組み合わせは現代でも高級感を表す。
  • 赤、白、黒も高級なイメージを与える。これらの色で布を染めるのが難しかったから。
  • 合成絵具プルシャンブルーの発明、18世紀以降に青を多く使った絵画が見られる。ピカソの「青の時代」、葛飾北斎のブルーもその一つ。
  • 合成絵具は耐久性で問題のあるものもあった。チューブ入り絵具の発明により、戸外で絵を描くことができ、印象派が生まれた。
  • 色には3つの側面がある:色相(色の種類)、彩度(鮮やかさ、色味の分量)、明度(明るさ)
  • 明暗はモノトーン・グレースケールでもわかる。近代以前は下絵の段階でモノトーンで陰影の配分を決め、その上に色を塗っていった。近代以降は最初から色を塗るアラプリマという描き方。
  • 明暗の配分の仕方は、フルスケール、白寄り(ハイキー)、黒寄り(ローキー)、三段階調と分けられる。
  • 鮮やかな色、濁った色があると同時に、陰影のつけ方で鮮やかさは変わってくる。繊細に調子を変えて溶けるような輪郭線とするダヴィンチのスフマート(煙)。陰影を極端にしたカラヴァッジョのテネブリズム(闇)。明るいところを白く抜いたり影の部分に違う色を使うカンジャンテ。影の部分に鮮やかな色を使って中間トーンを白い色にするラファエロのユニオーネ。
  • 複数の色(色相)をどうまとめるかは大きく3つの戦略がある:互いの個性が際立つ色(例:3原色)、似た者同士の色、互いに引き立てあう色(補色:青とオレンジ、黄と紫、赤と緑)
  • セザンヌは青、緑、オレンジを使う。
  • ラファエル前派は中世ゴシックの色遣いを意識している。北方ルネサンスにも細密描写と鮮やかな原色遣いが見られる。

(5) 絵の構造、構図と比例

  • 名画では、全てがあるべき場所に必然性を持って置かれているように感じる。
  • 画面の真ん中は大事なものを示す位置。
  • 画面の上下でシンプルに上下関係を表す。ムンク『叫び』の人物は意外なほど下にいる。
  • 必ずしも上下関係を表さないのは、風景画に見られる前景・中景・後景。
  • 西洋においては、右の方が序列が上。絵を見る側から言うと左側が偉い。
  • 構図には定石がある:『モナ・リザ』は胸より上、左右どちらかを 3/4 見せたポーズは肖像画の定石。風景画も、前景にスライド・インする要素を入れ、それを後景で右上がりか右下がりの斜線とつなげて、中計にメインを置く。
  • フォーカルポイントや構造線がどんな位置にあるか、十字線と対角線を引くとわかる。例えば、人物の目は十字線・対角線の上に置いてあることが多い。十字線と対角線は画面を2分割する。
  • 等間隔、相似形といった秩序を作るのにも十字線と対角線は役立つ。
  • 秩序と自然(様式と写実)は相反する。
  • 秩序を重視すると、リアルさを失い、逆に超自然的・シンボリックな表現に使える。これを様式化という。一方、自然を重視、見た通りの印象を重視すると写実的になる。
  • マスターパターンは 1/2 1/3 1/4 1/5… と等分割。十字線と対角線は 1/2 分割。
  • 先に補助線を考えるのではなく(恣意的に引くのではなく)、フォーカルポイントや構造線など大事な役割を持つものが、画面の中でどういう関係・位置にあるか探求する。
  • 等分割以外のマスターパターンは、長方形の中の正方形(ラバットメント)、直交、これを基にした長方形の入れ子。キャンバスがルート矩形と直交パターンは自然と連動する。
  • 黄金比による分割パターンもある。黄金長方形で直交パターンを作ると分割線がラバットメント・ラインと一致する。またルート5矩形の真ん中に正方形を配置すると、両サイドにそれぞれ黄金比の長方形が残る。

(6) 統一感

  • 絵の構造だけでなく、絵の表層も見る。また全体と細部の関係を見る。
  • 輪郭線はあるか?その有無は地域や時代によって変わる。例えば朦朧体、没骨(もっこつ)表現の評価。
  • 疎か密か?
  • 仕上げの質感の違い。荒い筆致は離れたところから見て効果があり、きめ細かい筆致は近くで見られることを意識している。
  • ティツィアーノの影響を受けたドラクロワは鮮やかな色・繊細な色調変化を、即興的なタッチで表現するカラリスト(色彩派)。すべすべの仕上げのアングルは形の描写を重視するデゼーニョ派(素描派)。16世紀にどちらが上かという論争が始まり、歴史的にはデゼーニョ派に軍配が上がる時期が長かった。その風潮へのアンチテーゼとして、印象派が出てきた。
  • 部分と全体の連動、同じ形のものがサイズを変えて反復される。
  • フォーカルポイント、主要ポイントが一列に並ぶ共線性。画面に秩序をもたらすと同時に、その線が重要だと知らせる。
  • 共線性を持つ線の傾きを揃えることで秩序をもたらす。その傾きを5つ前後に抑えることをガムットと呼ぶ。

庭園美術館にて、美しいキスリングの絵を楽しむ

実は東京都庭園美術館に行ったことがなかった。わりと現代美術系が多くて自分の興味を引く展覧会が少なかったからかもしれない。今回はエコール・ド・パリ(「パリ派」)の「キスリング展」ということで、初めて庭園美術館に出かけることとなった。

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本館

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新館

www.teien-art-museum.ne.jp

新緑の美しい庭園は、西洋庭園と日本庭園に分かれている。その森の中に庭園美術館のアイボリーホワイトの建物が映える。

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本館

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茶室「光華」

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ちょうど「ブラタモリ」の白金の回で、庭園美術館が紹介されたばかり。本館は朝香宮邸、吉田首相の時代に公邸として使われたこともある。洋館なのに狛犬がいるというのも面白い。

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本館 室内

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なぜか入口に狛犬がいる

アール・デコ様式の立派な部屋、漆喰の天井やルネ・ラリックのガラスの装飾、壁絵、家具を見ながら、展覧会を見て回る。キスリングの絵との距離が近い。その絵の具を盛り上げるタッチを至近距離で確認することができる。画面いっぱいに描かれた花の絵や、物憂げな表情を浮かべた人物画に惹かれる。一時期、セザンヌの画法に凝っていたとのことで、セザンヌを思わせる構成・色使いの静物画も面白かった。しかしその魅力は何といっても明るく美しい色使いだろう。あっという間に魅了されてしまった。思わず同じく美術館巡りをする友人に「キスリング展、7月7日までだよ」とメッセージを送ったら、「7月1日に行ってきました!建物も素晴らしいですね」とすぐに返ってきた。さすが、お目が高い。

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キスリング展 図録

ランチは目黒駅ビル、アトレにある TO THE HERBS にて。大きな窓から外を見渡せる。目黒駅でありながら、住所は品川区上大崎なんだよなー、と思いながらの一枚。

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TO THE HERBS から目黒駅を望む

www.teien-art-museum.ne.jp

ギネス認定の懸垂型モノレールに乗って千葉市動物公園へ。動くハシビロコウを初めて見る

会社記念日のため半ドン。午後はフリーである。「東芝時代の同僚が動物園の園長に転身した!」というので、今勤めている会社の社長が千葉市動物公園の「視察」を提案、何人かの仲間と一緒に、久しぶりに動物園に行くこととなった。千葉市動物公園は、かつて立ちあがるレッサーパンダ風太くん」で有名になった動物園である。

headlines.yahoo.co.jp

www.tv-tokyo.co.jp

芝公園・大門のオフィスから 1時間強、千葉駅で降りて千葉モノレール千葉都市モノレール)に乗り換える。千葉モノレールは、懸垂型モノレールとしては世界最長の営業キロ数を誇り、ギネス認定を受けているらしい。何だかかなり「痛い」ラッピングの車両に乗って、動物公園に向かう。

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モノレールの駅は動物公園に直結しており、新しい園長が出迎えてくれた。広大な緑の広がる公園の一角に動物園は作られている。平日でもあり、しかもあいにくの雨で、来園者は少なく、ほとんどわれわれだけが動物園にいるような感覚である。幸い、雨も上がり、傘を差さずに見て回ることができた。

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最初のモンキーゾーンは、どの猿も表情があって楽しい。フクロテナガザルはのど袋を膨らませて大きな鳴き声を上げながら、手すりのレールを運ていの要領で飛び回ったり、レールの上を歩いたり。そのスピードには驚かされた。チンパンジーは気になる人に向かって、土を掴んで投げてくる。ニシゴリラの雄のシルバーバックは本当に立派である。人の顔、性別がわかるらしく、気に入った飼育員がやって来ると嬉しそうだ。

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フクロテナガザル

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ニシゴリラ

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立派なシルバーバック

草原ゾーンにはゾウ、キリン、ライオン、ミーアキャット。チーターが走る動態展示場が 2020年オープンに向けて建築中であり、これができると集客力も高まるのではないだろうか?

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アジアゾウ

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アミメキリン

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ミーアキャット

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今回の白眉は、動かない鳥として知られるハシビロコウである。ハシビロコウは、餌の魚が来るのをじっと待ち、隙を見つけたら素早い動作で捕まえる。ちょうど屋外から室内へ戻って餌をもらう時間になったということで、魚を捕まえて飲み込むところを見ることができた。テレビで見たことのある狩りの瞬間だが、こんなにダイナミックに動くハシビロコウを、生で見るのは初めてである。

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ハシビロコウ


動くハシビロコウ

千葉市動物公園には興味深い「コンテンツ」がたくさんある。園長によると、家族連れだけでなく、より幅広い層が動物園を楽しんでもらえるようにしていきたいとのこと。この広大な敷地を数10人の職員(うち飼育員は10数人)で運営している。予算が限られている苦労が偲ばれる。民間企業出身の園長による動物園経営は、新たな一歩を踏み出している。

www.city.chiba.jp

chiba-monorail.co.jp

エントランスが美しい根津美術館、「はじめての古美術鑑賞」展を観る

根津美術館の「はじめての古美術鑑賞」展を観る。今年で4回目の企画ということだが、僕が行くのは2回目になるだろうか。今回は水墨画を中心に、そこに描かれているテーマが何かを扱っている。日本古来の物語、中国故事の人物など、その絵を理解するために必要な知識が、キャプションにて詳しく解説されている。今回の展示については、「和楽」に詳しい紹介記事が掲載されている。

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それにしても根津美術館のエントランスはいつ来ても美しい。

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時間がある時は、庭園を散歩すると楽しいし、NEZU CAFE での食事も美味しい。

www.nezu-muse.or.jp

intojapanwaraku.com

出光美術館がジョー・プライス氏のコレクションを購入!

出光美術館がジョー・プライス氏の江戸絵画コレクションの一部を購入するというビッグ・ニュースが入ってきた!

bijutsutecho.com

r.nikkei.com

www.sankei.com

ジョー・プライスは、かつての日本では評価されていなかった伊藤若冲を発掘した人だ。建築家フランク・ロイド・ライトとともに訪れたニューヨークで、若冲の『葡萄図』と衝撃的な出合いを果たし、その後、若冲をはじめとする江戸絵画の世界的なコレクターになった。

若冲になったアメリカ人 ジョー・D・プライス物語

若冲になったアメリカ人 ジョー・D・プライス物語

出光美術館と言えば、昭和の香り漂う古いビルの一角にあり、照明を落とした展示室が印象的である。日本の書画や中国の陶芸品がメインだが、ここにジョー・プライスの江戸絵画コレクション、約 190点が加わる。伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」や円山応挙の屏風絵、酒井抱一の花鳥図も含まれており、来年に展示するとのこと。とても楽しみである。

数年前(2017年3月)、NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」で、クリスティーズの敏腕オークション・スペシャリスト山口桂氏を取り上げた時に、ジョー・プライス・悦子夫妻と、そのコレクションの一部を日本に買い戻す話を進めていると言っていたが、「その時の話がこれだったんだー」と、納得です。

www.nhk.or.jp

若冲原寸美術館 100%Jakuchu! (100% ART MUSEUM)

若冲原寸美術館 100%Jakuchu! (100% ART MUSEUM)

東京都美術館「クリムト展 ウィーンと日本 1900」で、クリムトの美しい絵を堪能する

週末の金曜日。会社帰りに「クリムト展 ウィーンと日本 1900」東京都美術館)に行く。平日にもかかわらず、チケットを買って入場するまで20分もかかるくらい並んでいた(チケット待ちで並んでいる間にオンライン・チケットを買えばよかった)。会場内も混んでいて、絵のすぐ前まで行くのには並んで時間がかかるので、主に2列目からの鑑賞となり、忘れずに持って行った単眼鏡が活躍した。とはいえ、図録の表紙にもなっている『ユディト I』のような作品を観る時は、一番前まで行って、そのタッチをじっくり眺めてきた。

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切り落とした敵将の首を恍惚の表情で持つ未亡人ユディト。『ユディト I』は金を使った装飾性の高い絵である。そして絵だけでなく、額縁にも要注目である。『ユディト I』の額縁は、クリムト自身がデザインして、弟が製作した。

日本美術やビザンチン美術に影響を受けて、クリムトが金を使うようになったのは、『ユディト I』が初めてだと言う。濃淡・陰影をつけられない金を使うと、平面的な絵になる。西岡文彦『簡単すぎる名画鑑賞術』によると、立体的な絵は「どう見えるか」を描き、より写実的になるのに対し、平面的な絵は「どうなっているか」を描く。この平面性・装飾性がクリムトの特徴である。これも日本美術の影響かもしれない。クリムトが収集していた日本美術の中に、小原古邨の金魚の版画を見つけた時はちょっと嬉しかった。小原古邨の肉筆と見紛うほどの繊細な版画は、日本よりもむしろ海外で評価されていたのである。

『女の三世代』『ヌーダ・ヴェリタス 裸の真実』も必見。クリムトは生涯結婚しなかったが、14人の子供がいた。自分の近くにいた女性を数多く描いている。そして芸術家仲間と分離派を設立、その会館の壁画『ベートーヴェン・フリーズ』の原寸大の複製展示も、迫力満点である。第九交響曲をモチーフに製作されている。

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国立新美術館で開催されていた「ウィーン・モダン クリムト、シーレ、世紀末への道」展、そして千足伸行『もっと知りたい世紀末ウィーンの美術』を読んでおいたことが、クリムトやシーレ、マーラーの生きた19世紀末のウィーンという歴史的な背景を予習するいい機会になった。

簡単すぎる名画鑑賞術 (ちくま文庫)

簡単すぎる名画鑑賞術 (ちくま文庫)

また事前に西岡文彦『簡単すぎる名画鑑賞術』で、クリムトの絵の見るべきポイントを確認しておいたこともよかった。実をいうと、こんな予習をしないで、虚心坦懐に、新鮮な気持ちで絵画に向かう方がいいのかもしれない。まずは感じる。そのうえで知識を使って見る。考える。右脳と左脳で絵画を楽しむことは、サントリー美術館「information or inspiration?」展が教えてくれた。さまざまな展覧会に行ったこと、美術の本を読んでいることが、少しづつ有機的につながっていくようで楽しい。

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