Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

東京都美術館「クリムト展 ウィーンと日本 1900」で、クリムトの美しい絵を堪能する

週末の金曜日。会社帰りに「クリムト展 ウィーンと日本 1900」東京都美術館)に行く。平日にもかかわらず、チケットを買って入場するまで20分もかかるくらい並んでいた(チケット待ちで並んでいる間にオンライン・チケットを買えばよかった)。会場内も混んでいて、絵のすぐ前まで行くのには並んで時間がかかるので、主に2列目からの鑑賞となり、忘れずに持って行った単眼鏡が活躍した。とはいえ、図録の表紙にもなっている『ユディト I』のような作品を観る時は、一番前まで行って、そのタッチをじっくり眺めてきた。

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切り落とした敵将の首を恍惚の表情で持つ未亡人ユディト。『ユディト I』は金を使った装飾性の高い絵である。そして絵だけでなく、額縁にも要注目である。『ユディト I』の額縁は、クリムト自身がデザインして、弟が製作した。

日本美術やビザンチン美術に影響を受けて、クリムトが金を使うようになったのは、『ユディト I』が初めてだと言う。濃淡・陰影をつけられない金を使うと、平面的な絵になる。西岡文彦『簡単すぎる名画鑑賞術』によると、立体的な絵は「どう見えるか」を描き、より写実的になるのに対し、平面的な絵は「どうなっているか」を描く。この平面性・装飾性がクリムトの特徴である。これも日本美術の影響かもしれない。クリムトが収集していた日本美術の中に、小原古邨の金魚の版画を見つけた時はちょっと嬉しかった。小原古邨の肉筆と見紛うほどの繊細な版画は、日本よりもむしろ海外で評価されていたのである。

『女の三世代』『ヌーダ・ヴェリタス 裸の真実』も必見。クリムトは生涯結婚しなかったが、14人の子供がいた。自分の近くにいた女性を数多く描いている。そして芸術家仲間と分離派を設立、その会館の壁画『ベートーヴェン・フリーズ』の原寸大の複製展示も、迫力満点である。第九交響曲をモチーフに製作されている。

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国立新美術館で開催されていた「ウィーン・モダン クリムト、シーレ、世紀末への道」展、そして千足伸行『もっと知りたい世紀末ウィーンの美術』を読んでおいたことが、クリムトやシーレ、マーラーの生きた19世紀末のウィーンという歴史的な背景を予習するいい機会になった。

簡単すぎる名画鑑賞術 (ちくま文庫)

簡単すぎる名画鑑賞術 (ちくま文庫)

また事前に西岡文彦『簡単すぎる名画鑑賞術』で、クリムトの絵の見るべきポイントを確認しておいたこともよかった。実をいうと、こんな予習をしないで、虚心坦懐に、新鮮な気持ちで絵画に向かう方がいいのかもしれない。まずは感じる。そのうえで知識を使って見る。考える。右脳と左脳で絵画を楽しむことは、サントリー美術館「information or inspiration?」展が教えてくれた。さまざまな展覧会に行ったこと、美術の本を読んでいることが、少しづつ有機的につながっていくようで楽しい。

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