元ソフトウェア技術者としては、どんなソフトウェアを使って、このシステムが作られているのかが気になる。レヴォーグの 700ページもの電子マニュアルを拾い読みしていると、オープンソース・ソフトウェアのライセンスの項があるのに気づく。そこには、このシステムで使われているオープンソース・ソフトウェアの使用許諾や著作権を確認できる、デンソーの Web サイトへのリンクがある。そう、このシステムはデンソーが開発しているのである。
まず一番最初に出てくるのが何と Linus Tovalds。言わずと知れた Linux の開発者の名前である。Linuxカーネルの vmlinux を圧縮した bzImage ファイルの使用許諾が GPL(Gnu General Public License)であると記述されている。そして Linux 関連のソフトウェアのソースコードとして、ログを取得して管理する dlt-daemon や、Linux の無線 LAN インタフェースのファイルがリンクされている。
この dlt-daemon は、Diagnostic Log and Trace(診断ログとトレース)の略で、欧州の車載ソフトウェアの標準化団体 AUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)で仕様が定められた ECU のログ管理プラットフォームであり、GENIVI Alliance という標準化団体が Linux での実装を行っている。
オープンソース・ソフトウェアのライセンスや著作権の記述を眺めていると、GPL、Apache、Mozilla、BSD など、さまざまな条件のソフトウェアが混在していることがわかる。なかには X コンソーシアム(Unix 上の X ウィンドウシステム)の 1987年の Copyright が含まれており、思わず懐かしさを感じてしまった。Linux が作られたのが1991年。僕が Linux や X ウィンドウ、Gnu のソフトウェアをノート PC で動かし始めたのが 1993年頃だ。Linux のバージョンは 0.99 だったと記憶する。オープンソース・ソフトウェアコミュニティーの 30年以上にわたる開発の蓄積が、新型レヴォーグの車載インフォテインメントの実現に、脈々とつながっているのである。