Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」(サントリー美術館)

3連休の初日は、サントリー美術館出光美術館を訪れる。

サントリー美術館で開催されているのは「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」である。

www.suntory.co.jp

展覧会のサイト・チラシから概要を引用する:

有楽斎(うらくさい)こと織田長益は天文16年(1547)に織田信秀の子、織田信長の弟として生まれました。武将として活躍し、晩年には京都・建仁寺塔頭「正伝院」を再興、隠棲します。正伝院内に有楽斎が建てた茶室「如庵」は国宝に指定され、現在は愛知県犬山市の有楽苑内にあり、各地に如庵の写しが造られています。正伝院は明治時代に「正伝永源院」と寺名を改め、いまに至るまで有楽斎ゆかりの貴重な文化財を伝えています。

しかし茶人・有楽斎として名高い一方、武士・長益には悲観的なイメージも伴います。天正10年(1582)に起きた本能寺の変では、二条御所に籠る長益の主君・信忠(信長の長男)が自害したにもかかわらず、長益は御所を脱出したことから、京の人々には「逃げた(男)」と揶揄されました。さらにその後、信雄(信長の次男)に仕え、徳川家康豊臣秀吉の講和を調整するなど存在感を示したものの、信雄が改易されると今度は秀吉の御伽衆に加わります。関ヶ原の戦いでは東軍として参戦し、戦後も豊臣家に仕えましたが、大坂夏の陣の前には家康の許可を得て主君から離れました。

信長、秀吉、家康の三天下人に仕えて時流を乗り切り、晩年を京で過ごした織田有楽斎の心中には、どのような思いがあったのでしょうか。本展覧会は、2021年に400年遠忌を迎えた織田有楽斎という人物を、いま一度総合的に捉えなおそうと構成したものです。

以下も Webサイトからの引用になるが、大名でもあり茶人でもあった有楽斎は、人と人の間に立って調整・調停をする能力に長けた人だったのではないかと想像される。

本能寺の変の後、長益は豊臣秀吉に仕え、摂津国島下郡味舌(現在の大阪府摂津市内)に二千石の知行を与えられました。 秀吉の没後は徳川家康との関わりを深くし、関ヶ原の戦いでは石田三成の軍勢と戦をまじえて戦功をあげ、本領を安堵されただけでなく大和国山辺郡(現在の奈良県山辺郡)に知行地を与えられました。その後、大坂城に入り淀殿の叔父として淀殿・秀頼母子を補佐しましたが、常に徳川方へ配慮し、冬の陣においては豊臣・徳川の間で和議を結ぶよう説得しました。

戦国時代から江戸時代にかけての激動の時代、長益は有能な大名としての地歩を固めていきますが、夏の陣を前に京都・二条へ移り、また建仁寺塔頭・正伝院を再興し、ここを隠棲の地とします。もともと長益は利休も一目を置く茶人であり、法躰となり有楽斎と号した後も茶の湯に執心し、高僧や、古田織部、細川三斎、伊達政宗などの武将と結びながら茶会を開いていきます。これらの活動を示す書状はいまも正伝永源院に多く残り、茶人としての姿をよく示しています。本章では、有楽斎が残したこれらの書状を用いて、茶人としての彼の姿に光を当てます。

愛知県犬山市の有楽苑に移築されている国宝の茶室「如庵」および重要文化財の「書院」の3次元計測データを、ジオラマのように立体化して表示する展示が面白かった。ソニーの「空間再現ディスプレイ」の技術である。

ゲーム機のコントローラで、さまざまな角度から茶室の様子を見ることができ、とても面白い。

www.sony.jp

観梅(2024)

今年は暖かく、梅が早く咲き始めているようだ。リモートワークの休憩がてら、近所の公園に出かけてみた。

なるほど。もちろん満開ではないし、しだれ梅は蕾の状態だが、「梅祭り」の時には、見ごろを過ぎているかもしれない。

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Apple Music Classical 楽しい!

Apple Music Classical がリリースされて、1週間。

Apple Music Classical

Apple Music Classical

  • Apple
  • ミュージック
  • 無料
apps.apple.com

プレスリリースでは以下の機能が謳われている:

  • 世界最大級のクラシック音楽のカタログを誇り、最新リリースから著名な名作まで、500万以上の楽曲がそろっています。
  • 作曲家、作品名、指揮者、楽器、時代、オーケストラや合唱団で検索して、特定のレコーディングをすぐに見つけることができます。 クラシック音楽のためにデザインされたインターフェイスと、完全で正確なメタデータにより、ユーザーはどの作品の誰の演奏なのかを知ることができます。
  • 最高のオーディオ品質(最大192kHz/24ビットのハイレゾロスレス)、また数千ものレコーディングを臨場感あふれる空間オーディオで提供します。
  • 数千にも及ぶレコーディングを限定配信します。
  • 洞察に満ちた作曲家のバイオグラフィや何千もの主要作品の解説を含む、何千もの文章を用意しています。

www.apple.com

広大なクラシックの森の中を気ままに散歩して、いろんな発見をする感じで、楽しく遊んでいる。

Apple Music Classical で「英雄」ポロネーズを聴く

今日は、ショパンの「英雄」ポロネーズを、若手・中堅・巨匠・レジェンドと、さまざまなピアニストの演奏で聴き比べてみた。Apple Music Classical 専用に配信されている藤田真央そ最初に聴いたのをきっかけに、ポリーニアシュケナージキーシン、ラン・ラン、ダン・タイ・ソンなど、果てはホロヴィッツまで。

音の粒立ち、鳴らし方、響かせ方、ペダリングのコントロール、テンポ・リズムを変えてのグルーヴ感…。勇壮なものもあれば、美しさを強調する演奏もあり、同じ曲でも解釈が全然違うのを、改めて実感した。「英雄」ポロネーズという独特のリズム・構成の曲だからこそ、さまざまな演奏があり得るのかもしれない。

Apple Music Classical 独自プレイリストの中にも面白いものがある。演奏家(アーティスト)がセレクトした曲集はもちろんのこと、たとえば「サントリーホール定期演奏会を開く日本のオーケストラのライブ録音集」なんてのもある。「ワークス(The Works)」は、最新アルバムからのセレクション。きっと新たな出会いがあるに違いない。

Apple Music Classical で唯一気になっているのは、Apple Music(音楽アプリ)のライブラリとの同期が不完全なこと。新しいものは問題ないのだが、古いライブラリの一部が Classical に同期されていない。CD から取り込んだアルバムの多くが同期されていない気がする。まぁ、ふだん使う分には支障がない。ちょっと気持ちが悪いというだけである。

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川瀬巴水、吉田博、小原古邨…。好きな画家が勢揃いした「新版画の沁みる風景 ―川瀬巴水から笠松紫浪まで」展(川崎浮世絵ギャラリー)

会社帰りに寄り道して、川崎駅近くの川崎浮世絵ギャラリーで開催されている展覧会「新版画の沁みる風景 ―川瀬巴水から笠松紫浪まで」を観る。

大正から昭和にかけての「新版画」90点あまりが展示されている。大好きな川瀬巴水吉田博の風景画や、小原古邨花鳥画を、20-30cm まで顔を近づけて、じっくり観る。もともと浮世絵は手に取って楽しむものだから、それと同じ距離感で見られるのが嬉しい。

摺りの状態も素晴らしいものばかり。たとえば川瀬巴水の光と水、雪の表現を間近に眺めることができる。絵具を乗せずに版木で紙に凹凸をつけた「空摺り」による立体感も、よくわかる。

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最初期の高橋松亭の版画が 1909年頃。ということは、欧州ではキュビスムという実験が始まっていたころである。

その後、川瀬巴水を筆頭に、笠松紫浪、土屋光逸、石渡江逸(川瀬巴水の弟子、地元・横浜の風景版画が多い)と継承されていった日本の新版画は、絵画という芸術性というだけでなく「工芸的な側面もあるなぁ」と思う。木版画という表現法の中で、どれだけ写実性を高めるか。そしてそこに日本らしい抒情性が表現されるのか。そんなことを考えていた。

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川﨑浮世絵ギャラリー入口

それにしても、川﨑駅のすぐ近くにこんな浮世絵ギャラリーがあったとは知らなかった。このビルの高層階の飲食店には何度も行ったことがあるのに。

「斎藤文雄コレクション」と名づけられているが、もともと政治家であり浮世絵コレクターであった斎藤文雄氏が、自宅を改造して私立の美術館として開館していた。高齢のため閉館。その後、コレクションを川崎市に無償貸与することで、今の形になっているらしい。

ukiyo-e.gallery www.townnews.co.jp

西方寺の蝋梅が見ごろを迎えている

ゴルフ練習場のすぐ近くに、花の寺・西方寺があり、蝋梅が見ごろを迎えている。ゴルフスクールを終え、バンカー練習場が空くのを待つ 30分の間に行ってみた。

saihouji-yokohama.com

花手水も美しい。

西方寺の花たち

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やっと長谷川等伯《松林図屏風》に会えた(東京国立博物館)

本阿弥光悦中尊寺金色堂の特別展を見た後は、トーハクの常設展へ。

国宝室にて、ようやく長谷川等伯《松林図屏風》に会うことができた。2022年の「国宝 東京国立博物館のすべて」の時には、展示替えで見ることができなかったのだ。

長谷川等伯《松林図屏風》(安土桃山時代、16世紀)

さまざまな筆を使って、迷いなく一気に描いている。墨のグラデーションによって、光の強弱を表わして、霧に包まれた松林を生み出している。

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すべてが国宝!美しい仏像に間近で会える 建立900年 特別展「中尊寺金色堂」(東京国立博物館)

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」を見た後、早めの昼食を取り、建立900年 特別展「中尊寺金色堂」に向かう。11:30 過ぎ。2時間前より若干行列は短くなっており、10数分並んで展覧会場に入ることができた。当然、中はかなりの混雑である。

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奥州藤原氏、清衡が 900年前に建立した中尊寺金色堂は、極楽浄土を表わしている。金堂内には3つの須弥壇が設けられており、中央壇内部の棺に眠っているとされるのは、藤原清衡。この中央壇に安置される国宝の仏像 11体すべてを展示している。

京の一流仏師によるものと思われる像は、どれも端正で美しい。それを間近に見られる機会は、もうないかもしれない。

金色堂の装飾する華鬘(けまん)、金銀の泥字で一行おきに記された中尊寺教。これらもすべて国宝となっている。

8K の 3次元CG による金堂およびその内部の映像は、幅 7m の大型スクリーンにより原寸大で表示される。貴重な文化財の記録により、まるでそこに行ったかのような体験ができる。

縮尺 1/5 の金色堂模型のみが、写真撮影可能となっていた。昭和の大修理の際に得られたデータに基づいて製作されている。

本阿弥光悦よりも、こちらの展覧会が人気があるのもむべなるかな。