会社帰りに寄り道して、川崎駅近くの川崎浮世絵ギャラリーで開催されている展覧会「新版画の沁みる風景 ―川瀬巴水から笠松紫浪まで」を観る。
大正から昭和にかけての「新版画」90点あまりが展示されている。大好きな川瀬巴水、吉田博の風景画や、小原古邨の花鳥画を、20-30cm まで顔を近づけて、じっくり観る。もともと浮世絵は手に取って楽しむものだから、それと同じ距離感で見られるのが嬉しい。
摺りの状態も素晴らしいものばかり。たとえば川瀬巴水の光と水、雪の表現を間近に眺めることができる。絵具を乗せずに版木で紙に凹凸をつけた「空摺り」による立体感も、よくわかる。
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最初期の高橋松亭の版画が 1909年頃。ということは、欧州ではキュビスムという実験が始まっていたころである。
その後、川瀬巴水を筆頭に、笠松紫浪、土屋光逸、石渡江逸(川瀬巴水の弟子、地元・横浜の風景版画が多い)と継承されていった日本の新版画は、絵画という芸術性というだけでなく「工芸的な側面もあるなぁ」と思う。木版画という表現法の中で、どれだけ写実性を高めるか。そしてそこに日本らしい抒情性が表現されるのか。そんなことを考えていた。
それにしても、川﨑駅のすぐ近くにこんな浮世絵ギャラリーがあったとは知らなかった。このビルの高層階の飲食店には何度も行ったことがあるのに。
「斎藤文雄コレクション」と名づけられているが、もともと政治家であり浮世絵コレクターであった斎藤文雄氏が、自宅を改造して私立の美術館として開館していた。高齢のため閉館。その後、コレクションを川崎市に無償貸与することで、今の形になっているらしい。