Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

早朝の初詣

例年、車で両親を訪ねる途中で、等々力不動尊に寄る、というのが、初詣のパターンだったが、近年三が日は駐車場が閉鎖されている。

そこで昨年から初詣は、散歩も兼ねて、早朝に師岡熊野神社に参拝するようにしている。今年は創建 1300年ということらしい。

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今年は行く時間が早過ぎて、境内をほぼ独り占め状態。ゆっくり参拝できる反面、御守や破魔矢をもらうことはできなかった。8時以降とのこと。ちょっと残念。また改めて訪れることにしよう。

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師岡熊野神社の由来については、以前書いた記事が参考になるかもしれない。

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あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

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昨年末に無事、還暦を迎えました。大きな病気・怪我もなく、ありがたいことです。

オンラインによるリモートワークが続いています。オフィスに出社するのは、週に1回くらいでしょうか。

セカンドライフ、セカンドキャリアを考えなければならないと思いつつ、目前の忙しさにかまけて、そのままにしてきました。任期を延長する形で、子会社の経営に携わっていますが、早く後進の育成をして、会社が成長していく基盤をかためていかなければなりません。

大学の同級生たちとのオンライン忘年会でも、多くの人が 1年づつ契約を更新しながら、仕事を継続していく立場になりつつあるようです。「65歳まではフルタイムで働きたい」「さっさと仕事を辞めて、限られた人生、好きなことをしたい」「自分の経験を活かして、よりローカルなコミュニティーに貢献したい」さまざまな意見がありました。そして既にその思いを実践し始めている人もいます。

それに対して自分は…。趣味のゴルフの方は、目標もやることも明確なのですが、それ以外についてはからっきしです。

美術鑑賞もぼちぼちと続けています。コロナ禍のため西洋美術を観る機会は減っていますが、浮世絵をはじめとする日本画を楽しんでいます。吉田博、川瀬巴水といった美しい風景版画の展覧会には、必ず足を運びました。そして渡辺省亭の回顧展は本当に素晴らしく、ひとめで心を奪われてしまいました。サントリー美術館山種美術館にも何度も訪れています。

息子たちは二人とも独立して、それぞれ一人暮らしを始めました。彼らにはどういう未来が待ち受けているのか。成長を見守りたいと思います。

高齢の両親も何とか息災にしています。コロナが少し落ち着いて、施設に入っている母を、短時間ながらも見舞うこともできるようになりました。

皆さまもおからだに気をつけて、お過ごしください。

本年もよろしくお願いいたします。

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定番の美術館巡り:サントリー美術館から山種美術館へ

休日の定番の美術館巡りのコースは、サントリー美術館から山種美術館を訪れるものである。

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今日もサントリー美術館千四百年御聖忌記念特別展「聖徳太子 日出づる処の天子」を観た後に、東京ミッドタウンで早めのランチ。

www.suntory.co.jp

そして山種美術館の「奥村土牛」展を訪ねた。

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奥村土牛《兎》

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弦楽器のアンサンブルを聴く

何年ぶりだろう?久しぶりにライブ演奏を聴く機会を得た。と言っても、市民講座の一環で開催されたミニコンサートだが。場所はサンピアンかわさきのホール。東京交響楽団のメンバーによる弦楽のアンサンブル。

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フルオーケストラで聴くよりも、弦楽器それぞれの旋律を聴き分けることができる。通常は弦楽四重奏で、1st、2nd ヴァイオリンとヴィオラ、チェロという構成が多いと思うが、今回のプログラムで特徴的だったのはコントラバスを加えていることだった。しかも主旋律を低音で支えるだけでなく、ロッシーニによる「チェロとコントラバスのための二重奏曲」が組まれ、主旋律を奏でるコントラバスの音と奏者のテクニックを間近に楽しむことができた。

市民講座で弦楽器の特徴がわかり易いプログラムが組まれていたと思う。アシスタント・コンサートマスターの田尻順さんの解説付き。

市民講座に来てくれた奏者は下記の通り:

帰りは横浜そごうまで足を延ばす。還暦となる誕生日に向けて、何かよい服はないか見て回る。にき亭にて食事。

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「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」展:渡邊木版美術舗の鮮やかな摺り、スティーヴ・ジョブズの審美眼を堪能する(SOMPO美術館)

今年になって何度、川瀬巴水の展覧会を訪れたことだろう。4月の平塚市美術館6月の府中市美術館、そして町田市立国際版画美術館を前(8月)後期(9月)。 その最後を飾るのは SOMPO美術館で開催されている「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」展である。

f:id:muranaga:20211123133430j:plain www.sompo-museum.org


www.youtube.com

川瀬巴水と共に「新版画」を立ち上げた渡邊庄三郎の渡邊木版美術画舗所蔵の作品群ということもあり、鮮やかな摺りの 279 点を堪能することができる。

ダイアナ妃が吉田博木版画を愛したように、スティーヴ・ジョブズ川瀬巴水の新版画を愛した。今回の回顧展では、彼が集めていた巴水("Hasui" と呼んでいたらしい)の作品の一部が展示されており、その審美眼を確認することになる。そして富士山が日本の風景の象徴的な存在であること…。

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《山中湖の暁》1931年

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《吉田の雪晴》1944年

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《越ヶ谷の雪》1935年

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《薩摩峠の冨士》1935年

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《舟津之冨士》1936年

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西伊豆木負》1937年

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《冨士之雪晴(忍野附近)》1952年

ジョブズ1984年、初めて Macintosh を発表した時に、その最初の画面に表示したのが、新版画・橋口五葉の《髪梳ける女》であった。吉田博よりも川瀬巴水が好きだと話したエピソードも残っている。

川瀬巴水の描く風景画は雪景色が多い。また夜の光に照らし出される水面が美しい。日本らしい抒情的な風景が、海外の人の心にも響いたのだと思う。

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《神戸長田神社八雲橋》『日本風景画集 II 関西篇』1934年

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高野山鐘楼》『日本風景画集 II 関西篇』1935年

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二見ヶ浦》『日本風景画集 II 関西篇』1933年

増上寺は、巴水の生まれ育った付近で、いくどもモチーフとして取り上げられている。《増上寺之雪》は、文部省文化財保護委員会が伝統的な浮世絵技法を残すために依頼されて作られた。スケッチの段階から版画が完成するまでの工程が記録されている。1953年当時、芝増上寺の前には都電の停留場があり、電車を待つ3人の人物のモデルは、巴水本人と妻の梅代、養女の文子であるという。

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増上寺之雪》1953年

僕のオフィスは、増上寺のすぐ近くなので、同じ角度から 2021年の三解脱門を撮影してみた。

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2021年11月25日 出勤途中に撮影

1957年11月、川瀬巴水胃がんのため74歳で没した。絶筆となる《平泉金色堂》の制作途中であり、病気と闘いながら試行錯誤を繰り返していた様子が、日記に記されているそうだ。盟友・渡邊庄三郎によって仕上げられ、百箇日の法要の際に親戚や知人にのみ配られたという。

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《平泉金色堂》1957年

《野火止平林寺》は約30回摺りを重ねているが、最初の黒摺から完成品まで 10回に分けて制作した「木版畫順序摺」がある。木版画の制作工程の一端を知ることのできる資料となっている。

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《野火止平林寺》木版畫順序摺

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《野火止平林寺》木版畫順序摺

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《野火止平林寺》木版畫順序摺

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《野火止平林寺》木版畫順序摺

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《野火止平林寺》1952年

今回の展覧会は図録も素晴らしい。全 279 点、260ページ、2,800円。主要な作品が大判で印刷されている。川瀬巴水の作品集をいくつも持っているが、その中でも出色である。迷わず購入した。図録も含めて、今年最後の「川瀬巴水」展は本当に満足のいくものだった。

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図録『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』

最後に SOMPO 美術館に来たら「お約束」と言ってもいいだろう。ゴッホ《ひまわり》である。

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ゴッホ《ひまわり》1888年12月

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1年ぶりのアーティゾン美術館:コレクション展「印象派ー画家たちの友情物語」「特集コーナー展示 挿絵本にみる20世紀フランスとワイン」

森村泰昌の「M式『海の幸』」で頭を揺さぶられた後は、心穏やかにアーティゾン美術館の石橋財団コレクションを楽しむ。テーマは「印象派ー画家たちの友情物語」

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www.artizon.museum

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にしうら染(漫画家)による「印象派家相関図」

漫画家のにしうら染が描く「印象派画家相関図」がわかり易い。交遊関係を踏まえて、影響を与え合った画家たちの作品が並べられている。展覧会の解説パネルの内容を簡単に紹介していく。

セザンヌピサロを通して、モネやルノワールと言った印象派の画家たちと交流。ピサロセザンヌにとって師であり、父のように慕う大切な友人であったと言う。

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セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》(1904-06年頃)

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ピサロ《ブージヴァルのセーヌ川》(1870年)

1874年のサロンに入選したメアリー・カサットの絵を見たドガは、それを称賛し、印象派への参加を勧めた。二人の友情は生涯続いたが、ドガの死後、カサットはドガからの手紙をすべて燃やしてしまったため、二人の会話は知ることができない。

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カサット《日光浴(浴後)》(1901年)

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カサット《娘に読み聞かせるオーガスタ》(1910年)

カイユボットはルノワールの誘いを受けて、第2回印象派展に参加した。カイユボットは画家として作品を制作する一方で、印象派の仲間たちの作品を購入して、彼らの生活を支えた。1894年にカイユボットは 45歳で亡くなるが、遺言執行人としてルノワールが尽力、美術局長官らと2年にわたる交渉の末、カイユボットのコレクションを国家に寄贈する遺志を果たすことができた。

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カイユボット《ピアノを弾く若い男》(1876年)

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ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》(1876年)

モネとシスレー1860年代にパリのシャルル・グレールの画塾で出会った。二人は一緒に郊外に出かけて戸外で制作し、共に風景画家として活動した。シニャック1880年、16歳の時にモネの個展に感銘を受け、画家になる決心をする。その4年後、全く面識のないモネに、シニャックは手紙を送り、アドバイスを求める。モネは23歳年下のシニャックに会う機会を設けた。

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モネ《睡蓮の池》(1907年)

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モネ《黄昏、ヴェネツィア》(1908年頃)

因みに杉全美帆子『イラストで読む 印象派の画家たち』は、印象派の画家がどんな人たちだったのか、その人物像・交流関係のエピソードをイラストを交えてユーモラスにわかり易く紹介する本である。情報量が多くて読みごたえがある。

印象派ー画家たちの友情物語」の後は「特集コーナー展示 挿絵本にみる20世紀フランスとワイン」の部屋へ。

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昨年来た時はアーティゾン美術館の瀟洒な作り、所蔵する多くの名作群に圧倒されたが、その印象は1年経っても変わらない。現代美術家のコラボ企画と言い、常設コレクションと言い、その充実した展示を前に、満足の再訪となった。1年に1回くらいの頻度で常設コレクションに会いに来るのもいいかもしれない。

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