Muranaga's View

読書、美術鑑賞、ときにビジネスの日々

新しく建築された SOMPO美術館、その「開館記念展」に行く

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展ゴッホの《ひまわり》を見たせいでもあるだろう、新しく建築された SOMPO美術館に行って、その所蔵する《ひまわり》と比較してみたくなった。久しぶりに新宿の高層ビル街に出かける。

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SOMPO美術館は、損保ジャパン本社ビルの横に建てられたユニークな形状の建物である。

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「SOMPO美術館開館記念展」では、所蔵する多くの名品が展示されている。その一つが、ゴッホの《ひまわり》である。

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SOMPO美術館開館記念展

ゴッホの《ひまわり》は 1888年8月から 1889年1月にかけて、7つの連作となっている。ゴッホが夢見た芸術家の共同体、「黄色い家」にゴーガンを迎え入れる際に部屋を飾るために、ひまわりを描き始めた。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの《ひまわり》は夏、8月に描かれたもの。そして SOMPO美術館の《ひまわり》は、12月にその絵を自身の手で模写・再制作したものである。10月にゴーガンが到着、12月には決別しているが、その短い共同生活期間の間に描かれた一点が、SOMPO美術館の《ひまわり》ということになる。

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「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」図録より

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ゴッホ《ひまわり》(1888年12月)

黄色のみで構成されていたロンドン・ナショナル・ギャラリーの作品と比べると、厚塗りになり、また色調もオレンジを配して全体的に整えられている印象を受ける。

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ゴーガン《アリスカンの並木道、アルル》(1888年

ゴーガンの《アリスカンの並木道、アルル》は、ゴッホとの短い共同生活を始めてすぐの頃に描かれた作品である。アリスカンは、アルルにある古代ローマ遺跡であり、石棺が描かれている。

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セザンヌりんごとナプキン》(1879-80年)

セザンヌの《りんごとナプキン》は、その構成と色使いの点で好きな作品である。多視点から見たイメージを一つの絵の中に再構成するセザンヌの絵の中では、視点が固定されていて「安定している」気がする。ただセザンヌの絵は、いろいろな角度から見る方が面白い。たとえばこの絵も、正面から見た時と比べて、右斜めから見た時、左斜めから見た時の方が奥行き感が増すような気がする。右斜めから見ると、りんごの後ろのナプキンがある。左斜めから見ると、光が当たってできるりんごの影が右上に伸びている。そうした構成により、斜めから見た時の方が奥行き感が増している印象を受ける気がする。

新装なったSOMPO美術館だが、今まではワンフロアを広く使っていたが、新しい建物では複数の階に分かれて見て回ることになる。一つの階もこじんまりとしていて、以前に比べるとスペース的には減っているような気がする。その代わり、入り口やミュージアムショップのある1階は、開放感に溢れている。

帰途、東急本店に寄って麻布茶房でランチ。

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www.sompo-museum.org

イギリスの珠玉の美を堪能する「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(国立西洋美術館)

心待ちにしていた「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を観るために、国立西洋美術館に出かける。ロンドン・ナショナル・ギャラリー 200年の歴史の中で初めて、館外での大規模な所蔵作品展であり、珠玉の作品 61点すべてが日本初公開である。

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「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(国立西洋美術館

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artexhibition.jp

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入場の時間指定がされているため、混みあうことがなく、じっくりと観て回ることができる。7つの章構成に分かれ、西洋美術の歴史を辿っていけるようになっている。各章から一つづつ作品を取り上げて、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの学芸部長が解説している動画があり、よい予習になる。


ロンドン・ナショナル・ギャラリー展:オンライン・ガイドツアー

第1章 イタリア・ルネサンス絵画では、クリヴェッリ《聖エミディウスを伴う受胎告知》が印象に残っている。遠近法で描かれた当時のイタリアの町を舞台に、聖書に伝わる受胎告知の物語が表現されている。

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カルロ・クリヴェッリ《聖エミディウスを伴う受胎告知》(1486年)

第2章 オランダ絵画の黄金時代。若きレンブラントが自信にあふれている《34歳の自画像》、晩年(といっても40歳くらいだが)のフェルメールが描いた《ヴァージナルの前に座る若い女性》には窓がなく、光の描写が少ない。壁には《取り持ち女》が掛けられているが、どんな意味が込められているのだろう?

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レンブラント《34歳の自画像》(1640年)

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フェルメール《ヴァージナルの前に座る若い女性》(1670-72年頃)

第3章はイギリスの肖像画を扱う。特にチャールズ1世の宮廷画家となったヴァン・ダイクは、王侯貴族のニーズに応えた美しい肖像画を描いている。

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ヴァン・ダイク《レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵婦人ドロシー》(1635年頃)

第4章は「グランド・ツアー」。上流階級の子息によるイタリアへの「修学旅行」のお土産として、イタリア都市景観図が持ち帰られた。カナレットは、大きな空の下に、レガッタ競技会を描いている。絵全体が与える雄大さと共に、細かく描き込まれた人々の様子が興味深い。いつまでも眺めていられる絵である。

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カナレット《ヴェネツィア:大運河のレガッタ》(1735年頃)

第5章はスペインの絵画。スペイン国外では無名だったベラスケスなどの巨匠の再評価が、19世紀のイギリスから始まっている。ムリーリョの描く子供の姿が可愛らしい。

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ムリーリョ《幼い洗礼者ヨハネと子羊》(1660-65年)

第6章は「風景画とピクチャレスク」。ターナー、コンスタブルといったイギリスを代表する風景画家たち。その源流となったクロード・ロラン、プッサンなどの絵が紹介される。絵を通して風景を眺める。絵のような風景を見る。理想の風景を絵に表現する。18世紀後半には「ピクチャレスク」の美学に関心が高まった。クロード・ロランの黄金色の空が美しい。

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クロード・ロラン《海港》(1644年)

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コンスタブル《コルオートン・ホールのレノルズ記念碑》(1833-36年)

そして最終章である第7章にて、20世紀になってようやく評価されるようになった印象派を扱う。展覧会場には、正面にゴッホの《ひまわり》、左を向くとモネ《睡蓮の池》、右を向くとセザンヌプロヴァンスの丘》が見られるという贅沢な場所がある。

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クロード・モネ《睡蓮の池》(1899年)

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ゴッホ《ひまわり》(1888年

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セザンヌプロヴァンスの丘》(1890-92年頃)

西洋美術史を辿るように、61点の作品が展示されており、充実した時間を過ごすことができた。

さらに詳しくロンドン・ナショナル・ギャラリーを知るには、各種書籍が参考になる。まず今回の展示会の図録(カタログ)である。装丁も素敵な図録は、オンラインでも販売されている。ナショナル・ギャラリーの成り立ち、各章の位置づけの説明があり、61点の作品一つ一つにつき、詳しい解説がされている。今回、来日していない作品についても、関連づけた説明があり、学ぶところが多い。

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図録

以下は「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」開催に合わせて、出版された本である。

このムック本は、ゴッホフェルメールに特に焦点を当てている。

この二つの本は、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの作品を見ながら、西洋美術の歴史を勉強していく本である。前者は文章、後者は絵がメインである。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーの珠玉の美を堪能した後は、国立西洋美術館の常設展へ。ちょうど1年前の「松方コレクション展」を反映する形で、配置換えが行われていた。

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常設展を観るにあたっては、国立西洋美術館学芸員が書いた『国立西洋美術館 名画の見かた』がよいガイドになる。西洋美術館のコレクションを中心に、さまざまなジャンルの絵画を、西洋美術の大きな流れと共に解説している。『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』と並んで、西洋絵画の鑑賞法を伝授してくれる良書である。

国立西洋美術館 名画の見かた

国立西洋美術館 名画の見かた

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

  • 作者:秋田麻早子
  • 発売日: 2019/05/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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歩き疲れたので、美術館内のレストラン「すいれん」でランチ。ここから見る西洋美術館の中庭は、僕の好きな光景の一つである。

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久しぶりに上野に来たのだが、上野駅公園口がリニューアルしていた。駅から車道を渡らなくても、上野公園に行けるようになっている。逆に言えば、車は左右のロータリーでUターンさせられ、公園口の前を通過することができなくなっていた。

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上野駅 公園口

www.watch.impress.co.jp

ウォーキング用にランニング・シューズを衝動買い

そごう美術館の帰り、何気なくデパートの売り場を歩いていたら、好みの色合いのランニング・シューズが半額になっていたので、ウォーキング用に衝動買いしてしまった。PUMA LQDcell Optic XI というモデル。26.5cm は長さ的にはちょうどいいが、甲の部分がきつく、27cm を選択。店員さんによれば、二つの間が僕にはちょうどいい大きさであるらしい。

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PUMA LQDcell Optic XI

翌朝、足慣らしも兼ねて、3km ほど歩く。サイズ感もぴったりだし、今まで使っていたスニーカーに比べて、クッションも効いていて、歩きやすい。

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最近は「筋トレウォーキング」「体幹ウォーキング」の考え方を取り入れている。3分速く歩き、3分ゆっくりが基本だが、インターバルを工夫して、速歩きの時間を長くしてみたり、ゆっくり歩く時間を短くしてみたりしている。最近は速歩き 3分、ゆっくり 2分の 5分を 1セットにしてやることが多い。

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休日の朝 5時台は、まだ歩行者信号は点灯しておらず、交差点の信号が黄色と赤、それぞれ点滅していたのが、新たな発見であった。

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「東京藝術大学 スーパークローン文化財展」:高精度な複製技術により時空を超える(そごう美術館)

伝統的な熟練の模写・模造技術と、最新のデジタル技術・2D/3D 印刷技術を融合させることにより、高精度な複製を作り上げる「クローン文化財」技術が、東京藝術大学で開発された。素材・質感・技法・文化的背景・精神性…。さまざまな観点から文化財の精巧な複製を作り上げ、失われた文化財を継承していくのが、「スーパークローン文化財」プロジェクトである。壁画や仏像など 50点ものスーパークローンを展示した展覧会が、横浜のそごう美術館で開催されている。

まるで本物を見ているかのような高精度な複製・復元を見ていると、「時空を超える」という言葉が頭に浮かんでくる。本物に優るものはないかもしれないが、現地に行かなくても当時の文化の一端に触れることができる。そして既に破壊されたり失われたりした文化財については、その忠実な復元によって継承していくしかない。

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東京藝術大学 スーパークローン文化財」展


スーパークローン文化財 〜失われた文化を蘇らせる 東京藝術大学COI拠点

タリバンによって破壊されたバーミヤンの大仏。その大仏の天井壁画が復元されている。1970年代に撮影された写真のポジフィルムのデジタル化、壁面の 3D データなどから、微妙な凹凸までも再現した構造体を成型した。原寸大まで解像度を高めた復元画像データをインクジェットプリンタで印刷して、成型した構造体に貼り付ける。さらにオリジナルの壁画の質感に近づけるべく、ラピスラズリなど同素材の絵具による彩色を加えている。ここでは日本の伝統的な模写技術と、デジタル技術の融合が行われている。

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バーミヤン東大仏天井壁画

古来より中国と西域をつなぐシルクロードの要衝であった敦煌敦煌莫高窟では 4世紀ごろから 1,000年にわたって連綿と石窟が開削されてきた。世界文化遺産となっているが、年々増大する観光客による文化財の劣化が懸念され、一部の窟では拝観が制限されている。第57窟は唐代初期の開削とされる。祈りの空間である洞窟内部の臨場感を表現するべく、その原寸大での再現が試みられた。微妙な壁面の凹凸まで記録された 3D データと、高精細撮影のデータをもとに、3次曲面に合わせた撮影画像の高解像度化などの画像処理を行っている。そして如来坐像、菩薩立像がスーパークローン文化財として再現された。

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敦煌莫高窟 第57窟

ミャンマーバガン遺跡は、11世紀から13世紀の間に栄えたミャンマー最初の統一王朝であるバガン王朝の首都バガンに築かれ、カンボジアアンコール・ワットインドネシアのボロブドゥールとともに世界三大仏教遺跡の一つと称されている。今回展示されているのは 12世紀に描かれた寺院の壁画であり、数多くの楽器や優雅な舞踊が描かれている。壁画の下地には石粉粘土を使用、壁画の表面となる絵画層には和紙が用いられている。和紙は凹凸面に貼り込む際によく馴染む。その凹凸のできた面に、描かれた壁画のタッチを盛り上げていく。そしてその和紙に、何度も位置を確認しながら印刷を行い、印刷した和紙を粘土板に貼り込む。その後、実際と同じ絵具を用いて、手彩色を行う。

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ミャンマーバガン遺跡壁画

日本の醍醐寺五重塔の連子窓の羽目板絵として、平安時代 951年に制作された 2枚の板絵。本物と酷似した木材の表面に槍鉋をかけ、エイジング加工した木肌をつくった。その上に原作の高精細画像を印刷、さらに補彩色を施している。

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醍醐寺五重塔壁画断片:板絵著色天部像

法隆寺金堂壁画は 1939年にその保存のため模写事業が開始された。しかし 1949年に法隆寺金堂は火災に見舞われ、模写の完成を待たずして原本そのものが失われてしまった。1967年に、写真を印刷した特注の和紙に彩色する方法により、模写が完成し堂内に納められた。現在もこの昭和時代の再現模写が、金堂内部に配されている。

そして平成・令和と、模写はスーパークローン文化財へと進化。伝統的な模写の弱点である図様の正確さと時間短縮をデジタル画像技術で実現、そこに伝統的な質感の再現や彩色仕上げを用いる模写技術の継承を組み合わせて、わずか半年で再現壁画が制作されている。

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法隆寺金堂壁画の再現模写

法隆寺釈迦三尊像も高精度に再現・復元されている。3D スキャナと CCD デジタルカメラにより高精度な 3D データを作成、それを 3D プリンタで出力し、金剛仏の鋳造原型を造形した。中尊のロウ型をつくり、ブロンズを鋳型から注ぎ込んで仏像の鋳物を完成させる。3D プリンタの造形には地図の等高線のような積層痕が残るので、それをキサゲや特注のこてヤスリなどで除去、表面を仕上げる。その上に彩色を施していく。

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法隆寺釈迦三尊像の再現・復元

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法隆寺釈迦三尊像の 3D 造形

最後は西洋画。ゴッホの《オーヴェルの教会》、そして日本の浮世絵を模写した 2枚の絵がクローン文化財として再現されている。歌川広重の《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》と《名所江戸百景 亀戸梅屋敷》の模写を、さらに複製したことになる。キャンバスの上にモノクロで画像を印刷、油絵具の粘りを利用して、ゴッホのタッチを再現している。表面は印刷によって着色するため、素地加工は白色の絵具のみでタッチを再現する必要があり、絵具の高さ情報を画像から読み取って、人の手で再現している。

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ゴッホ《オーヴェルの教会》のクローン文化財としての複製

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歌川広重にインスパイアされたゴッホの絵の複製

こうしてスーパークローン文化財により、時空を超えた後は、そごう横浜のレストラン街にあるアルポルト・クラシコにてパスタ・ランチ。

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デパートでは、夏休みということもあってか、アニメアートやぬいぐるみ動物園の企画展も行われていた。

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新しい体組成計

ここ1-2ヶ月の間にいろいろな家電の寿命が来て、壊れている。部屋の蛍光灯(LEDに付け替えた)、Amazon Fire TV Stick のリモコン(TV のリモコンで代用)、そして今度は体重計(体組成計)である。電池ボックスが本体から外れ、断線してしまった。そういえばこれはクレジットカードのポイント交換でゲットした10年前の機種である。これを機に新しい体組成計に買い替えることにした。タニタの BC-314 という機種である(取扱説明書)。

www.tanita.co.jp

オムロンの古い機種と比べると、まず何と言っても薄くて小さい。液晶は大きくて見易い。50g 単位で測れる。乗るだけで電源 ON となり、自分を認識してくれる。今までは電源を入れ、ユーザを切り替え、それからおもむろに乗る、ということをやっていたが、その面倒が一切なくなっている。10年もの間に、地道に進歩していることを実感した。

体脂肪率が低く、体内年齢がより若く表示されるところも、可愛い奴である。

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タニタ 体組成計

人間ドック:加齢とともに数値は悪くなっている

7月14日に受診した人間ドックの結果が、3週間経って、自宅に郵送されてきた。受診当日は医師との面談がなかったので、書面だけでの通達となる。

加齢とともに年々数値は悪くなり、要経過観察の項目が増えている。さらに今年は3ヶ月後に再検査を勧められる項目が加わり、憂鬱である。LDL、non-HDLコレストロールが高く、このままの生活では治療が必要になるとある。尿酸値は高止まり。RA(リウマチ因子)陽性。脂肪肝。また胃カメラでは食道裂孔ヘルニアの指摘。そして腎臓の石灰化。3ケ月後に再検査を勧められたのは腎機能。加齢とともに数値(血清クレアチニン、eGFR)も悪化、生活習慣に気をつけないと、慢性腎臓病になるとある。

紙に書かれた看護師からのメッセージでは:

  • 残業が多いようです。体調管理に注意しましょう。
  • 現在の運動を継続していきましょう。
  • 間食は肥満の原因になるので控えましょう。特に夜遅くはやめましょう。
  • 引き続きコレステロールの多い商品に注意し(例:卵黄・魚卵・脂身の肉・レバー・バター・チーズ・マヨネーズなど)、野菜・きのこ・海藻など食物繊維を多く摂りましょう。
  • 果物は糖分が多いので一日 200g までとし、日中に摂るようにしましょう。
  • 1日の飲酒量が多いので節酒を心がけましょう。
  • プリン体(尿酸の原料)が多い食品は控えましょう(例:レバー・モツ・魚の干物・えび・いわし・ビール)。尿酸の排泄を促すために、日中に水分を多く取るようにしましょう。運動は継続していきましょう。

…とのことである。

紙で一方的にメッセージが送られてきて、再検査と言われてもなぁ、と思い、ホームドクターに人間ドックの結果を見せて、どうすればいいか聞いてみた。腎機能については、血清クレアチニンの数値をベースに年齢を考慮して eGFR は算出されるので、年齢と共に悪化していくのは仕方なく、尿にタンパクが出ていなければ過度に心配することはないとのこと。腎臓への負担を軽くするためには、塩分を控えめに。そして水分を1日 2リットル程度摂取すること。秋になった頃、再検査してみましょう、とのことである。

要経過観察の中で気をつけるべきは、コレステロール。食事要因は 30% と言われている。運動を継続していくこと。尿酸値、石灰化については、水分を多く取ること。

まとめると:

  • 水分を1日 2リットル摂取する。
  • 運動を継続する。ウォーキングを頑張ろう。
  • 間食を控える。

ということになるだろうか。

コロナの影響で、胃カメラ実施の日が限られていた。また人間ドックの2週間前から、毎朝夕の検温して、その結果を報告する必要がある。病院の入り口ではサーモグラフィーで検温される。1日に行う人数も、例年25-30人だと記憶しているが、今年は17人だった。受付時刻も30分単位で指定されて、密を避けるようにしている。肺活量検査はなし。

受診後の食事の提供もなく、代わりに1,000円のQUOカードを帰りがけに渡された。医師との面談もないので、午前中で終わってしまった。いつもなら胃カメラ後用のヘルシー食だが、今回はあまり気にせず、プチ贅沢。町田駅小田急百貨店で天婦羅を食べてしまったのだった。

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謎めいた風景画を描く「ピーター・ドイグ展」(東京国立近代美術館)

8月1日、梅雨明け。東京国立近代美術館で開催されている「ピーター・ドイグ展」を観に行く。当日の朝、チケットぴあで日時指定チケットを購入、コンビニで受け取ってから、美術館に向かう。

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「ピーター・ドイグ展」(東京国立近代美術館

peterdoig-2020.jp

大きなインスタレーションや抽象画、写真や映像といった表現が一般的な現代アートの中にあって、具象画を描き続けるピーター・ドイグ。1959年生まれだから、まさに僕と同世代の人である。その絵は何とも謎めいた風景画であった。近代の画家たちの構図や、広告や映画にインスピレーションを得て、自分が過ごしたカナダやトリニダード・トバゴの風景など、さまざまな心象風景を組み合わせて、絵を描いている。

たとえば《スキージャケット》。カナダで見た日本のニセコ・スキー場の広告から、イメージを創り出したと言う。

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《スキージャケット》1994年、テート

ドイツのダム湖を写した白黒の絵はがきを参考に描かれたのが《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》。ダムの門前にいる二人の人物は、ドイグが学生時代に英国国立歌劇場の衣装係として働いていた時に撮った写真に由来し、左手の人物は作家自身だと言う。

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《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》2000-02年、シカゴ美術館

この絵に見られるように、画面を3分割して、前景・中景・後景を描き、奥行きを感じさせる作品が多い。《天の川》の構図も、3分割されている。風もない静かな闇夜。人気のない大自然の中に、小舟が描かれ、一人の人物が横たわっている。水面に映る鏡像は、必ずしも地上の景色と一致していない。この不穏さを感じさせるミステリアスなイメージは、映画「13日の金曜日」のラストシーンに由来していると言う。

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《天の川》1989-90年、作家蔵

今回の「ピーター・ドイグ展」は全作品、写真撮影可となっている。その謎めいた風景画を楽しんだ後は、久しぶりに常設展示に足を運ぶ。少しリニューアルされていて、個人的には、近代の日本の画家の絵や版画の展示がよかった。吉田博や川瀬巴水の風景画、小原古邨の花鳥画が好きなのである。

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パレスサイドビルまで歩いてランチ。皇居のお濠の水面は、緑色の水草でいっぱいになっていた。

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